二次創作小説(紙ほか)
- 短編5:恋情パラレル ( No.176 )
- 日時: 2015/09/30 23:39
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
ばたんきゅ〜、と目を回しているミルとメル。どうやら、完全に伸びてしまっているようだった。
ニャンクスの製薬能力は回復し、今は強化した腕で2体を押えつけていた。
「ねえヒナタ、こいつらどうする?」
「フジ先輩を経由して超獣界に送り返して貰おう」
「まあ、これに懲りれば良いがな」
全く人騒がせなクリーチャーだ、と常々彼らは思った。
「ねえヒナタ」
「あ?」
ようやく、まともに彼と顔を合わせられるようになった。
「怒ってる? あたしのこと」
「はあ?」
「あたしを……今日のことで馬鹿にしたりしない? 軽蔑したり-----------」
「するわけねーだろ、アホか」
至極当然とでも言いたげな表情で、彼は言った。彼女に背を向けながらぶっきらぼうに。
「おめーはやっぱ、ツンツンしてるくらいが丁度良いっての。あれは悪い夢だと思って忘れることにするさ」
「……そう」
「んじゃ、もうとっとと行こうぜ」
「そうだな。HRが始まる。その前に武闘先輩のところに行くか」
「そうね」
『お供しますにゃ! 皆様!』
-----------ま、これしきで俺らは何にも変わらねーよな。
着いてくるレンとコトハを見ながら、ヒナタは息をこぼした。
-----------……言えねーよ。
しかし、コトハの顔に目を合わせようとして逸らしてしまった。
-----------お前の中に、あいつの表情を見た、だなんてな-----------
まだ、分からないことは沢山ある。しかし。この3人でいれば、ゆっくりでも何時かは解決できる。
ヒナタは今日もまた、いつも通りの1日を送ろうとしていた---------
-----------でも、あんときのコトハ、少し可愛かった……って何血迷ってんだ俺は。
***
「……」
「コトハ様。まだ気にしているのですかにゃ?」
夜。如月宅。机に突っ伏したまま、コトハは何も言わなかった。
「そーいうわけじゃないんだけど……」
「じゃあ、どういうわけなんですにゃ?」
「いや、別に……」
-----------馬鹿言ってんじゃねえ、お前のことが嫌いだったら助けてねーよ------------
「……ねえ、ヒナタはあたしのこと好きなのかな?」
「……へ?」
「……ああああああ!! あたしの馬鹿!!」
言って彼女は自分で後悔した。
絶対に今日の自分はおかしい、と。
「まだ呪いにかかってるよ……」
「いや、それはないですにゃ」
「意地悪! 意地悪! 意地悪!」
「……こないだだって、ヒナタ様から遊びの誘いを受けて喜び、レン様が一緒と知って落胆していたのに、もう今更何を。今回の件でこのニャンクス、貴方が前々から----------」
「違う! あたしは! 断じて!」
「自分の気持ちに素直にならないと、いつか後悔しますにゃ、コトハ様」
「だーかーらー!! 違うんだってばーっ!!」
この主人に素直になれと今すぐ言っても仕方がないか、とニャンクスが思う中。
コトハは顔を真っ赤にしながら、想い続けていた。
-----------でも、あのときのヒナタ、少しかっこよかったかも------------
何であれ、彼女がヒナタに前から抱いていた気持ちが一目惚れの呪いによるものではないことは確かであるが------------
***
その頃。超獣界、無法×神格同盟の領地内の森にて。
「あぐぐぐ……酷い目に遭った……」
「ミルの所為。アイス奢って」
「そ、そんなぁ……ゲホッ」
生きも絶え絶えに、2人はようやく自分達の住処に帰ってきたのである。
しかし。
「ねぇ、あんた達」
声が聞こえた。
振り返れば、そこには自分よりも背丈こそ低いが恐ろしい魔力を纏ったスノーフェアリーの少女の姿があった。
高い魔法使いの帽子に箒、といかにもな格好である。
しかし問題は、髪で隠れた目から相当な威圧感が感じられたことか。
「あ、ああ、ああ……オーロラ様ぁ……」
「心配したのよー? 勝手に人間界になんか行っちゃってさぁ……」
「あばばばば……ミル……」
「あわわわわ……メル……」
「しかも」
オーロラ、と呼ばれたスノーフェアリーは、箒で地面を突いた。ヒビが入り、そこから蔓が伸びていく。
「あたしの相棒に迷惑掛けて、いよいよ死ぬ気なのかなー? あんた達は……!!」
え、と変な声が彼女達の喉の奥から出てくる。
まさか。
オーロラが相棒というのは、まさかあの少女のことではないか。
自分達が呪いをかけた、あの-------------
「マキシマム・ザ・マックスから全部聞いたんだよねー? あんた達色々やらかしてくれたみたいだし」
「あ、あはははは……」
「何? あたしに怒られたのを逆恨みして出て行ったんだ。でも、それって逆ギレって言うんじゃないのかなぁぁぁー?」
「あ、あたしはミルに唆されただけ……」
「ああーっ! メル卑怯だよ!」
が、しかし。現実は非情である。蔓が2人の体に巻き付く。
そして、一気に締め上げた--------------
「ちったぁ反省しなさい、このガキンチョがぁぁぁーっ!!!!!!!!!」
『ぎゃあああああ、すいませんでしたぁぁぁぁぁーっ!!』
結論。一番怖いのは、旧世界の神でも悪魔神でも何でも無く。
目の前のこの上司であることは言うまでもあるまい。
----------ま、突然飛び出してきちゃった、っていうのはあたしも人のこと言えないんだけどね。
はぁ、とオーロラは溜息をついた。
----------どの道、あの子には誰か他のクリーチャーがついてくれるみたいだし、大丈夫でしょ。
そういえば、と彼女は思い出したように言った。
「コトハったら、結局ヒナタと全然進展無かったのね……」
そう、語散りながら、彼女はその場を後にした。
思いっきりシメ上げた2人をよそに。
「ま、あの子なら何とでもなるよね。だってこのあたし、オーロラが認めた人間だもの!」
***
ほぼ同時刻。暁宅。庭にて。
「-----------あのさぁ……あたし達完全に忘れられてない? 白陽……」
「く、くそ……毒針で体が……」
完全に忘れられたクリーチャーが約2名いたことは言うまでもなかった。
※余談:白陽とクレセントはこの後ちゃんと助かりました。後、ミルとメルは二度と悪戯なんかしないと誓ったんだそうな。
短編5(完)