二次創作小説(紙ほか)
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.191 )
- 日時: 2015/10/11 21:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
ノゾムとホタルのデュエルは、ホタルの切札が現れたことによって、大きく動き出していた。
惨劇の一角星 ハーシェル・ブランデ 光/闇文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン/ダーク・ナイトメア 7500
U・コア
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、超次元ゾーンからU・コアを持つステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出しても良い。
相手がコストを支払わずにクリーチャーをバトルゾーンに出したとき、そのクリーチャーを破壊する。
W・ブレイカー
ブロッカー
母なる光姫の聖域を踏みにじり、現れたのは破滅と快楽を追い求める邪悪な一角獣だった。
しかも、そこから更にクリーチャーの気配が現れる。
クレセントが怯えた悲鳴を上げた。
『何あれ……とても怖い……!』
ノゾムでさえ、びりびりとした殺気を感じていたが、これほどまでとは考えていなかった。
ハーシェルを、”あれ”と表現したあたり、最早以前とは似ても似つかぬ程のオーラを纏っていたことは言うまでも無いだろう。
しかし。それだけでは終わらなかった。
「《ハーシェル》の効果発動! U(ユニオン)・コアを持つクリーチャーを1体、超次元ゾーンからバトルゾーンに!」
次の瞬間、今まで空中に浮いていた地獄の門の表面が剥がれ出す。
そして、艶やかな女体が伸び、鋭い棘が何本も見え隠れする門を携えた光姫がバトルゾーンに降り立った。
復讐と破滅を司る戦乙女は、不気味に微笑んだ。
「《鋼神姫(ビルゴ・ジャンヌ) ドラドルイン》をバトルゾーンに!」
鋼神姫 ドラドルイン 光/闇文明 (5)
ステラアームド・クリーチャー:メカ・デル・ソル/ヘドリアン 5000
U・コア
ブロッカー
相手のクリーチャー、または呪文の効果で自分のクリーチャーが選ばれるとき、バトルゾーンにU・コアを持たないクリーチャーがいれば、自分のU・コアを持つクリーチャーは選ばれない。
自分の光か闇のクリーチャーが攻撃、またはブロックしたとき、相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる。
星芒武装--自分のターンの始めに、自分の光と闇のクリーチャーがバトルゾーンに合計5体以上いるとき、このクリーチャーを裏返し、「ハーシェル」とあるクリーチャーの上に重ねる。
「ターン終了です」
その宣言と共に、ノゾムは我に返った。
バトルゾーンを見渡せば、《ベルリン》、《ジェラシー・シャン》、《セイント・アヴェ・マリア》、《ハーシェル・ブランデ》、《ドラドルイン》、《ジオ・ザ・マン》の5体が構えていた。
それと、と付け足すように彼女はノゾムに言った。
「《ドラドルイン》はターンの始めに光と闇のクリーチャーが合計5体以上いるとき、武装条件を満たすので、そこらへんお願いしますね?」
「なっ——!?」
『やばいよ、ノゾム! もう、条件は満たされてる!』
「と、とにかく除去しねぇと!! サイキックだけでも——」
カードを引くノゾム。
そして、再び5枚のカードをタップする。
「呪文、《幾何学艦隊 ピタゴラス》!」
「念のために言っておきますけど? 私のU・コアを持つクリーチャーは、場にU・コアを持たないクリーチャーが1体でもいれば選ばれませんよ?」
ノゾムは舌打ちした。分かっていたとはいえ、やはり本体はそう簡単に除去は出来ないか、と。
仕方なく、その手さばきで艦隊を指揮し、攻撃対象を指示する。
目標は既に決まっていた。砲門が開く。
「効果により、タップされていない《セイント・アヴェ・マリア》とマナ武装5で《ジオ・ザ・マン》を超次元ゾーン送りに!」
「あらら。サイキックを狙うなんて、ノゾムさんはいけない人ですね」
「抜かせ!! これで、お前の武装は一先ず防いだぞ!!」
水文明の本領は、しつこいバウンスにある。
このまま除去を続けていれば、勝機はあるはずだ、と彼は思っていた。
しかし。
光文明の本領は、この程度では終わらなかった。
「私のターン。3マナをタップ。《巡礼者 メスタポ》を召喚」
巡霊者メスタポ R 光文明 (3)
クリーチャー:コスモ・ウォーカー 1000
誰も山札を見ることはできない。
このクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりに自分の手札に戻す。
現れたのは、星の上で逆立ちをした、人型のクリーチャーだった。一見、かなりファンキーに見えるが、問題はそこではない。
「《メスタポ》の効果で、もう誰も山札を見ることは出来ませんよ?」
「げっ……」
山札を見ることが出来ない。つまり、《ディメンジョン・ゲート》のようなサーチカードから、《ドンドン吸い込むナウ》のような部分的に山札を”見る”カードまで、全てが意味を成さなくなるということ。
ノゾムのデッキにも、思い当たるカードは沢山あった。
《クリスタル・メモリー》、《スペルブック・チャージャー》、そして《Q.E.D+》の効果etc……。
何より、水文明の得意分野の1つであるサーチを封じられたのはかなり厳しい。
それだけではなく、《メスタポ》はコストが軽い上に、破壊されても手札に戻る。
かなりしぶとく、妨害を続けることが出来るカードであることをノゾムの頭は理解した。
「”真理”を鵜呑みにしてはいけないものですよ? ノゾムさん。疑わなければ、さっきのように痛い目に遭うんですから」
「くそっ、なんつーカードだ……!!」
「そして、《ハーシェル》で攻撃! 《ドラドルイン》の効果で、自分の光と闇のクリーチャーが攻撃したとき、相手の手札を見ないで選び、破壊しますよ!」
次の瞬間、ノゾムの手札のうち、1枚が串刺しにされ、墓地へ叩き落された。《龍脈術 水霊の計》。数少ない、《メスタポ》を除去できるカードだった。
そして、シールドが2枚、ブレイクされる。
此処からどう巻き返すか、彼は考えた。
しかし。なかなか思いつかない。
まず、1つ。
やはりというべきか、胸の奥から沸いてくる気持ちの悪さ。
こみ上げてくる吐き気。
これらが彼の思考を邪魔する。
そしてもう1つ。
今まで、色恋沙汰等と無縁の生活を送ってきた彼に、やはりいきなりのキスはきつかった。
しつこいようだが、表面上は取り繕っているとはいえ、未だに混乱していた。
結果。これが彼の判断を狂わせていくことになる。じわじわと、まるで内側から侵略するように。
「お、オレのターン……! とにかく、奴らを除去しねーと……!」
『ちょっと!? 本当に大丈夫なの!?』
「だから、やれるって言ってるんだろうが!! まずは、《龍覇 M・A・S》を召喚し、《エビデゴラス》を呼び出す!! そして効果で——《ジェラシー・シャン》をバウンスだ!」
現れたのは、《龍覇 メタルアベンジャー》。
そして。天空に現れる空母、《エビデゴラス》。
最後に、目の前の敵を排除せん、と《メタルアベンジャー》が両肩の砲から激流を照射——出来なかった。
「……あれ? オレ、《M・A・S》を召喚したはずじゃ……」
『ノゾム! ノゾム! これ、《龍覇 メタルアベンジャー》だよ!?』
「……え? ソリッドじゃなくて?」
『だから、バウンスなんか出来ないってば!』
完全に、視界がブレて気付かなかったが、まさかこれを間違えるとは自分でも思わなかった。《メタルアベンジャー》に、除去効果は無い。つまり、彼女の場のカードは減らせない。
既にノゾムの同年代の少年少女を超えた頭脳は、狂いに狂っていたのである。
そして、ホタルの場には5体の光と闇のクリーチャーが揃ってしまっていた。
「私のターン」
そして、今。最凶最悪の武装が始まろうとしていた。
「ノゾムさん。好きですよ? 勢い余って殺しちゃいそうなくらいに」
《ドラドルイン》の門が大きく開いた。そこに、《ハーシェル》が駆け込んでいく。
そして、それを閉じ込めるように、門が閉まる。同時に、そこから真っ赤な血が吹き出るように流れた。
次の瞬間、《ドラドルイン》の目が赤く光った。
女体像が崩れ落ち、門は鎧となり、腕が生え、巨大な甲冑が現れる。そして暗黒の騎士としての姿を象っていく——それは、破滅の騎士の光臨を意味していた。
「数多の屍を食らいし破滅の一角獣よ。
冥界の騎士として昇華し、咎人を裁け。
《串刺しの騎士(レイニーズデイ) ハーシェル・ディストーション》、武装完了」