二次創作小説(紙ほか)

短編5:恋情パラレル ( No.166 )
日時: 2015/09/24 01:40
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

 ***


「スノーフェアリーの仕業、ねぇ」

 一通りを聞いたコトハは、はぁ、と溜息をついた。
 ようやく自分がおかしくなっていた理由が分かり、一安心しているのだ。

「全く、たっぷり恥をかかせてくれたお礼はしないとねぇ」

 コキコキ、と拳から音が鳴っている。

「怖い、怖いですにゃ!」
「いや、当然だと思うぞ」
「しかも、うちの可愛い猫に手ェ出してくれちゃって、いよいよ死ぬつもりかしら」
「そりゃキレるな」
「まあ、どっちにしてもあんた達には礼を言っとくわ。特に」

 振り返り、彼女はヒナタの顔を見ようとしたが、すぐに戻してしまった。
 まだ、彼の顔が直視出来ない。
 -----------アホでしょ、やっぱあいつ!! 何で真顔であんな恥ずかしいこと言えちゃうの!? ねえ、馬鹿なの!? 死ぬの!?

「おーい、どうした」
「ともかく!! そのスノーフェアリー共を叩きのめすわよ!!」
「全く、貴様も鈍感だな。---------しかし、連中がどこにいるのか」
「そうだな。白陽もいねえし、此処は------------」



「あああああ、もうっっっ!! 何でどいつもこいつも邪魔ばっかりするのよおおお!!」


 声が聞こえた。それも、小さな少女のような甲高い声が。
 その方向を見れば、2つの影が浮かんでいた。

「へへんっ、向こうから出てきやがったぜ!!」
「間違いない! 僕はあいつらにやられたのですにゃ!」
「あれは、《愛恋妖精 ミルメル》----------!?」

 どうやら、とうとう業を煮やして自分から姿を現してきたようだった。
 よっぽど自分達の力に自信があるようだ。

「折角、もうちょいで良い所だったのにぃっ!! 馬鹿馬鹿馬鹿ぁっ!!」
「どうする、ミル」
「決まってるでしょ! みーんな、やっつけちゃうんだからぁーっ!!」

 「やっつける?」とドスの効いた声が響いた。
 そこには、鬼悪魔修羅羅刹般若が裸で逃げ出しそうな表情をしたコトハの姿が。
 いっ、とヒナタは小さく悲鳴をあげ、レンでさえ顔が若干青ざめていたのは言うまでも無い。

「じゃあ、あたしも邪魔なのを倒す」
「何なら、この暁ヒナタ様が相手になってやるぜ!」

 堂々とコトハに並ぶように進み出るヒナタ。メルは、少し呆れたような顔をしたが、「受けて立つ」と答えた。
 しゅるる、と音がした。見れば、今まで彼女の影に隠れていたツリー・フォークのラブ・エルフィンも闘る気のようだった。

「では、こいつは僕が倒すとしよう。丁度相手がいないものかと思っていたからな」

 珍しく乗り気のレンも進み出る。仲間を酷い目に遭わされた鬱積は晴らさねば気がすまないのは彼とて同じだった。

「へーえ。人間のくせに生意気じゃないの」
「上等じゃない、散々あたしを弄んでくれた礼をしないと」
「ふーん? 人間があたし達に勝てると思ってるの?」
「1人じゃないわ! ニャンクス!」
「はいですにゃ! 昨日の借りはきっちり返しますにゃ!」
「あれれー? 昨日時計台に縛り付けた奴じゃーん、助けて貰えたんだ」
「……ミル、そろそろ」
「分かったってば」

 見れば、クリーチャー達の背後に黒い靄が広がっていた。
 
「こうやってよ。3人一緒に並ぶのはいつぶりだ?」
「ふん。とっくに忘れてしまったぞ」
「どうでも良いわ。こいつらにはたっぷりお灸を据えてやらないとね!!」
「コトハ様に好き勝手した罪、重いのですにゃ!」

 対峙する人間とクリーチャー。やることはたったの1つだった。


『決闘空間開放!!』


 次の瞬間、決闘空間が開かれた-------------



 ***


 レンとラブ・エルフィンのデュエル。現在、互いにシールドは5枚、まだまだ最序盤であるが、ここでこけると後々に響くので慎重だ。
 しかし。先に動いたのはラブ・エルフィンの方だった。
 自然のマナ2枚をタップし、自らの分身を召喚する。



ラブ・エルフィン C 自然文明 (2)
クリーチャー:ツリーフォーク 1000
このクリーチャーがバトルゾーンにある間、自分の呪文を唱えるとき、支払うコストは1少なくなる。ただし、コストが1のときは少なくならない。



 -----------ふむ。呪文のコストを軽減するクリーチャーか。どうやら、カードとしての奴はそこまで強くないようだな。
 顎に手を当てて考えていた彼だったが、勝利への道筋が整ったのか、迷い無くカードをさばいていく。

「僕のターン! 2マナで、《一撃奪取 ブラッドレイン》召喚!」

 そのままターンを終えた。
 ----------このまま、進化してビートをかける!
 《ブラッドレイン》でコストを下げていけば、切札を簡単に出せる。
 そう思っていた。しかし。
 次のターン。《ラブ・エルフィン》の蔓の体が光った。そして、1枚の呪文が唱えられる。
 
「エイショウ……《マナ・クライシス》……」

 ----------!!
 パァン、とレンのマナゾーンのカードが1枚墓地へ置かれた。完全にリズムを崩されたのだ。
 ---------そうか。これはきついな……!!
 呪文のコストを軽減させられたということは、1ターン早く強力な呪文が飛んでくるということ。しかも、《マナ・クライシス》によるランデスで、レンは大きくテンポアドバンテージを取られたことになる。

「僕のターン、呪文《ボーンおどり・チャージャー》! 山札の上から2枚を墓地に置くぞ! ターン終了だ!」
「ウギガガガ……!!」

 先程から、唸る様な声しかあげないラブ・エルフィン。しかし、ここで更に動いてくる。マナゾーンのカードは4枚。
 そして、まずは1枚がタップされた。

「エイショウ、《進化設計図》……!!」
「何!?」

 捲られる6枚のカード。そして、手札に加えられたのは、《大神秘 イダ》のカードであった。



進化設計図 R 自然文明 (2)
呪文
S・トリガー
自分の山札の上から6枚を表向きにする。その中から進化クリーチャーをすべて自分の手札に加え、それ以外のカードを好きな順で自分の山札の一番下に戻す。



 さらにそれだけでは終わらなかった。今度は《雪精 ホルデガンス》が残った3マナで現れ、マナゾーンにカードを1枚置いていく。マナゾーンのカードの枚数差はどんどん開けていくばかりだ。
 ---------奴が呪文のコストを軽減している所為で、どんどん奴の動きが円滑になっていく-----------!!
 しかし、レンとてもう黙ってはいられなかった。

「僕のターン! 5マナで進化! 《ブラッドレイン》を《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》に!!」

 遂に、漆黒の地獄門から顕現した悪魔の龍王。その邪眼が、一瞬で《ラブ・エルフィン》を破壊した。

「シールドを、3枚ブレイクだ!!」

 レーザーのように射出されたそれが、一気にシールドを薙ぎ払う。
 しかし。そのうちの1枚から現れた無数の蔓が《キラー・ザ・キル》を大地へ封じ込めた。
 《ナチュラル・トラップ》だ。

「くっ……!! やられたか」

 まさか、切札が一瞬で蒸発するとは思わなかったレン。これはかなりの痛手だった。
 そして、ラブ・エルフィンのターン。
 ここで切札が現れることになる。

「シ……ンカ……マナノ《ポレゴン》ヲ……《大神秘イダ》ニ……!!」

 見れば、マナゾーンのスノーフェアリーが回収されていく。
 -----------成る程、《ラブ・エルフィン》で呪文サポートをしてこちらを妨害、または手札を増やしつつ、マナ進化でどんどん増殖していくデッキということか!!
 一気にシールドが《イダ》と《ホルデガンス》で2枚、3枚、と割られていく。しかし。
 
「----------S・トリガー発動!! 《凶殺王 デス・ハンズ》召喚だ!!」

 その程度はレンを倒すに値しない。所詮は下級クリーチャーなのだから。
 悪魔の手を内臓した闇の貴公子が、《イダ》を一瞬で粉砕する。
 そして。

「僕のターン、《死神封魔 ラヴァール》召喚! 効果により、進化クリーチャーのコストを1軽減し、《ラヴァール》を《夢幻騎士 ヴィシャス・デスラー》に進化!!」

 彼の気持ちに答えた闇の騎士が深淵より降臨した。
 《キラー・ザ・キル》がこじ開けた突破口は決して無駄にはしない。

「《ヴィシャス・デスラー》でシールドをW・ブレイク!!」

 残りのシールドが全て薙ぎ払われた。
 そして、目の前のツリーフォークをめがけて、悪魔の手が襲い掛かる。


「《凶殺王 デス・ハンズ》でダイレクトアタックだ!!」