二次創作小説(紙ほか)

Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.195 )
日時: 2015/10/13 22:55
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

 熱い魂に呼応して、最強の熱血龍が現れた。
 暁の日差しで輝く戦場に、勝利を齎すために咆哮を上げる。
 そして、それに奮い立たせられたのか、《鬼丸「覇」》が剣を振るう。

「《鬼丸「覇」》で攻撃!! こいつが攻撃したとき、相手とガチンコ・ジャッジを行う!!」
「おのれ、ヒナタ……僕はコスト8の《偽りの王 フォルテッシモ》だ!! これでどうだっ!!」
「コスト8? 奇遇だな——」

 笑みを浮かべた彼は、山札の上から捲ったカードを見せた。



「俺も、コスト”8”の《永遠のリュウセイ・カイザー》だぜ!!」



 互いに捲られたクリーチャーのコストは8。
 しかし。ガチンコ・ジャッジにおいて、コストが同じカードが捲られたとき、それは仕掛けた側の勝利となるのだ。
 大太刀と、龍の炎がレンのシールドを狙う!!

「俺の勝ちだ!! 《鬼丸「覇」》でT・ブレイク!! パワーアタッカーで、攻撃中はパワー14000だ!!」

 しかし、その前に《ゼッキョウ・サイキョウ》がその攻撃を受け止めた。
 そして、《鬼丸「覇」》の身体も実影を失って、完全に崩れ落ちてしまう。

「馬鹿め、《ゼッキョウ・サイキョウ》でブロック!! どうだ、止めきったぞ!! スレイヤーだから、貴様の切札も道連れだ!!」

 《鬼丸「覇」》は、勝利の化身は崩れ去った。
 もう、跡形もない。

「はははは!! 貴様の場に、攻撃できるクリーチャーはもういない!! 《バトライ武神》も召喚酔いで攻撃できないからな!! 断罪だ!! 貴様を死刑にしてやる!! 殺してやる!!」
「……おい、レン。お前、《鬼丸「覇」》の効果も忘れちまったのかよ?」
「何——!?」

 彼の勝利を確信した笑みは、壊された。
 何故ならば。
 もう、ヒナタのターンは終わったはずなのに。
 レンのターン。つまり暗い暗い、復讐の夜は来なかったから——

「し、しまった——!!」
「《鬼丸「覇」》が攻撃したとき、ガチンコ・ジャッジに勝てば、”もう1回俺のターン”が来る!! お前のターンは、夜は、もう来ない!!」

 時間は加速する。
 新しい日が昇る程に。



勝利宣言(ビクトリー・ラッシュ) 鬼丸「覇(ヘッド)」  ≡V≡  火文明 (10)
クリーチャー:ヒューマノイド/レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 9000+
スピードアタッカー
パワーアタッカー+5000
このクリーチャーが攻撃する時、相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、このターンの後にもう一度自分のターンを行う。
T・ブレイカー



「《グレンモルト》の遺志も!! 《鬼丸》の遺志も!! 《バトライ武神》が背負う!!」

 カードを再び引いたヒナタ。
 それを見て、白陽が言った。

『ヒナタ! そのカードが、私達の希望となる!! クリーチャーを、私達を信じてくれ!!』
「言われるまでもねえ!! まずは《バトライ武神》で攻撃!! このとき、山札から3枚を表向きにする!! 虚空をこじ開けろ!! 《バトライ武神》ーっ!!」

 《バトライ武神》の、身の丈もあろう程かという大太刀が空気を切り裂いた。
 そして、そこから熱風が舞い上がる。
 3枚のうち、2枚。
 2枚のカードに、熱血の炎が灯った。

「そして、それが進化ではないドラゴンかヒューマノイドなら、バトルゾーンに出せるんだ!! 出て来い、《熱血龍 GENJI・XXX》! そして——」

 最後に巻き起こるは、英雄の旋風だった。
 全ての闇を消し去る、暁の九尾。



「黄金の九尾を携えし、聖獣よ!! 今、この俺と鼓動をあわせろ!! 咆哮せよ、そして開闢せよ!!
《尾英雄 開闢の白陽》!!」



 神聖なる彼の者は、降り立った。
 全ての闇を祓うように。
 
『私はどんな逆境に遭っても——今使える力を、全て使い切るだけだ!! たとえ、武装が出来なくたって!! 戦い抜いてやる!! 守り抜いてやる!! そう決めた!!』
「《バトライ武神》でシールドをT・ブレイク!!」

 薙ぎ払うように放たれた大太刀が、レンのシールドを3枚、焼き尽くす。
 そして、それに続くように怒りの英雄が突貫した。
 しかし。
 彼の復讐への執念は、それでも燃え尽きなかった。



「S・トリガー、発動!! 《デビル・ハンド》2枚!! 《ガイムソウ》と《GENJI》を破壊し、僕の山札から3枚を墓地へ!! そして、《インフェルノ・サイン》でブロッカーの《崩壊の悪魔龍 クラクランブ》をバトルゾーンに!!」



 もう少しでトドメが刺せた。
 しかし。今度こそ、これ以上のアタッカーはいない。

「ターンエンドだ」

 その言葉を聞いて、彼は舌なめずりした。
 最早、盲目的にヒナタを殺すことだけしか考えていないレンは、凄まじい目で彼を睨んだ。
 そして次に、《「白陽」》に眼を向ける。

「そいつさえ殺せば、僕の勝ちだ……!! 僕のターン、ドロー……!!」

 そして、引いたカードを見て、彼の目は踊った。
 死神の断罪の始まりだった。

「呪文、《煉獄超技 骸骨方陣》!!」

 《「白陽」》には、ドラゴンの攻撃を完全に封じる能力があった。
 しかし。それさえ除去してしまえば、最早レンを邪魔する物は無い。
 ダイレクトアタックと同時に、ヒナタの脳天に鎖を突き刺すだけだ。

「僕の手札を全て捨てる。《凶殺王 デス・ハンズ》と《悪魔龍 ダークマスターズ》が墓地に落ちたので——コストは合計13。《「白陽」》のパワーを0にして破壊だ!!」

 煉獄の魔方陣が、《「白陽」》を囲んだ。
 そして。地獄に引きずり込んでいく。
 そして彼は、完全に消滅した—— 

「これで貴様を守る者はいなくなった!! 死ね、ヒナタ!! お前の負けだぁぁぁーっ!! 新しい朝も、貴様の未来も、何も来やしない!! 貴様は此処で処刑されるのだからなぁぁぁーっ!!」
『哀れな子狐座……勝つのは、何時の時代も罪と罰の力だというのに、下手に足掻くからこうなる!! さあ、大人しく死になさいっ!!』

 もう、彼には勝利しか見えていない。ヒナタのシールドは0枚。白陽以外に、守る手段はないはずだ。
 仮にあったとして。これだけの軍勢を、どうやって止めるつもりなのか。彼には思いつかない。少なくとも、火文明にそんな手段はない。
 荒ぶる龍が、ヒナタの魂を食い付くさんとばかりに襲い掛かる——



「——やれやれ。気の早い連中だぜ」



 ——刹那。
 龍の動きが止まった。
 レンの意思に反して、だ。

「!? 馬鹿な!! どうした!! 何故動かない!!」

 見れば。
 赤い螺旋状の炎と共に、《「白陽」》の身体が蘇る。
 大胆不敵に、彼は槍を振るって得意げに言った。

『残念だったな。トリックだ。九尾の妖術を舐めるな』
「な、何があった!! 説明しろ!! 一体、どうしてそいつは生きている!!」

 血走った目で喚き立てるレン。
 逸れに対し、ヒナタは既に落ち着き払っていた。

「自分の場の《白陽》と名のつくクリーチャーがバトルゾーンを離れたとき。手札の《陰陽超技 炎熱乱舞》を捨てれば、そのクリーチャーは移動したゾーンから再び、バトルゾーンに戻ってくる」

 

陰陽超技・炎熱乱舞 火文明 (6)
呪文
S・トリガー
名前に《白陽》とあるクリーチャーがバトルゾーンを離れたとき、このカードを手札から捨てても良い。そうした場合、送られたゾーンからそのクリーチャーをバトルゾーンに出す。
自分の場にあるカードのコストの合計以下のコストを持つ相手のクリーチャーを2体まで破壊する。
マナ武装7--自分の山札を見る。その中から、コスト9以上のカードか、名前に《白陽》とあるクリーチャーを手札に加える。その後、山札をシャッフルする。 



 最早、レンは声も出なかった。
 完全に、抜かった。
 どうせなら、彼の手札も破壊しておくべきだったのに。

「前にも言ったはずだぜ。やるなら、俺の手札も破壊してからにしろってな」
「こ、の……馬鹿な!! 過去も、思い出も、仲間もいらないんだ!! 苦しめられるなら!! それが僕の足枷になるならば!! いらないんだぁぁぁーっ!!」
「馬鹿野郎が」

 ぴしゃり、と彼はそれを否定した。

「誰もが皆、何かを背負って苦しんでんだよ。何かに一筋に向かってる人だって、全部捨ててそれだけに向かって突っ走ってるわけじゃねえ。色々抱えて、重い足取りで、ゆっくりと歩んでるんだよ!!」

 誰もが、必ず何かを背負って生きている。それだけは伝えたかった。
 熱い思いを、彼にぶつけるために。
 真剣な眼差しを向けて言った。


「それでも前向いて進んでるんだ……前を向いて進むってのは、自分の抱えているものを捨てることじゃねえ!! ”引きずって”いくことなんだよ!! 重い足取りでも、ゆっくりと、確かに、一歩ずつ進んでいくことなんだよ!!」



 叫んだ彼は痛みにも負けずに言った。腹に力はこもらなかったが、それでも魂に身を任せ、彼に伝えたいことを伝えた。

『騙されてはいけません!! 貴方は——』
「うるさい!! 貴様は、黙っていろ!!」

 アヴィオールの邪悪な声を振り切り、彼は叫んだ。

「それでも、どうしようもなくなったらどうしたら良い!? 自分1人で抱え切れなくなったら、どうしたら良い!!」
「仲間がいる」

 断言した。
 そして、彼は力強く、静かに言った。
 彼に、思い出させるために。



「それを、あいつに——シオに教えたのは、お前のはずだ。レン」



 気付けばレンは、自分の心に巣食っていたものから、全て開放されていた。
 憎しみと苦しみが消えていく。



「お前が何て言ったって、俺達は仲間だ。お前の味方なんだ」



 九尾が、槍を振るう。
 大罪の鎖を、”自責”という罰を切り裂くため。
 ——馬鹿な、そんな、馬鹿なーっ!!
 ふと、レンの脳裏に浮かんだのは、ありし日のあの写真だった。
 彼女は。自分が変えてしまった彼女は。一体、今何を考えているのか。
 ——シオ……僕は……!
 次の瞬間。
 彼の脳裏に、1つの映像が更に浮かんだ——



 ***


 
 ——此処は——

 黒鳥レンの意識が目覚めた。
 良心という名の意識が。
 見れば、自分の腕に、冷たいものが繋がれていた。
 鎖だ。
 そして、辺りを見回すと、此処は独房のようだった。冷たい空気、コンクリートの床と天井、壁。
 正面には鉄格子の戸がある。
 自分はまるで、囚人のようだ。
 ふと、何かの気配を感じた彼は、正面を睨んだ。

「そこに、誰かいるのか?」

 反応は無い。
 しかし。彼は確かに見た。
 鉄格子の間に繋がれた、黒い龍の姿を——


 
 ***


 映像はそこで途切れた。
 だが、熱血の魂を叩き込むように、白陽が突貫して来ることにレンは気付いた。
 彼は、それを受け入れることにした。
 自分の中の悪鬼を、滅ぼすために。
 
「頼む」

 その声に、ヒナタは頷いた。
 《「白陽」》の効果で、レンのドラゴンは、もう攻撃もブロックも出来ない。
 障壁は、もう存在しない。
 それは、2人の間も同様だった——








「——《尾英雄 開闢の「白陽」》で、ダイレクトアタック」