二次創作小説(紙ほか)

短編5:恋情パラレル ( No.173 )
日時: 2015/09/29 23:54
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

 ***


 コトハとミルのデュエル。先攻はコトハ。敵よりも先にマナブーストをし、一気に片付けなければ気がすまない。
 しかし。後攻1ターン目。早速、ミルは動き出したのだった。

「へへー、《愛恋妖精 ミルメル》召喚ーっ! ターンエンドだよ!」

 現れたのは、《ミルメル》本体であった。

「出てきたわね、早速……!! 慎重に、そして大胆に動かないと-----------!」
『そうですにゃ! 今回の僕は魔力不足で、ただのクリーチャーに過ぎないんですにゃ……』
「あんたに頼り切ることは出来ないわね」
『そして、《ミルメル》は各プレイヤーがターンの最初にカードを引いたとき、手札からマナゾーンにカードを任意で置かせるクリーチャーですにゃ』
「ならブーストはしないわ! どっち道この子を使うもの!」

 コトハのターン。まだ2ターン目とはいえ、やはり不気味なものを感じる。
 しかし、彼女は同時に、ある人物のことを思い出していた。
 ------------スノーフェアリー……あの子のことを思い出すわね。
 風のように飄々としており、自分と共に何度も戦ってくれたクリーチャー。
 元が敵だったから仕方ないのだが、自分の心を見透かしてからかったり、小悪魔的な態度でヒナタのかつての相棒であるドラポンを惑わせたりとかなり好き方題やっていた。
 それでもピンチな時は共に戦ってくれた大事な仲間だ。
 
「《幻緑の双月》を召喚!! 効果で、手札の《諸肌の桜吹雪》をマナゾーンに! ターン終了!」
「ふーん、マナより手札を選ぶんだぁ」

 クスクス、と笑うメル。
 そして、ターンの最初にカードを引き、そして手札の《コマンダー・テクノバスター》をマナに置くと、更にマナをチャージした。
 これで3マナだ。

「呪文、《アンラッキーダーツ》! 効果で数字を1つ選んだ後に、貴方の手札を1枚ランダムで捨てさせちゃうよ!」



アンラッキーダーツ R 闇文明 (3)
呪文
数をひとつ選んで言う。その後、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。そのカードのコストが、選んだ数と同じであれば、カードを1枚引く。



 ブイン、と無機質な音を立てて、黒いダーツが彼女の手元に現れる。
 そして、ミルはそれを投げると同時に呟くように言った。



「-----------5」



 ぷすり、と消えるような音がコトハの手札から聞こえた。その中の1枚にダーツが突き刺さっていた。
 そして、ダーツの刺さった1枚が墓地へ落とされる。
 
「嘘、でしょ------------!?」

 彼女は驚愕した。
 墓地に落とされたのは、コスト5の《フェアリー・ホール》であった。
 彼女が宣言した数字と同じコストのカードだったのだ。

「あはは、狙い通りー? 貴方が何使おうとしてたかは、昨日、あんたがグラサンのやつと仲良くデュエルしてたときにばっちり分かってたものね。そう、貴方のデッキ。絶対、《フェアリー・ホール》が入ってるんだよ。お気に入りなのかな? あ、数字と落とした手札のコストが同じだから、《アンラッキーダーツ》の効果で1枚ドローね」
「----------っ!!」
「ターン終了! もっと凄いのを見せてあげるよ」

 ミルは無邪気な笑みを浮かべた。その顔が癪に障る。記憶の中の彼女に引っかかって。
 ----------ムカつく-----------!! 何であんた達スノーフェアリーは、どいつもこいつもムカつくやつばっかりなのよ!!

「あたしのターン!」
『コトハ様! ここは手札の確保を!』
「言われなくても分かってる! 手札は数じゃない、質よ! 呪文、《トレジャー・マップ》で山札から5枚を見るわ!」

 展開される山札。その中から、勝利へのマスターピースを確実に掴み取るため、彼女は1枚のカードを手に取った。

「《次元流の豪力》を手札に! ターン終了よ!」

 とはいえ、手札がさっき捨てられたのはかなりきつい。しかも、相手は1枚手札を増やしている。
 ジリ貧になるのは目に見えていた。

「ふーん? じゃあ、こっちからもそろそろ仕掛けちゃおっかなー?」

 笑った彼女は呟いた。

「ねえ? あたし達スノーフェアリーは、”神”に通じた種族なんだよ?」

 そんなこと、コトハは知っていた。スノーフェアリーはオラクルの配下の種族だったからだ。しかし、その敵対勢力のアウトレイジからも必要とされており、結果的にアウトレイジに寝返ることになったのだ。
 ヨミが倒れた今、彼女達が神に通じた種族だというのは完全に過去の話。今やオラクルの残党は完全にアウトレイジと結託を結んでいたのである。
 そう思っていた。

「あたし達の上司はね? 神様を直接呼び出すことができるクリーチャーなんだよ?」
「直接呼び出す-----------」

 イザナイ。その言葉が蘇る。
 神を直接光臨させる、オラクルの上位階級の1つ。そして何より、コトハのかつての相棒もその階級に位置していたのだ。

「でもね。あたし達の召喚術はそれよりももっと強力。悪魔神だって、そして”旧世界の神”だって呼び出すことができるんだよ?」
「呼び出すならもっとロクなものがあるでしょうが」
「えー? 悪魔神呼び出したら皆一瞬で楽になれて幸せになれるじゃん!」
「本当ロクでもないわね、あんたら!!」
『皆一瞬で死ねるの間違いですにゃ……』

 ごもっともです。

「こないだ、その上司が疲れた顔してたから、驚かせようと思って《ドルバロム》を呼び出したの。そしたら、頭が魔方陣から出てきた辺りで止められて、召喚は失敗! その後、めっちゃ怒られて吊し上げられてお尻ペンペンされたんだよ! ひっどいよねー!」
「酷いのはあんたの思考よ」
「ふーん? 何なら呪いをもっと強力にして、速攻であのグラサンを襲うようにしてあげても良かったんだよ? 勿論アレな意味で」
「滅す」
「あーあ、怖い怖い」

 おどけたような表情を崩さないミルは、5枚のカードをタップする。自分の能力で置いたマナ、そして通常のマナチャージでマナの枚数は5枚に達していた。
 しかし。問題はその呼び出されるクリーチャーだった。
 前にも感じたことがあるこの感覚。
 いや、それよりももっと尊大で強大な存在の覇気。
 このスノーフェアリー、やはり只者ではない!
 

「この世の摂理を全部、ぶっ壊しちゃえ! おでましだよっ、あたしの神様! 《外道神 カイカイ》!!」