二次創作小説(紙ほか)

Act13:武装・地獄の黒龍 ( No.202 )
日時: 2016/08/28 21:47
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 カードを捲った。
 そこには、黒き龍のカードがあった。
 牢獄のビジョンで見た、あの龍と、全く同じ——


 
 ——しかし、黒鳥レン。君の仲間は誰も貴方をこれ以上苦しめることは望んでいないはずだ——



 そして、声はカードから聞こえてくる。
 まるで、レンを導くように。
 


 ——申し送れました。ボクの名はアヴィオール。龍座の星の英雄——と言えば聞こえは良いですが、所詮は名ばかり。ボクは仲間を死なせた大罪人だ——



 でも、と彼は続けた。



 ——でも、自分を責めることは今更自己満足に過ぎない。仲間のために戦うあの少年を見て、ボクは確信したのです。自分を傷つけることは、仲間への償いではない、と。自分を大切に出来ない者に、どうして仲間を大切に出来ますか。



 その言葉が、今度こそ呪縛を砕いた。
 彼の心を長らく苦しめていた自責という呪縛を。
 シオのために悩み、苦しむだけでは何も変わらない。
 それよりも前に進むべきなのだ。
 引きずってでも、前に。
 レンはこの龍・アヴィオールに託したくなった。
 自分の望みを。

「アヴィオール。貴様に頼みがある」



 ——何でしょう。



「教えて欲しい。僕は何をすれば良い」



 ふふ、とアヴィオールは微笑みながら答えた。




 ——また、仲間に会いにいくことです。そのために、意地でも生き残りなさい——



「そうか。愚問だったな——そしてもう1つ、頼みがある」



 浮かび上がった。
 龍の姿が。
 彼は、自分の傍に居てくれるだろうか。
 また、彼のように共に闘ってくれるだろうか。
 



「僕の刃となって欲しい——仲間に降りかかる災厄を斬り裂いて、目の前の道を切り開くための刃に——」



 ——勿論。



 その言葉が返ってくる。



 ——君は、ボクと同じく、かつて仲間を失ったもの——二度と同じ過ちを繰り返さないために、ボクも君の刃となることを望もう——



 ***



 我に返った。
 気付けば、何分経っていただろうか。
 1分? 1時間? いや、そんなことはどうでもよかった。
 ——僕は——決めたぞ——
 マナのカード7枚をタップし、煉獄の炎に満ちた黒き龍を呼び出す。
 彼の者は、知識に満ちていた。
 彼の者は、誰よりも優しかった。
 彼の者は、故に誰よりも苦悩した——
 だから、自分に刃を向けて命を絶った。
 ——自分を傷つけることに意味は無いんだ!! 仲間のために、何が出来るか考えろ!! もし、分からないなら——

 

「煉獄の炎に包まれし、黒く美しい知龍よ。
 星の元に今、顕現しろ!!
 漆黒に染まり、闇夜を知り、全てを切り開く刃となれ!!」



 ——仲間のために、ひたすら生き残れ!!
 彼の身体全身に、力が流れ込む。
 星の力が。
 これこそが、あるべくしてある、真の力が。
 王道。
 近道をしない王道こそが、最大の近道だったのだ。




「——《策謀の魔龍星 アヴィオール・ヴァイス》!!」



 彼の声と共に、漆黒に染まった龍人がその姿を現す。
 モノクルを掛けた知的な風貌に、学者のような黒衣。
 そして、右手には巨大なガンブレード、左手には短い短剣を携え、まさしく刃そのものだった。
 
「何だぁぁぁーっ!? まさか、本体を呼び出したのかぁぁぁーっ!! ぎゃはははぁぁぁぁーっ!! ふざけるな、そいつはオレサマの道具だぁぁぁーっ!!」
『ボクはお前の道具ではありません。消えなさい。忌々しい黒歴史の権化め』

 次の瞬間、魔方陣が現れる。
 そこから現れたのは、黒く、スレンダーな龍だった。
 それはまさしく、荒ぶる彗星。
 まるで、彼女との思い出を示す、あの龍に似ていた——
 ——《リュウセイ》——いや、違うな。だが——心強い味方には変わりない!!

「《アヴィオール・ヴァイス》の効果発動。超次元ゾーンより、K・コアを持つクリーチャー、《地獄龍星シュバルツ・コメット メテオレイン》をバトルゾーンに!」

 まずは、と彼は言いかけたそのときだった。
 《メテオレイン》の身体が溶けた。
 ——なっ!?
 戸惑いを隠せないレンに、アルゴリズムが再び狂ったように笑みを浮かべた。

「馬鹿めぇぇぇー!! 《アヴィオール・ゼノン》が居る限り、お前のクリーチャーのパワーはマイナス5000される!! そいつはお陀仏だぜぇぇぇーっ!!」
「なっ……!! 5000だと!?」

 しかし。戸惑うレンをよそに、アヴィオールは落ち着き払っていた。
 
『馬鹿はお前ですよ、アルゴリズム。私の効果発動。ただでは死なないのが闇文明の力です!!』
「そ、そうだ——《アヴィオール・ヴァイス》の地獄(ヘル)マナ武装5発動!!」
「な、何だそれはぁぁぁーっ!?」

 次の瞬間、アヴィオールがガンブレードで《B・ロマノフ》を一刀両断にした。
 物の見事に真っ二つだった。そのまま、細切れになってしまう。
 目にも留まらぬ早業だった。
 彼は本当に頭脳派なのか、と疑う程に。

「僕のクリーチャーが破壊されたとき。僕のマナゾーンに闇のドラゴンかナイトクリーチャーが5体以上いれば、貴様のクリーチャーも破壊する」
「ぎいいいいああああああああああああああああ!! よぐもおおおおおおお!! オレサマのクリーチャーををををを!! この程度で、オレサマを倒せると思っているのかぁぁぁーっ!!」



策謀の魔龍星 アヴィオール・ヴァイス 闇文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/ダーク・ナイトメア 7000
K・コア
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、超次元ゾーンからK・コアを持つステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出しても良い。
地獄ヘルマナ武装5:自分のクリーチャーが破壊されたとき、自分のマナゾーンに闇のドラゴンとナイトが合計5体以上いる場合、相手のクリーチャーを1体選び、破壊する。



『ふふふ……冷静さを欠いたお前の負けですよ』
「何ぃ!?」

 次の瞬間、超次元ゾーンに置かれたはずの《メテオレイン》がバトルゾーンに戻ってくる。
 アルゴリズムは戦慄を覚えた。
 何故だか分からないが、ただただ戦慄を覚えたのだった。
 恐怖。ファンキー・ナイトメアが本来感じ得ない感情だった。



「ターンの終わりに墓地に闇のクリーチャーが5体以上落ちており、尚且つ《メテオレイン》が破壊されていた場合。こいつを超次元ゾーンから——《アヴィオール》に武装させることが出来る」



地獄龍星シュバルツ・コメット メテオレイン 闇文明 (5)
ステラアームド・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 5000
K・コア
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、山札の上から3枚を墓地に置く。その後、墓地からクリーチャーを1体自分の手札に加えても良い。
星芒武装:ターンの終わりに、このクリーチャーがバトルゾーンを離れていた場合、墓地に闇のクリーチャーが5体以上いれば、超次元ゾーンでこのクリーチャーを裏返し、《アヴィオール》と名前にあるクリーチャー1体の上に重ねる。



 次の瞬間、雷鳴が鳴り響く。
 そして。大量の隕石が降り注いだ。
 龍の魂が、アヴィオールのガンブレードに注がれていく。
 そこから、彼の身体が変貌した。
 より強く。
 そして、より美しく。
 それはまるで、夜空に尾を引く彗星のように——




「——邪悪を断つ我が刃よ。
貴様が望む姿に昇華せよ。
禍々しい悪魔か? 猛々しい龍か?
それとも、もっとも高貴で美しい闇夜の貴公子となるか——
《地獄の指揮者(ヘルコンダクター) アヴィオール・デスロード》、武装完了」