二次創作小説(紙ほか)

Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.190 )
日時: 2015/10/16 05:42
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

永遠(とわ)の悪魔龍 デッド・リュウセイ SR 闇文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
このクリーチャーまたは他のクリーチャーが破壊された時、カードを1枚引いてもよい。



 その龍は、鋭く尖った赤黒の爪を持ち、煉獄の炎と化した鬣、禍々しい左の翼を携え、そして本来右の翼がある部分は悪魔の手と成っていた。
 下半身も邪悪な悪魔龍の顔となっており、完全なる闇に墜ちたことを意味していた。 
 最も惨めで哀れな罰。
 それは、このクリーチャーが望まない形で悪魔と成ってしまったこと。
 そして、かつての持ち主の友に牙を向けることになってしまったことだろうか。
 レンは憎んだ。自らの心を縛る過去を。
 彼女との最後の思い出である《リュウセイ》もまた、理不尽な断罪の対象であったのだ。

「これで、《リュウセイ》は完全に悪魔へと墜ちた……そして、僕の従順な下僕となった!! 覚悟しろ、ヒナタ。こいつが現れたが最期、まずは《GENJI》を破壊する!!」

 悪魔の手が、《GENJI》の身体を一瞬で貫いて破壊する。
 そして、その魂が《リュウセイ》の元へと引き寄せられた。

「悪魔に殺された者は冥界に行くことすら出来ずに、永遠と暗黒空間で苦痛を受け続ける……この世に生を受けたことそのものが罪ならば、それが最大の罰となる。《リュウセイ》の効果で、魂の知識は僕の元へ。カードを1枚ドローだ」
「おいおい、大層な事を言った割には、あんまり大したことねぇじゃねえか」
「果たして本当にそうかな? 死は連鎖するのだよ!! 今ので、貴様のクリーチャーが再び死んだ——《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果が再び発動する」
「——なっ」

 再び、フィールドは混沌の大地と化した。
 レンは山札を再びシャッフルし、一番上のカードを見せた。
 それは——ドラゴンだった。

「——《真実の名 ゼッキョウ・サイキョウ》を召喚」



真実のトゥルーネーム ゼッキョウ・サイキョウ VR 闇文明 (9)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノウン 11000
ブロッカー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中から好きな枚数のドラゴン・ゾンビとトライストーンを、自分の手札に加えてもよい。こうして加えたカード1枚につき、相手は自身のクリーチャーを1体選んで破壊する。その後、それ以外のカードを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。
スレイヤー
W・ブレイカー



 現れたのは、スレイヤーのブロッカーにして、相手を崩壊させる力を持つ屍龍だった。
 山札の上から3枚が捲られた。

「効果により、捲った3枚の中のドラゴン・ゾンビかトライストーンを手札に加える。《グールジェネレイド》を手札に。そして、貴様は、その数だけクリーチャーを選んで破壊する」
「くっ……! 《マッカラン》を破壊……!」
「しかも、こいつはスレイヤーのブロッカーだ。そして、《リンネ》の効果で山札をシャッフルして1枚を表向きに——ドラゴンではないか」

 呟いたレン。どうやら、ドラゴンではなかったようだ。
 しかし。次の瞬間、ヒナタの手札が飛んだ。

「まあ、手札は《リンネ》の効果で破壊させてもらうがな」
「くそがっ……!」

 クリーチャー全滅。手札もぼろぼろ。
 しかも、スレイヤーのブロッカーにより、ヒナタは更に攻撃をしにくくなってしまう。
 完全に、押されていた。

「ターンエンドだ」

 ヒナタは舌打ちした。1ターンの間に、何体ものドラゴンが現れてしまうとは、流石に予想外だった。
 正直、かなり厳しい。ヒナタのデッキには、まともな防御手段が除去呪文を除いて殆ど無いのだ。火文明デッキの宿命である。
 ——だけど、元々あいつの戦法は《修羅丸》による連ゼロだったから驚くことでもねぇか……!

『どうする、ヒナタ』
「武装が無くたって、変な儀式に頼らなくたって、勝てるってことを証明してやるぜ!! 俺のターン、ドロー!!」

 カードを引いたヒナタは、手元に来たそれを、逆転への一手と確信する。 
 迷わず、それを唱えた。

「呪文、《天守閣 龍王武陣》! 効果で山札の上から5枚を見るぜ!」

 捲られる5枚のカード。《熱血龍 バクアドルガン》、《シンカゲリュウ・柳井・ドラゴン》、《ネクスト・チャージャー》、《怒英雄 ガイムソウ》、《めった切り・スクラッパー》——彼は迷いと躊躇いを振り切り、《ガイムソウ》を手にした。

「マナ武装5で、《ガイムソウ》を手札に! そして、《ベル・ヘル・デ・リンネ》を破壊だ!」
「《リュウセイ》の効果で1枚ドローだ」

 味方を破壊されても、その魂を意地汚く貪る《リュウセイ》。
 その姿は、完全に大罪を刻まれた悪魔に墜ちてしまったようだった。
 虚しい気持ちが募る。これが、彼が本当に望んでいた展開なのだろうか。

「……ターン終了」
「まだ足掻くのか。潔く諦めれば楽に死なせてやろうと思ったのに……僕のターン」

 彼は8枚のカードをタップする。そして。
 今度は溶岩と共に、赤き鎧龍がその姿を現した。

「《竜星 バルガライザー》召喚!! 此処から更にドラゴンに繋げてやる!!」
「やべえ……!!」

 《バルガライザー》は攻撃するたびに、ドラゴンを山札の一番上から呼び出せるドラゴン。
 しかし、それだけではない。
 バトルゾーンに出たターンに攻撃できるスピードアタッカーのW・ブレイカーでもあるのだ。

「貴様の罪を1つ1つ数えていくとしよう……このターンでお終いだ、暁ヒナタ!!」

 ヒナタは場を見渡した。既に、ここには自分を倒せるだけのクリーチャーが揃ってしまっていた。
 《ジェニー》、《ゼッキョウ・サイキョウ》、《グールジェネレイド》、《バルガライザー》、《デッド・リュウセイ》——打点は完全に足りている。

「スピードアタッカーの《バルガライザー》で攻撃!! 効果により、山札の一番上を墓地に置いて、それがドラゴンならばバトルゾーンに出す——《黒神龍 オドル・ニードル》を召喚!!」
「ま、また、ドラゴン……!!」



竜星バルガライザー P 火文明 (8)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/サムライ 7000
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。そのカードが進化以外のドラゴンであれば、バトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー



黒神龍オドル・ニードル P 闇文明 (6)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 5000
S・トリガー
バトルゾーンに出す時、このクリーチャーはタップして置く。
相手のクリーチャーは、もし攻撃するのであれば、可能ならこのクリーチャーを攻撃する。
このクリーチャーがバトルする時、バトルの後、このクリーチャーと相手クリーチャーを破壊する。



「入学したあの日——貴様は僕に出会った。それが僕の運命を狂わせた!! 平穏に過ごそうと思っていた僕の運命をなぁぁぁーっ!!」

 《バルガライザー》の太刀が振るわれて、シールドが2枚、砕け散った。
 更に次の瞬間、レンの袖口から2本の鎖が飛ぶ。
 それが——肉を穿つような音と共に、ヒナタの右肩と右の太ももを貫通した。
 正気を失わせるような激痛が、彼を襲った。


「うおおおおあああああああああああああ——っ!!!!!!」



 目に涙が浮かぶ。そして、ひたすら続く激痛。
 手札が零れ落ちた。ただただ言葉にならない絶叫をあげることしか、ヒナタには出来なかった。

「安心しろ。この空間から生きて出られたら、それらは全て無かったことにしてやる。無事に生きて出られれば、つまりこの僕に勝てればの話だが」
「あ、ぎぎぎ……!!」
『ヒ、ヒナタ!! お、おい!! あ、あああ……』

 流石の白陽も掛ける言葉がなかった。
 見れば、鎖の切っ先に鋭く尖った、槍先、つまり矛のようなものが付けられており、これが貫通させたのだと言う事は白陽にも容易に分かった。しかし、それには抉るようなささくれが出来ており、肉を傷つけるためだけに出来たことも明らかだった。
 ——こ、これが友にすることなのか、黒鳥レン——!!
 彼の行為に激しく怒りの念を燃やす白陽。
 しかし間もなく。

「《グールジェネレイド》でシールドをW・ブレイク」

 ひっ、とヒナタは悲鳴に近い息を漏らした。
 シールドが割られると同時に、再び鎖が彼を貫いた。
 今度は、左ももと左肩。
 彼の喉はもう、枯れきっていた。
 だらだら、と血が流れる。
 そして、眼から、口から、情けないほどに何かが流れていくのを彼は感じた。
 これはまずいと感じた白陽は、彼に代わってゲームを続行させる。

『S・トリガー発動!! 《スーパー・バースト・ショット》で《ジェニー》を破壊!!』
「だが、もう遅い!! 《デッド・リュウセイ》の効果で2枚をドロー!! そして、《デッド・リュウセイ》で”最期”のシールドをブレイク!!」

 次の瞬間。
 今度は彼の腹に鎖が突き刺さった——



「がはっ」



 血反吐を吐くヒナタ。
 しかし、急所は外れたのか、彼の息は止まってはいなかった。

「次は、脳天を貫かせて貰うぞ。《ゼッキョウ・サイキョウ》でダイレクトアタック——」
『ニンジャ・ストライク3発動! 《光牙忍 ハヤブサマル》をブロッカー化してブロックだ!』
「チッ……!!」

 仕留め損なったか、と悪態をつくレン。
 しかし。状況は何も変わってはいない。
 ヒナタの場は全滅。さらに、走る激痛が彼を苦しめる。
 対するレンの場には大量のドラゴンが、ヒナタの命を狙っていた。
 ようやく落ち着いたと見たか、彼は冷たく言い放った。

「手は動かせるだろう? 足もだ。マナの力で、貴様の決闘空間における最低限の行動は保障しているからな。慈悲深いと思え」
「が、この……やろ……!!」
「だが残念だったな。貴様の相棒がトリガーで僕のクリーチャーを焼いてくれたから、貴様の苦しみはもう少し続く。そう、次の僕のターンまでな——」

 その声を聞き、ヒナタの体にはいっていた力は抜けた。
 もう、痛みも感じない。脳内麻薬というやつの所為だろう、と彼は朦朧とする意識の中で思った。
 人の体が、本能的に戦おうとするために分泌するドーパミンなんかのことだが、ヒナタにもう、戦う意思は無かった。
 ——もう、今回こそは無理かもな——
 げほっ、と彼はもう1度血反吐を吐いた。手が、真っ赤に染まっている。
 ——……俺、お前の所に行っちまうかもしれねーよ……思ったよりも、早かったよ……我ながら、あっけない人生だったな——
 そう想いながら。
 彼は、”切れた”。