二次創作小説(紙ほか)
- Act2:開幕 ( No.218 )
- 日時: 2016/01/05 22:06
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)
***
が、しかし。
当然それだけで終わるはずは無かった。
早速昼休みに一行は再び会議室に呼び出されたのだった。
その内容は、今日の全校集会に自分たちも選手として全校生徒の前で行進する、とのことであった。
というか、こんな大事を何故直前になって知らせたのかというと——
——だって、アヴィオールとかアンカとかの件があったわけだしー
とのことだった。
まあ納得である。
そして、現在に至る。
今、まさにその全校集会の途中で、ヒナタ達はアリーナの外で待機しているのだった。
「つーか、緊張するなぁ……」
白々しい顔で、言うヒナタ。
その表情には全く焦燥感だとか、そういうものが感じられない。
まるで、冷たい秋風の中にいるような——
「緊張どころじゃないんすけど、先輩ィ!? てか、何であんたはそんなに涼しそうな顔してんですかぁ!?」
「あばばばば……」
「おい、声を落とせ。どうするヒナタ。かなりビビっているが」
「かなーりアガってるわよ、あの子達」
「過去幾度の修羅場正念場に比べりゃこんなことどうってことねぇってわけよ」
「どうなってるすんか、あんたの心臓……」
しかし、と辺りを見回すと見慣れたメンツが見える。
学年の列強や、以前鎧龍サマートーナメントで戦ったライバルの姿——
「あれってコトハの兄貴じゃね?」
「うげっ……最近妙に上機嫌と思ったら……」
こちらには気付いていないが、コトハの兄・如月シュウヤもいた。
去年は、フジが指揮する(前回は3年生はリトルコーチ・選手の選択で参加できた上に、リトルコーチがそこまで重要な役では無かった)チームの一員だったが、今回も戦うことになるのだろうか。
「——ありゃ、テツヤのチームだな。ほれ、先頭を見ろ。あいつがいる」
フジの指差した方を見ると、学校一のドSとも専らの評判の凶悪頭脳プレイヤー・星目テツヤの姿があった(短編3参照)。
最近、鎧龍に戻ってきた彼だが、今度はリトルコーチとしてその頭脳を振るうのだろうか。
だとすれば、教え子になるであろうシュウヤのことがかなーり気の毒になるが。
「ふん、あのバカ兄貴には少しでも痛い目に遭って貰わないと薬にならないわ」
「そうだなあ……」
彼が同情を得られないのは、重度のシスコンであることに他ならない。
そのため、妹からは当然の如く煙たがられている。
いや、嫌われていると言っても過言ではない。
前回の大会だって、ヒナタのことを勝手にコトハに引っ付くクソ野郎呼ばわりし、勝手に引き離すだのくっつけるだのと言っていたのだから。
結果。コトハとの対戦で、勝負・物理のダブル方面でKOされたのだが、実力者であることには変わりない。
しかし。
それだけではなかった。
列の中に、見覚えのある少年が。
物静かそうな風貌の生徒にして、学校内でも強力な奇襲攻撃を扱うことで有名な焔クナイだった。
この間負けたヒナタとしては、因縁の相手の1人である。
「——あいつも星目先輩のチームなのか」
「どうも、一筋縄ではいきそうにないな」
「が、学校内の有名な先輩ばかりじゃないですかぁ、こんなのに勝てるんですか?」
「おいてめーら。そろそろ入場だぞ、黙れ」
フジが窘めたことにより、その場はいったん収まる。
しかし、ヒナタは見た。
クナイの瞳がこちらを向いたのを。
——成程な。テメェとも決着を付けなきゃいけねーってことか!
そう思った瞬間——アリーナへの扉が開かれ、選手入場となった——
***
「——今年の鎧龍サマートーナメントのチームは、前期の1〜3年生までの5人に加え、優秀な成績を持つ後期生1人のリトルコーチが付きマス」
淡々と原稿を読み上げる外国人とハーフの老校長・瓜生崎は続ける。
七時間目。科目・全校集会。
この時間には、今年の夏休み前の大イベント、鎧龍サマートーナメントのルール発表が毎年行われる。
が、しかし。
場にはピリピリとした雰囲気が漂っていた。
今回の鎧龍サマートーナメントは只事ではない、と上級生の多くも解していたのだ。
「そして、今回の鎧龍サマートーナメントで優勝したチームは、D・ステラ——即ち世界デュエリスト養成学校連盟合同大会の日本予選で我が校の代表として出場することになるのデス」
次の瞬間、歓声が上がる。
世界大会。
その言葉に、全生徒が沸いていた。
「世界だって!?」「D・ステラってうちの学校も出場するのか!?」という声が上がる。
しかし、それだけではなかった。
「よって、今年のサマートーナメントは例年のそれとは違い、所謂D・ステラの校内予選となり、出場する生徒は限られているのでご了承くだサイ——というのも既に、出場する生徒は決定しているのデス。選手団、入場——」
ばっ、とアリーナの後ろの扉が空気を吐き出すように開いた。
そこから後期生、即ち普通の学校で言えば高校生に相当する生徒を先頭に、前期生、即ち中学生に相当する生徒5人のチームが順に規則正しい行進で現れた。
そして、その中に——満面と愉悦に満ちた顔を浮かべた武闘フジと、暁ヒナタ達の姿もあったのだった——
「大会に参加するのは4回生のリトルコーチが率いる32チーム。そして、予選・本選共にトーナメント形式で行われマス。そして、5人のチームの大戦順を本選の間は対戦ごとに自由に決めて構わないというものデス」
つまり。
チーム同士の対戦ごとに、並び順を変えても良いということらしい。
そして、先に3回勝利したチームの勝利となる。
それが、鎧龍サマートーナメントの今年のルールだった。
「大会は一週間後——7月15日に行いマス。それでは、選手の皆さんは互いの健闘を祈り、観戦する生徒の皆さんも熱い応援をお願いしマス——」
こうして。
鎧龍サマートーナメントの発表は終わった。
そして。
ヒナタ達の戦いが始まったのだった。
そう。それも、長く長く厳しい、世界との戦いの始まりだった——