二次創作小説(紙ほか)
- 短編5:恋情パラレル ( No.165 )
- 日時: 2015/09/24 03:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
「----------レン様」
声が聞こえた。見れば、ニャンクスが自分の顔を覗き込んでいる。
しかし、顔が異様に痛い。
「う、動かないでくださいにゃ! 顔が腫れていますにゃ!」
「ニャンクス、教えてくれ……呪いというのは、必ずしも薬で解かなければいけないものなのか?」
ふと、疑問に思った。呪いには元々の本来の解き方があるのではないか、と。
「い、一応、あったのですにゃ」
「何!?」
「で、ですが、普通に考えて無理なのですにゃ」
汗をたらたらと流し、彼女は答えた。
「呪いを解くには、呪いに掛かった人間が惚れた相手を嫌いにならなければならないのですにゃ」
レンは押し黙った。
これは、無理だ、と。
「……まずいな。罵られていてもニコニコしているような精神状態では」
「難しいですにゃ」
***
「---------ねえ、1つになろ? ヒナタ-----------」
妖艶な笑みを浮かべた彼女。
しかし。彼はそれを拒否する。
それは彼女が嫌いだからではない。
彼女が仲間だから。大切な人だから。
---------もし、これが一目惚れの呪いだって言うなら。
1つの案を思いつく。
では、どうすれば良いか。はっきり言って、これは賭けに等しい。
---------普通に考えて、無理じゃね?
まず。冷静な彼の頭脳は1つの結論を打ち出した。
普段のコトハにならば、考え付くあらゆるセクハラで頭をフリーズさせることができる。そして、その場を脱することができる。
直後にボコられるのは勿論だが、その瞬間は真面目な彼女にとっては最大の隙となる。
考えてみよう。現在のコトハはどうだろうか。
まず、その瞬間迎合の意を表したことになり、バッドエンド。
---------まずは絶対シタテには出ないこと
次に単に悪口を言っても、今の彼女には通用しない。
そこで、今のコトハの性格と、いつもの彼女の性格を考えてみる。
---------共通するのは1つ。コトハはプライドが高くて、とにかく負けず嫌いだってこと! あいつは呪いでこうなっても、そこだけは変わっていない! だから、そこを突く!
最後に。それを崩すにはどうすれば良いか。
彼のフル回転している頭は、すぐさま答えを出した。
--------演技とはいえ……これは嫌なんだけどな……!
正直、自分でも使いたくない手段になってしまったが。
「ねぇ----------ヒナタ、聞いてるの?」
「やっべー、そういえば思い出したー。頼むよ、コトハ。離してくれよ」
慌てた表情を作り、ヒナタは言った。
正直、これしかもう方法は無い。
動揺し、一瞬の隙を突くことが出来れば。
「俺今日、デートの予定があるんだわ、頼むぜ」
は? と彼女の顔が崩れ始める。
「な、何を言ってるのヒナタ、あんたに彼女なんか-----------」
「それもさ、すっげー可愛いの。お前なんかより顔も性格も可愛いしな。こないだ、ネットで知り合ったんだけどよー」
勿論、嘘である。
後、ネットで知り合った知らない人と会うのは絶対やめましょう。
「それにさー、此処もお前なんかよりでかかったしなー」
つん、と彼女の胸を指でつつき、ヒナタは嫌な笑みを浮かべた。
これがトドメになった。
流石のコトハの表情が怒りに変わったのが目に見えて分かった。
「あんたってやつはぁぁぁーっ!!」
ぐいっ、と魔力で強化された彼女の腕がヒナタの胸倉を掴み、引き上げた。同時にもう片方の手が彼の頬を捉えた。
思い切り殴り飛ばされ、彼はコンクリートの地面に強く体を打ち付ける。
しかし、これで間合いから離れることができた。体は痛いが、何とか起き上がる。無駄にしぶといのが長所なのだから。
そして、コトハを見据えた。
「あんたがそんな奴だったなんて--------------!!」
「わりーな。俺はお前には似合わねぇよ」
そう。所詮は一目惚れ。相手の内面をよく知らず、外面だけ見て好きになったに過ぎない。
あくまでも、”一目惚れ”というところにヒナタは着眼し、そしてその心理を突いたのだ。
つまり。この呪いの解除方法を、無意識にヒナタは掴んでいたのである。
-----------一目惚れした相手の嫌な面を見て幻滅、なんてのはよくある話だからな! 浮気性の相手ならば尚更!
「ヒナタ!!」
声が聞こえた。振り返ると、そこにはレンとニャンクスの姿があった。顔は青く腫れてはいたが。
「これは-----------」
「作戦成功だ」
にやり、と笑みをギリギリの精神状態で浮かべるヒナタ。
グルルル、と獣のように唸るコトハ。
「あんたなんか------------あんたなんか------------大っっっ嫌いよ-------------!!」
見ると。さっきまで怒り狂っていた彼女だったが、シュウウウ、と音を立てて、何かオーラのようなものが抜けていく。
「これは! 呪いが解除されていますにゃ!」
「何をしたんだ貴様は」
「あー? ちょいと嫌われもんになっただけだ」
「おいマジか」
完全に呪いの波紋が消え、彼女の体が崩れ落ちた。
「コトハ!」
それを見るや、ヒナタはすぐさま彼女に駆け寄って抱きかかえる。
「おい、しっかりしろ!!」
返事はすぐには来なかった。しかし。彼女はまるで夢から覚めたようにゆっくりと目を開いていく。
「-----------ヒナタ」
「コトハ! 大丈夫か!」
「-----------あたしは-----------一体------------」
そう言いかけた途端、かぁぁぁぁ、と彼女の頬が真っ赤に染まっていく。ああ、全部覚えてしまっていたか、とヒナタは頭を抱えた。
「ああああああああああああああああああああああああ!!」
羞恥で絶叫した彼女はそのまま、顔を覆ってしまう。
「お、おい、大丈夫だ、コトハ。お前は悪い呪いに」
「うるさいうるさいうるさい!! 今あたしに優しくしないで!! もうお嫁にいけない!! 絶対、あたしのこと嫌いになったでしょ!! もうやだ、恥ずかしくて死んじゃうってば!!」
「コトハ!!」
強く、彼女を呼んだ。
動転していた彼女が目を見開き、ヒナタの顔を見る。
「馬鹿言ってんじゃねえ、お前のことが嫌いだったら助けてねーよ」
「……ヒナタ」
「仲間だからだ! 仲間を簡単に見捨てられるかってんだ」
----------馬鹿……そういうの……反則だよ。
ヨミに連れ去られたあの日を思い出した。あのときも彼は助けに来てくれた。まるで、物語の中の王子----------
そう頭に浮かんだ発想を振るい落とし、彼女は今までの件について説明を求めたのだった。
----------あたし、まだおかしくなってる……。