二次創作小説(紙ほか)

Act14:近づく星 ( No.204 )
日時: 2015/10/15 14:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

 気がつけば。
 地面に寝そべっていた。
 終わったのだ。
 アヴィオールを操っていた真の黒幕:アルゴリズムとの戦いが。

「レン!!」

 ああ、自分を呼ぶ声が聞こえる。
 身体を無理矢理起こす。はっきりいって、まだ全身が痛くて仕方がなかった。
 だが、仲間が来てくれた。それだけで十分だ。
 ぴらり、とアヴィオールのカードをヒナタ達に見せた。

「——やったぞ」

 驚きの表情を見せる2人。
 
「何だ。何をそんなにびっくりしているんだ」
「い、いや……まさか……すっげーなって……しかもそいつ、普通のドラゴンになっていないか? 前は全身骨だったのに」
「あれを見ろ」

 レンが指差したその先には、今にも燃え尽きそうな両面刷りのカードがあった。
 《アルゴリズム》の残骸だった。
 それが、全てを物語っていた。

「ニャンクスの時と同じ——ステラアームド・クリーチャーが悪さをしていたのね」
「ああ。間違いない」

 そして、次の瞬間。
 青いものがどんどん、飛んでいく。
 《アルゴリズム》の残骸から、青い炎がどんどん空へ飛び立ち、各地へ散らばっていく——

『奴が閉じ込めていた魂、ですか。全く、あれほどの人々に迷惑を——』

 今まで口を閉じていたアヴィオールが、ようやく声を発した。
 驚いたように、ヒナタとコトハがぽかん、と口を開いた。
 その姿は、自分達の知る彼とは大きく異なっていたからだ。

「お、お前……」
「もう、大丈夫なの?」
『ええ。我が名はアヴィオール。黒鳥レンの刃となるもの。そして——』



「僕の相棒だ」



 割り込むように、レンが言った。
 まるで、得意げに、自分の宝物を自慢するような。
 彼らしいと言えば彼らしかった。

「ヒナタ。コトハ。武闘先輩。本当に礼を言う」
「い、いや、良いんだ。お前が立ち直らないと、こっちも調子狂うしな」
「ううん。でも、最後はレンの力だったもの」
「そうだな。テメェが決着をつけてくれて、こっちとしても安心している所存だ。これでもう、奴との因縁も断ち切れたかもれない」

 そうだ、とレンは思い出したように言った。

「アヴィオール。アルゴリズムが言っていた、死神博士とやら——奴は一体何者だ?」
『……』

 彼は口をつぐんでしまった。
 それは、とても苦い顔をしていた。
 流石にこれ以上問い詰めるのも憚られてしまう。

「まあ、良いさ。これから貴様とは長い付き合いになる」
「そうだ! こいつ結構、キザで我侭でうるさい美学馬鹿だけど、我慢してやれよ!」
「何だと貴様!! 今何と言った!!」
「はて、記憶にねーな」
「何を言うか、貴様ぁぁぁーっ!!」
「全くもう!! 本当に歪みないんだから、あんた達は!!」

 仲良く喧嘩する3人組を見ながら、フジはアヴィオールに問いかける。

「さて、貴様の処遇だが……」
『ボクは望むなら、どんな罰でも受けましょう。貴方達が望むならば』
「いや、違うな。お前は黒鳥レンに任せることにするよ」

 にやり、と彼はいつものような天災の笑みを浮かべる。
 とても悪いことを考えているような、そんな笑みだ。

「まあその代わり、奴の実質上司の俺様の言う事を聞いてもらうこともあるだろうがな」
『いえ、構いませんよ。ボクは』

 そう言って、彼はレンを見つめた。



『やっとまた、仲間が出来た——ボクを本当に必要としてくれる人がいるなら、それで十分ですから——』
『おい、アヴィオール』



 声がした。見れば、そこには九尾の男が立っていた。
 

『白陽……さんでしたか』
『貴様が最後の英雄、か』
『本当に、申し訳ない』
『ふん。何を今更』
『ふふーん? これは白陽様は、アヴィオール様がクレセント様に絡んでいる以上、素直になれずに意地を張ってツンケンしてしまっているというパターンですかにゃ?』

 割って入るように、ニャンクスが現れる。
 驚いたような表情をアヴィオールは浮かべた。
 顔を真っ赤にして、白陽が反論する。

『ち、違う!! そうじゃない!!』
『全くー、クレセント様以外には本当に意地っ張りで頑固ですにゃ』
『う、うるさい!! ああ、とにかくだな——』

 何とかクールを取り繕った彼は、アヴィオールに手を伸ばす。



『これからも、よろしく頼む。歓迎しよう。お前をな』
『……ありがたい』


 龍人の賢将。
 九尾の青年。
 確かにこの2人の手は、この日。硬い星の友情で結ばれたのだった。
 共闘宣言。
 白陽はそれを伝えたかったのだ。

『ま、僕からもよろしくお願いしますにゃ!』

 遅れて、ニャンクスもアヴィオールの肩によじ登り、笑顔を見せたのだった。
 思わず、彼の笑顔も戻っていた。
 ——何百年ぶりに笑いましたかね——
 
「おい、アヴィオール!」

 彼は我に帰る。
 そこには、主の姿があった。



「これから、よろしく頼む。絶対に、折れてくれるなよ」
『このアヴィオール、簡単に折れるような軟弱な刃ではありません。この命を再び燃やし、貴方を守りましょう——』



 気付けば。
 空間は閉じ、自分達の知っている空となる。
 見れば、陽が今沈むところだった。



「ま、夕焼けに誓って、良かったっつーことで」
『そうだな』



 肩を並べるレンとアヴィオールを見て、自然とヒナタと白陽の顔も綻んだのだった。
 夕焼けを背景に、青い炎が無数に空へ飛び散っていく。
 本来在るべき場所へ——



 ***



 ——スミス。ありがとう。貴様には感謝してもしきれない。
 大切なものを思い出すきっかけ。
 それは、彼だった。
 かつての相棒である無法者だった。
 意地悪で、意地っ張りで、皮肉屋で。
 でも、大切な相棒で。
 居なくなってほしくなかった。心の支えとなっている彼が消えたとき、その実感が沸かなかった。
 そしてやっと沸いたあの時。
 レンは1人で泣き続けて、この世界を憎んだ。
 だが、そんな夜も今日、ようやく明けた。
 ——僕は君のことを忘れない。その上で、アヴィオールと戦っていく。
 気がつけば、頬に熱いものが流れていた。こんなところを彼に見られたら、笑われてしまうだろうか。
 ——だからもう、安心して良い。今まで本当にありがとう——
 《破界の右手 スミス》。彼はその名を、永久に忘れることはないだろう——


 ***



 こうして。アヴィオールを巡る一連の事件は幕を閉じた。
 そして、これで五文明の英雄が揃った。
 しかし。これから英雄を待ち受けるは、邪悪龍、そしてこの世に蔓延る黒い黒い影、そして世界の頂点——
 僕の名前はテラ。
 全ての語り部。
 この記録を付け続けるもの。
 そして——今は、まだ言えませんか。
 まあ、良いでしょう。
 それはまた、次の機会に——











        

































 ***



「……アヴィオールがこれで、正規に覚醒したか」
「ねーねー!」
「何だ、うるさい」
「ぼーくー、侵略したいなぁー? いいでしょー? ねぇー?」
「この聞かん坊が。おとなしくしろ。さっきもお前の所為で気配を表に立ててしまった」
「だってぼくー、もっとあばれたいんだもん! ねー、いいでしょー?」
「暴れるのは、奴が覚醒してからだ。さもなければ労力の無駄というもの。ギリギリのデュエルで、奴も覚醒すると思ったのだが——まあいい。引き続き、奴らの監視を続けるだけだ」
「ねーねー! しーんりゃーくー!」
「大人しくしろと言っているだろうが」
「むう。”コロナ”の意地悪ー!」
「全ては、奴が覚醒するまでだ、”アマツカゼ”——」


                                  to be continued……