二次創作小説(紙ほか)
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.188 )
- 日時: 2015/10/08 02:58
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
ノゾムとホタルのデュエル。現在、ノゾムの場には《アクア操縦士 ニュートン》
一方のホタルの場には《墓守の鐘 ベルリン》、《強欲ジェラシー・シャン》の2体が並んでいた。
——幾らブロックされない《ニュートン》でも、殴り返されるのはキツい……! 手札を増やしていくしかねぇか。
「オレのターン! 《ニュートン》をもう1体召喚して、マナ武装3で1枚カードを引き、ターンエンドだ!」
——うっ!?
次の瞬間、猛烈な吐き気が襲い掛かってきた。がくり、と膝が折れて胃の中のモノを全てぶちまけてしまいそうになる。
何とかそれを押えつけ、ぎりぎりのところで起き上がる。
——くそっ、これで判断ミスるとか、冗談じゃねーぞ!!
『ノゾム、大丈夫……じゃないよね』
「ああ……だからとっとと終わらせる!」
「終わらせられれば良いですね」
ふふっ、とホタルは軽薄な笑みを浮かべた。
眼鏡をくいっ、と押し上げると言った。
置かれるは、自然のマナ。それを含んだ合計5枚がタップされた。
「でも、そんなに早く終わったら……つまらないじゃ無いですか、ノゾムさん……私はもっと愉しみたいのに……!!」
ぞくり、と悪寒が襲い掛かった。
凄まじい闇の気配が、彼女の手札に眠っている、と直感が知らせたのだ。
「まずは、呪文《超次元 フェアリー・ホール》!! マナゾーンにカードを1枚置き……そして、《タイタンの大地 ジオ・ザ・マン》をバトルゾーンに!!」
タイタンの大地ジオ・ザ・マン UC 自然文明 (6)
サイキック・クリーチャー:ガイア・コマンド/エイリアン 5000
自分のターンの終わりに、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。
「ターン終了……と、そのときにカードを1枚私のマナゾーンから回収します。《超次元 マザー・ホール》を手札に。ターンエンドです」
自然の入るコントロールデッキに《ジオ・ザ・マン》はデッキの動きを円滑にする安定剤としてしばしば重宝される。
更に、《フェアリー・ホール》と組み合わせることで、マナを減らさずにカードを回収することができたのだった。
次のターン、何もしなければ間違いなく《マザー・ホール》は飛んでくる。それだけは阻止したかった。
しかし、それが出来るカードは今、彼の手札には無い。
「くっ……!」
引いたカードも、求めていたそれではない。悔しさと苦しさに顔を歪ませながら、彼はマナをタップする。
「呪文、《ブレイン・チャージャー》! カードを1枚引いて、チャージャーでこれをマナゾーンに! ターンエンドだ!」
「さっきから手札補充しかしていないじゃないですか。まあ、そういう堅実なところも好きですけどね。ノゾムさん?」
『好い加減にしなさい! ノゾムを惑わせるなんて、許さないんだから!』
「お、オレは大丈夫だから、クレセント……! 今のホタルに呑まれるわけにはいかねぇからな!」
とか言いつつ、彼の心臓は未だバクバク鳴っていた。今、こうして酷い目に遭っているとはいえ、さっきのキスの味が記憶に焼き付いて離れない。
——畜生!! こんなときに何考えてんだよ、オレは!!
それを振り払い、彼はターンを終えた。
「本当に強情ですね……まあ、良いですよ。ここらで分からせてあげます」
艶のある声で彼女は言った。
そして、6枚のマナをタップした。メインとなるのは光。しかし、今は金メッキの放つような偽りの光のようにくすんでいた。
「《超次元 マザー・ホール》! 超次元ゾーンから、《光器 セイント・アヴェ・マリア》をバトルゾーンに!」
超次元マザー・ホール UC 光文明 (6)
呪文
進化ではない光の、「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出す。
コスト6以下の光、水、自然いずれかのサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
光器セイント・アヴェ・マリア ≡V≡ 光文明 (6)
サイキック・クリーチャー:メカ・デル・ソル/ハンター 5500+
ブロッカー
ブロック中、このクリーチャーのパワーは+2000される。
自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のハンター・クリーチャーをすべてアンタップする。
神々しい光と共に天空から舞い降りたのは、龍滅の女神を模した太陽の兵器、メカ・デル・ソル。そして、その1角である《セイント・アヴェ・マリア》だった。
美しい。余りの美しさに目が眩んでしまう程だった。
「そして!! これだけでは終わりませんよ!! 《マザー・ホール》の効果で、手札より私の新たなる力をバトルゾーンに!!」
《マザー・ホール》が呼び出せるのは、サイキック・クリーチャーのみでは無かった。光のブロッカーを1体、更に手札からバトルゾーンに出すことが出来るという効果も付いているのだ。
まさにそれは、聖なる超獣を呼び寄せる聖なる女神の門。
しかし。
今回ばかりは違った。
「!?」
ノゾムは天空に浮かぶ門を、思わず凝視した。
暗雲が立ち込めていく。
変貌には時間をそれほどかけなかった。一瞬で、女神の門が、禍々しい地獄の門へと化したのだ。
『うおおおああああああーっっっ!!』
咆哮。おぞましく、空気を裂き、肌さえも破いてしまいそうなほどに空間が振動した。
門から、雨のように鮮血が流れ、黒い雷が迸る。
そして、門は開いた。
天空さえも貫く一角馬が。
黒く、黒く、ただただ黒く。美しかった純白の身体は、もうそこには無い。
目に痛い程にギラついた黄金の装甲、邪悪そのものと言える漆黒の体。
雄雄しい角は、ドリルのように醜く、そして鋭く渦を巻いていた。
瞳は、純潔を穢すことのみに囚われた、純潔を司る本来の一角獣のそれとは掛け離れたものになっており、ノゾムもクレセントも、真っ当な精神で、それを見つめ続けることは出来なかった。
そして、遂に。今までおぼろげでしかなかった一角獣の姿が、完全にこの空間で質量を得て、実体化した——
「色欲に塗れし邪悪な一角獣よ、星の力を受けて今此処に!!
その怒りに触れし愚者を血に濡れた一角で皆殺しにしなさい!!
現れよ、《惨劇の一角星 ハーシェル・ブランデ》!!」