二次創作小説(紙ほか)
- Act3:特訓 ( No.219 )
- 日時: 2016/01/07 02:04
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)
***
放課後。
激動の一日を終えた2つの影が学校の坂を降りていく。
「しっかし良かったのか? ホタル。お前も武闘先輩の言うことをあんなにホイホイ真に受けちまって」
「あはは……」
途中まで帰り道が同じノゾムとホタルは、部活が無い日には一緒に帰るようになっていた。
半分この辺は、ホタルが口先八丁で彼を納得させたところがある。
魂胆は勿論、彼と関わる機会を増やしたかったからであるが。
それはともかく、ノゾムはホタルが心配だった。あまり押しに強いタイプではないため、不安を抱えていたり、本当は世界にも行きたくないのではないか、と思ってしまったのだ。
「オレはヒナタ先輩に着いて行こうと思った。此処まで世話になったんだ。もう断る理由は無かった。それに、世界を見れるなら、本望だ。それに、邪悪龍に接近できるチャンスなんだ。逃すわけにはいかねえ。だけど、お前はどうなんだ?」
「私は……」
一瞬、答えることを戸惑ったホタル。
やはり、場に流されたのだろうか、と彼はこのとき思ったが——
「ノゾムさんと一緒に……世界に行って恩返ししたい……なーんて」
間抜けにも「そーか」と返してしまったノゾムはそのまま歩いていた。
が、しかし、数秒して遅れる形で顔が真っ赤になる。
何より、ホタルのはにかみながら言ったその姿が余りにもいじらしくて。
「い、いえ! なんでも……ヒナタ先輩やレン先輩、コトハ先輩、そしてノゾムさんがいるなら……大丈夫かなって。それに、足手まといにはなりたくないですけど、何もしないのはもっといけないと思って」
「……お、おう……」
顔が真っ赤になった2人は。
そのまま、真っ赤な夕焼けを背に、何も言わずに帰路につこうとした——が、そのときであった。
ケータイの着信音が鳴り響く。
「んあ!? 何だ」
「ぶ、武闘先輩から……ですね」
要件は。
再び武闘ビルに来いとの連絡だった。
それも今すぐにだ。
***
武闘ビルにて。
いつものフジのオフィスに全員は集まっていた。
「いきなり呼び出してすまねーが、おめーらに問う。今のままで、勝てると思っているか?」
『……』
全員は黙りこくるしかなかった。
今回の参加者、どいつもこいつも学年の強豪や有力な先輩達で占められている。
ヒナタやレンがいるのはまだしも、3回生がいなくて、あまつさえ1回生もいる自分たちは大会全体から見てもかなりのダークホースだろう。
というか。
これで勝てるのだろうか、というムードが漂っていた。
「いけねぇなぁ!? そういうさぁ、お通夜みてーなムードはよォ!?」
「あんたがそうしたんじゃないですか、半分は!!」
「じゃあ残り半分は? それはテメェらの弱気だ。何のために俺様がテメェらを選んだと思っている」
にやり、といつもの嫌な笑みが浮かんだ。
「それはテメェらに才能があるからだ! 努力さえすれば開花する蕾と見込んでいるからだ! 俺様を信じろ。テメェらを信じる俺様を信じろ!!」
「どっかで聞いたことのある台詞をいけしゃあしゃあと!! オレ知ってますよ!!」
「流石武闘先輩、その辺りのネタには枚挙にいとまがないな」
「ネタが多すぎて真面目なのかふざけてんのか分からないんだけど、あたしは……」
「はあ」
溜息をついたのはヒナタだった。
「それで、武闘先輩。結局、俺達をどうしてここに?」
「説明しよう。この武闘財閥はバーチャルなんたらだとか、ARソリッドうんたらとか、挙句の果てにはバイクに乗ったままデュエ——」
「おいやめろ」
「——というように、様々なバーチャルシステムを作っているが……その中の1つを使う。ついて来い」
そのまま、得意げな背中で彼は部屋を出ていく。
それを見ながら、不安そうな顔でノゾムはヒナタに聞いた。
「良いんすか、先輩……」
「……知らん。覚悟を決めろ。世界に行くためだ。それに、これに参加するっつーことは、キイチにあんときのリベンジをすることにも繋がるかもしれねえんだぜ」
「あっ……」
「そういえば、あんた達キイチと戦ってボロ負けし——」
「それ以上はいけない」
D・ステラに出るということは、他の学校代表と争うことにもなる。
先の話だが、キイチと戦うことになるかもしれないのだ。いや、確実に彼は出てくるだろう。
そのため、ヒナタとしては藁にすがる思いだったのだ。
しかしノゾムとしては、正直フジには色々前科があるので(WRYYY!やネオ・メタルアベンジャーソリッド以下略二連装砲など)、できるだけ武闘財閥の頭のおかしい発明に頼りたくはなかった。
しかし。
こうなってしまっては仕方がない。
「行きましょう、ノゾムさん」
「あ、ああ……」
気付けば、先輩たちは皆先に行ってしまっていた。
ノゾムもホタルに押される形で後を追うことにした。
そして、やってきたのは、その機械があるらしい部屋だった。
入ると、正面には5台。
球体のポッドが置かれている。それも、人1人が余裕で入れそうなくらいの大きさだ。
「通称、D・コクーン。中に入れば、今持っている自分のデッキや、好きなカードで組んだデッキを使ってデュエルが出来るという代物だ——それも、バーチャルでコンピューターと対戦できる」
「それ普通にパソコンとかでも——」
「甘い!!」
至極真っ当なレンの突っ込みを、フジがバッサリ切り捨てる。
「この中のヘルメットを被ることにより、コンピューターがてめーらの思考パターンに合わせたデッキを用意したり、その他色々だ。大丈夫。怖いことは何にもない。ちょい黒鳥。入ってみ」
「……え?」
名指しされたのはレンだった。
言われるがままに、球体のそのマシーンの中に入る。
そして。
そのまま何の音さたも無かった。
「あれ、今中で何が起こってるんですか?」
「外からは見えないだろうが。取り敢えず、てめーら残りの分もきちんと用意してある。入るが良い」
「え」
そのまま、言われるがままに、順番に全員がD・コクーンなる機械の中に入っていく。
中は乗り物のコクピットのようになっており、テーブルのようなものが正面にある。
そして、奥行きのある画面にSTARTと映し出されていた。
「そんじゃ俺も——」
と入ろうとするヒナタ。
しかし。
がしり、と肩を掴まれる。
「待てヒナタ。テメェは別室だ」
「え?」
言い知れない威圧感を肌で感じ取ったヒナタ。
折角面白いものが使えると思った矢先である。
納得のいかないまま、それぞれの訓練が始まったのだった——