二次創作小説(紙ほか)
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.189 )
- 日時: 2015/10/12 01:42
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
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ヒナタとレンのデュエル。
現在、レンの場には《解体人形 ジェニー》のみ。しかし、《ボーン踊り・チャージャー》で墓地とマナを増やしていた。
一方のヒナタの場には何もいない。しかも、キーカードの《ジェット・ポルカ》が早速、《ジェニー》に落とされて、動きは落ちていた。
「俺のターン……! 《禍々しき取引 パルサー》召喚! 俺の手札はもう無いから、2枚ドローだ!」
「まだ足掻くのか。殊勝なことだな、ヒナタ」
「諦めねぇぞ……! これしきで諦める程、ヤワな戦いは経験してねぇ!!」
『我らの力、見せてやる!!』
「ふん。闇に墜ちた僕が脆弱だとでも言いたい口振りだな」
「ち、違っ」
「良いさ」と冷たく彼は言った。
「謝罪も、同情も、何も要らない。僕は貴様を今度こそ、この手で葬ってやる……そう決めたのだからな!! そのためならば、手段は選ばない、選ぶつもりはないっ!!」
ぎりっ、と拳を握り締めたレンの瞳は復讐に染まっていた。
「貴様の罪を数えろ……僕を幾度と無く不幸な目に遭わせたその罪を!! 運命のあの日、貴様がいなければ、今頃僕は平穏に過ごすことが出来たはずだ!! 忌々しい無法の力を持つ貴様がこの世界に居なければなぁぁぁーっ!!」
1枚のカードがマナゾーンに置かれた。
それは、《アヴィオール》のカードだった。
『おや? 僕はお役御免ですか?』
「こいつは僕に殺させろ。その代わり、貴様には”あのカード”に死神の儀式を行うという役目がある」
『ふふ、覚えてくださって何より』
——アヴィオールのカードは使わないのか?
しかし、それでも彼はアヴィオールを使って何かをしようとしているようだった。
冷や汗が伝った。まだ、何かを隠しているのか、と。
「5マナを払う。《墓標の悪魔龍 グレイブモット》を召喚!!」
「っ……!!」
「効果で貴様のサイキックのパワーは−5000。更に登場時に山札の上から2枚を墓地に送るブロッカーだ」
『気をつけろ、ヒナタ。何かの下準備だろう……!!』
「ああ、あいつが墓地を貯めてロクな目に遭った試しがねぇからな……!!」
墓地に落ちたのは、《黒神龍 グール・ジェネレイド》と《地獄門 デス・ゲート》だった。
墓標の悪魔龍 グレイブモット P 闇文明 (5)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 4000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から2枚を墓地に置いてもよい。
バトルゾーンにある相手のサイキック・クリーチャーすべてのパワーは-5000される。
「僕はあくまでも、貴様を殺すつもりで行く。もう、貴様の知っている黒鳥レンは、存在しない。脆弱だった頃の僕はもう、居ない」
「あー、そーかよ……分かったぜ」
しかし。そんなこと、最早彼には関係無かった。
「何なら、こっちも本気でてめぇを潰す!! 後悔するほど全力でなっ!!」
彼の言葉は、ある意味ヒナタの迷いを吹っ切らせてくれた。
仲間と戦うということに戸惑いを少なからず感じていたヒナタの迷いを。
サングラスを掛け、完全に本気モードに入った彼の瞳は燃えていた。
「4マナで、《爆轟マッカラン・ファイン》を召喚! ターン終了だ!」
「マナ武装で味方にスピードアタッカーを追加するクリーチャーか。まあ良い……そんなことは関係ない。全て消し飛ばしてやる」
ギラリ、と彼の瞳が光る。
また彼のマナゾーンに、カードが置かれる。
しかし。それは、火文明の《偽りの名 バザガジー・ラゴン》だった。
——火文明!? どうするつもりだ!? 闇単じゃねえのかよ!?
驚くヒナタを他所に、彼はマナの6枚をタップする。メインとなるのは火。それも、咎人を裁く地獄の炎だった。
「貴様の罪を数えよう……呪文、《龍秘陣 ジャックポット・エントリー》!!」
現れたのは、炎龍の秘伝の陣。そして、そこから漆黒の悪魔が現れる。そう。かの不死鳥座の少年、アンカも同様の呪文を使っていた。
レンの山札から4枚が展開され、彼に見せられる。
そして、彼はその中から1枚をバトルゾーンへ送り込んだ。
「罪を罰し死神よ、荒ぶる龍と成り、漆黒の蹄で命を踏みにじれ。生死の法則を乱す契りを今此処に!! 《邪蹄の悪魔龍 ベル・ヘル・デ・リンネ》召喚!!」
邪蹄の悪魔龍 ベル・ヘル・デ・リンネ VR 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000
相手のクリーチャーが破壊された時、自分の山札をシャッフルする。その後、上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。そのカードが進化ではないドラゴンであれば、バトルゾーンに出す。それ以外であれば、相手は自身の手札から1枚選び、捨てる。
W・ブレイカー
現れたのは、牛のような角を生やし、更に胴にも同じような顔を持つ龍だった。
彼の者の蹄に踏まれた土地に清らかな生命は生まれない。
何故ならば、《ベル・ヘル・デ・リンネ》が全て滅ぼし、悪魔龍へと命を変えてしまうからだ。
「ターン終了……」
そして、火文明を使ったと言う事に対しても、元々彼は無色に火を組み込んで使っていたので然程驚くことではなかった。
しかし。不死鳥座の男に似た戦法を使っているということに、やはり彼がもう、自分の知っている黒鳥レンではないことを改めて噛み締める。
——馬鹿野郎がっ……!!
「俺のターン! 《爆竜 GENJI・XX》召喚し、そして攻撃!!」
そして、と彼は告げた。
「ブロッカーの《グレイブモット》を破壊だ! W・ブレイク!」
ブロッカーが消滅した今ならば攻撃を通すことは容易い。
そのまま2つの十字刃がレンのシールドを2枚、切り裂いた。
破片が飛び、彼の頬を切り裂く。
しかし。それでも彼は動揺しなかった。
「ターンエンドだ!」
「ほう。だが、迂闊だったとしか良いようが無いなヒナタ!!」
彼の顔は怒っていた。
どこまでも、どこまでも、怒っていた。
「貴様を殺す」
そう、冷酷に、残酷に宣言すると、彼は4枚のマナをタップする。
そして、地面から現れたのは屍の龍だった。
「《黒神龍 アバヨ・シャバヨ》召喚!! 効果で、《アバヨ・シャバヨ》を破壊し、貴様もクリーチャーを破壊しろ!」
「くっ、《パルサー》を破壊だ!」
次の瞬間、鎖が飛び、《パルサー》を地面に沈めた。
息をつかせぬまま、彼の地獄のコンボは連鎖していく。
「僕のドラゴンが破壊されたので、墓地の《グールジェネレイド》の効果発動!! 現れよ、《黒神龍 グールジェネレイド》!!」
黒神龍アバヨ・シャバヨ P 闇文明 (4)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノイズ 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、相手は自身のクリーチャーを1体選び、破壊する。
黒神龍グールジェネレイド SR 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 6000
自分の《黒神龍グールジェネレイド》以外のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーをバトルゾーンに戻してもよい。
W・ブレイカー
「そして」と彼は続けた。闇を纏って現れた屍の龍に続き、《ベル・ヘル・デ・リンネ》が大地を殺す。死んで荒れた大地に群がるのはドラゴン。
つまり、そこから更なる龍が現れるのだ。
「貴様のクリーチャーの破壊をトリガーにし、《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果発動。僕の山札をシャッフルし、そして一番上のカードを表向きにする! それがドラゴンならば——バトルゾーンに出しても良い」
「——!!」
現れろ、と彼は山札の一番上のカードを捲った。
そのカードは、彼が知るカードでもあった。
傷を負った黒き龍。
正義のために戦い続ける龍。
たとえ、闇に墜ちても誰よりも仲間を、絆を重んじる龍。
「——《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》——!!」
それは、レンが闇に転向する決意を固めた理由のカードだった。
そのことはヒナタも知っていた。
しかし。そのカードは既に、”何か”に変わりつつあった。
『このクリーチャーは生まれ変わりますよぉぉぉ!! 黒き龍を真の悪魔龍へと変貌させる、それが死神の儀式!!』
「……思い出など、仲間など、悲しみを生む原因以外の何者でもない。僕の憂いの原因以外の何者でもない!!」
彼の手に、《リュウセイ》のカードが渡った。
そして、彼は手に取ったそのカードを掌で包むと——
ぐしゃり
——躊躇いなく、容赦なく握り潰した。
「なっ……!?」
『一体……、何故こんなことを!?』
驚くなというのは、無理な話だった。
相手がデュエリストの命と言えるカードに、自ら手を掛けたのだ。
それも、彼にとって、最も大切な闇のカードに。
”彼女”との最後の思い出のカードに。
ヒナタは、その光景に怒りよりも先に衝撃が走る。
口を恐る恐る開けながら、言った。
「ふ、ふざけてんのかテメェ……!!」
「ふざけている? 僕は至って本気だ。何故ならば。死神の儀式を完成させるには、過去を否定し、今へ進む覚悟が無ければならないからな——!!」
ぼろぼろになった《リュウセイ》のカードだったが、次の瞬間に闇文明の紋章が現れる。
見れば、マナゾーンの《アヴィオール》が何かをしていた。
『完成しますよ!! 最凶の、悪魔が!!』
「前に進むと言う事は、過去を否定すること。それが、どんなに大切であっても、勝利という、貴様を殺す結果に繋がるならば!! 過程や方法など、関係は無い!!」
「や、やめろ……!! 何で、何でそんなことが出来るんだよ!!」
しかし。ヒナタの悲願叶わず。レンは容赦なく、新たなるそのカードの名を呼ぶ。
「数多の時を流れし、流星よ——」
そして、それは生まれ変わっていく。
正真正銘の、悪魔に。
「今こそ、自らを戦いに駆り立てる世界に復讐を——」
ぐっ、と彼は拳を握った。
力強く。新たな悪魔に闇の命を吹き込むように。
そして。
ただのカードでしかなかったモノは、決闘空間にクリーチャーとして質量を得た——
「そして貴様に最も惨めで哀れな、悪魔の罰を——《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》」