二次創作小説(紙ほか)

Act5:決闘と駆け引き ( No.18 )
日時: 2015/08/03 19:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「さあ行け、《ソウルハート》を装備!」

 次の瞬間、邪悪な瘴気が辺り1面に広がった。

「た、多色!? 自然と火のドラグハートなのか!?」
「そうだ!! さらに、《キリモミ・スラッシュ》使用! 《サソリス》はスピードアタッカーに!! 行け、シールドをブレイク!」

龍覇 サソリス R 自然文明 (6)
クリーチャー:ビーストフォーク號/ドラグナー 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト2以下のドラグハート1枚、または、コスト4以下の自然のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。(それがウエポンであれば、このクリーチャーに装備して出す)
このクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりに自分のマナゾーンに置く。 

「そして、《ソウルハート》の能力発動! 装備したクリーチャーが攻撃したターン、次の自分のターンまで俺のクリーチャーは攻撃されない」
「お、おいおいマジかよ」

 そして、ターンの終わりに光り輝く《ソウルハート》。

「そして、ターンの終わりに貴様のクリーチャーが2体以上居る場合、龍解する!!」

破天炎矛(はてんえんむ) ソウルハート 火/自然文明(4)
ドラグハート・ウェポン
このドラグハートを装備したクリーチャーが攻撃するとき、次のターンまで自分のクリーチャーは攻撃されない。
龍解--ターンの終わりに、相手のクリーチャーが2体以上居る場合、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。


 次の瞬間、《ソウルハート》が《サソリス》の元を離れて、そのまま爆ぜた---------と思いきや、そこから1つの火の鳥が現われて、《ソウルハート》のパーツを1つずつまとっていく。


「龍解、天空を制圧せよ、そしてすべてを永遠のものとせよ!! 復活、降臨、《太陽龍皇ザ・フェニックス ソウルフェザー・ドラゴン》!!」


 そして、姿を現した。どうじに、男のローブの隙間から赤い羽根のマークが見える。
 鳥龍は一度甲高く咆哮を上げると降下した。
 フェニックスだ。
 不死を司る火の鳥なのだ。
 ドラグハート・クリーチャー。しかし、とても禍々しいオーラを放っている。
 それに見入るだけで自然と唇が乾いてきた。

「ノゾムっ! とってもヤバいよ!」
「お前、これが何なのか知ってるのか!?」
「分からない! だけど、とっても危ないってことだけはわかる!!」

 びりびり、と目の前の龍から悍ましいほどの瘴気が発せられた。

「ははははは!! 《ソウルフェザー・ドラゴン》が龍解したとき、手札からコスト7以下のドラゴンを出せる!! 行け、《「白陽」》!!」
「ッ----------!!」

 まずい。次のターンに決めようと思っていたものが、決められなくなってしまった。

「オレのターン……」

 ---------オレは引けるのか?

 カードを捲る手に力が篭る。

 ---------いや、引ける!

 ひゅっ、とカードが手で弾かれて回転した。


 ---------そうだ、組み立ててやろうじゃねえか、”勝利の方程式(パズル)って奴を!!


 ノゾムの手に来たカードが、それを確かにした。

「どうした? 怖気づいたか?」
「怖気づくのはてめーの方だぜ!! オレのターン、《Q.E.D》の効果発動だ! 呪文、《インビンシブル・テクノロジー》を使用! そして、山札から好きなカードを好きなだけ手札に!」
「何?」
「そして、呪文《スパイラル・ゲート》で《「白陽」》をバウンス!」

 しかし、そのときだった。

「はははは、バカめ!! 《ソウルフェザー・ドラゴン》の効果発動! 自分のドラゴンかファイアーバードが場を離れるとき、山札から1枚を墓地においてもよい。それがドラゴンかファイアーバードならば、バトルゾーンを離れない!」

太陽龍皇ザ・フェニックス ソウルフェザー・ドラゴン 火/自然文明(7)
ドラグハート・クリーチャー:ファイアー・バード/アーマード・ドラゴン 9000
W・ブレイカー
このクリーチャーが龍解したとき、手札からコスト7以下の火のドラゴンをコストを支払わずにバトルゾーンに出す。
自分のドラゴンかファイアー・バードがバトルゾーンを離れる時、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。そのカードがドラゴンまたはファイアー・バードであれば、自分のドラゴンとファイアー・バードはバトルゾーンを離れるかわりにとどまる。

 山札から1枚目が捲られた。そのカードは、《翔竜提督 ザークピッチ》だ。

「ドラゴンだったので、バウンスは免れる!」
「ま-------大体そんな感じの能力だろうとは思ったぜ。不死鳥だの何だの抜かしてるんだから。だけどよ、気付いていないみてーだな」
「何?」

「結局、お前は《「白陽」》に生かされているだけに過ぎない!!」

 つまり、この状況で《「白陽」》さえどかしてしまえば、ノゾムはゲームに勝つことができるということだ。

「ま、まさか-----------」
「さっき、《インビンシブル・テクノロジー》で手札に加えたのは、全部バウンス呪文-------後はその他色々だ! それも、2マナの《ザ・ストロング・スパイラル》豪華4枚積み! いっけええええ!! 残りのマナを使って、《「白陽」》を集中バウンスだ!」
「えっと、つまりノゾム?」

 クレセントが怪訝な顔で聞いた。

「ああ、確かにこれは危険な賭けだ。だけど、この際運に頼るしかない!」

 《ザ・ストロング・スパイラル》。2マナで手軽に使えるバウンス呪文。《スパイラル・ゲート》からS・トリガーが消えた代わりにパワー6000以上のクリーチャーをバウンスすれば、カードを1枚引けるという特典付きだ。

 1度目、《コッコ・ルピア》。
 2度目、《ボルバルザーク・エクス》。
 3度目、《ガンリキ・インディゴカイザー》

「ははははは!! 無理に決まってんだろ!? ごり押しでこの俺様を倒せると思ってるのかぁー?!」
「倒せるさ!! てめぇの歪んだハートをぶっ壊す!!」

 水流が《白陽》を飲み込んでいく。

 4度目--------------《ナチュラル・トラップ》。

「------------!!」

 男は動揺した顔を、ここではじめて見せた。奥の手の奥の手も全て破られてしまったのだ。
 
「《トライグラマ》でシールドをT・ブレイク!!」

 シールドが一気に叩き割られた。《白陽》がいなくなったことにより、クリーチャーの大群がなだれ込んでいく。

「《アクア・スーパーエメラル》でブロック!」

 何とか防ぐ。しかし。

「《スペルサイクリカ》でW・ブレイク!」
「は、はは!! S・トリガー、《ナチュラル・トラップ》で《スペルサイクリカ》を----------!!」

 《トライグラマ》で割られたシールドから、トリガーが飛び出したのだ。
 しかし。

「ざーんねんでした! 《ルーン・ツールC》の効果で、コスト6以上のS・トリガーを無効化する!」
「な、何だと!?」

 刹那、《ルーン・ツール》の鉄槌が一気に振り回されて、《ナチュラル・トラップ》の宿木を薙ぎ払った。

月英雄 碧鎧のルーン・ツールC(クレセント) 水文明(7)
クリーチャー:リキッド・ピープル/クリスタル・コマンド・ドラゴン 6000
マナ武装7:このクリーチャーをバトルゾーンに出したとき、マナゾーンに水のカードが7枚以上ある場合、水のカードを2枚まで山札から手札に加える。その後、山札をシャッフルする。
相手はコスト6以上のS・トリガーを自分のターンに使うことは出来ない。
ブロッカー
W・ブレイカー

 さらに、《スペルサイクリカ》の甲高い咆哮と共にシールドが次々に割られる。

「へっ、教えてやるよ人攫い! 《サイクロペディア》最後のシールドをブレイクだ!!」
「ぐ、ぐああああ!!」

 ノゾムは指を天に向けて叫んだ。
 勝利を確信したかのような笑みを浮かべて。

「お前は自分が一番強いって言ったが---------それは間違いだ」

 《ルーン・ツール》の鉄槌が眼の先まで迫る。
 男はこのとき、このデュエルで初めて敗北への”恐怖”を悔しいほどに味わうことになった。

「てめぇのように、クリーチャーを道具扱いするような野郎が、最強になれるわけがねえ!! 何故なら、そいつは自分のクリーチャーにさえ見放されちまうからだ!!」
「く、くそおおおおおおお!! こんな、こんなクズ野郎に、クズ野郎にいいいいいいいいいいい!!」

 まくし立てるように、怒号を放つ男。しかし、最早そうしたところで《ルーン・ツール》の鉄槌が止まる訳が無い。
 今此処に、月に代わって天罰が下される。

 
「はっきり言って気に食わないが、テメェはこいつがぶん殴る!! とっとと豚箱にぶち込まれやがれ、この大馬鹿野郎!!」


 刹那------------鉄槌がローブの男の右半身を抉り取った。

 ***

 煙が消え、元の場所に戻る。
 男の居た場所には、血が滴っていた。

「あ、あわわわわわ」

 そう呟いたのはノゾムだった。まさか、殺すつもりまでは無かったのだ。
 男の状態は悲惨なものだった。
 それは、まさに右半身がえぐりとられ、言うなれば断面人間状態になっていたのだ。
 血が常に噴出しており、直視できるものではない。
 しかし。

「ぐ、ぐあああ……俺としたことが何て失態だ----------」
「い!? まだ生きてんのかよ!?」

 何と、左半身だけになっても執念で生きているかのように見える男。血のしたたる断面を左手で確認すると、片方だけの口で笑った。

「《ソウルフェザー》の効果で、俺は死なない」
「し、死なない!?」

 彼はとんでもないことを言い放った。なるほど、それでぎりぎり虫の息ながら、生きながらえているのか。
 そう思った矢先---------

「否、それだけじゃねえ。《ソウルフェザー》!!」

 刹那、赤い炎が男を焼き尽くす。だが直後、炎の中から再び男は5体満足になって顕現した。
まるで、何事も無かったかのように。
まるで、この世の摂理をあっさりと覆すかのように。
 まるで、燃え盛る不死鳥かのように。
 男は確かに、蘇ったのだった。

「こんな感じに再生もできんのよ」
「ははは……グロテスクなこった」
「さあ、許さねえぞテメェら……この俺を散々コケにしやがって……だが、今日は疲れた」

 どうやら、外傷を回復できても、体力までは回復できないらしい。最早、男に決闘空間を開く力は残っていない。だがそれは、ノゾムにも言える事だった。不本意であるが、此処で見逃すしかない。
 一方の男も悔しそうに唇を噛み締めて、だがな、と続けた。

「次こそ死ぬより苦しい地獄を見せてやる」

 捨て台詞を吐くと、男はすぐさま逃げようとした。《ソウルフェザー》と《白陽》のカードを掲げて。
 だが、そのときだった。
 ダッシュで駆け込む音が聞こえる。
 シュッと音がしたかと思うと、男の手にカードが鋭い音と共に刺さった。殺傷力や人に傷を付ける力こそ無いが、それでも痛みを与える分には十分な威力といえるだろう。
 同時に、男は《白陽》のカードを落とした。拾おうとするが、慌てている所為か上手く拾えない。


「あぶねーあぶねー、前にこれでケータイ泥棒倒したの忘れてたぜ。危うく捨て設定になったかと思ってたわ」

 
 フランクな声が響く。暗くて見えなかったが、そこには少年が居た。
 見覚えの在るグラサン、黒髪、そして痩せ型の体型。皮肉に浮かべる笑み。
 正しくそれは、暁ヒナタだったのだ。