二次創作小説(紙ほか)

Act7:暁の光と幻の炎 ( No.22 )
日時: 2014/06/08 10:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「憎い、憎いぞすべてが!! 《コッコ・ルピア》召喚!!」

 ターン6。ヒナタと白陽のデュエル。
 ようやく、白陽の口調がさらに饒舌さを増していく。徐々に力を取り戻しているというのか。
 互いにシールドは5枚フルにあり、バトルゾーンには白陽が今召喚した《コッコ・ルピア》のみ。
 
「俺のターンだ! 肉肉うるせぇなお前はよ。もうちょい静かに出来ねぇのか? んじゃ俺は《スピア・ルピア》召喚で、エンドだわ」

 この空間にははっきり言ってもう慣れた。幾度と無くぶつかったオラクルとの戦いでは、何度も悲劇を生んだ。仲間のクリーチャーが死んでく姿は痛々しい。
 しかし、今はオラクルとのデュエルではないため、例え破壊されてもクリーチャーがカードごと死ぬことは無いはずだ。

「私のターン。《トット・ピピッチ》を召喚。ターン終了だ」
「《トット・ピピッチ》?」

 ドラゴンにスピードアタッカーを追加するが、敵軍にもそれを与えてしまうがゆえに、使用者の腕が試されるクリーチャーである。



トット・ピピッチ C 火文明 (3)
クリーチャー:ファイアー・バード 1000
バトルゾーンにあるドラゴンはすべて、「スピードアタッカー」を得る。


 
 ここで白陽は何も出来ないため、ターンを終える。はっきり言って、好都合だ。こちらのデッキにもドラゴンが控えている。故に《トット・ピピッチ》の効果を逆利用してしまえば怖くは無い。

「俺のターン! 《霊峰龍騎 フジサンダー》召喚だ!」

 コスト4でパワー6000のW・ブレイカーにガードマンのオマケつきのクリーチャー、《フジサンダー》。数少ないロックビーストでありながら、さらにアーマード・ドラゴンとの複合種族を持つ唯一のクリーチャーである。
 しかし、このクリーチャーには欠点が存在する。

「ま、ドラゴンがいないと攻撃できないんだけどね」

 ということだった。だが、他に出せそうなドラゴンがいなかったから仕方が無い。さっきのターンで《コッコ・ルピア》が自分の手札にも来なかったのは痛かった。

「私のターン。この私自身が直接戦場に出ようぞ! 《尾英雄 開闢の白陽》召喚!」
「え!?」

 ふさふさの黄金の尻尾を九本生やした英雄が蛇を胴に巻いて現われた。陰陽師の服を身に纏い、近代的な装甲が所々に付いている。
 マナ武装こそ発動しなかったが、これにより1つの弊害がヒナタに生じた。
 完全に盲点というか忘れていた。
 こいつが出たことにより、ヒナタのドラゴンはもう攻撃もブロックも出来なくなってしまう。
 つまり、いくら相手の《トット・ピピッチ》でスピードアタッカーを与えられていてもこれでは無意味。逆に相手はドラゴンで好き放題殴れてしまうのである。

「スピードアタッカーのこの私で貴様のシールドを2枚、叩き割ろうぞ! ハッ!!」

 シールドが2枚、白陽の口から吹き出された炎で溶けた。勿論、シールドは手札に加わる。S・トリガーは無い。
 だが、そんなことは気にしなかった。
 ここでヒナタは抱いていた疑問をぶつけた。

「お前、自分で自分の恋人傷つけて、なんとも思わないのかよ」
「む」

 白陽は漏らすように、言った。
 ギリッと歯を食いしばるヒナタ。仕方が無い。怒鳴ってでも、ぶん殴ってでも問いただすしか無いようだ。


「てめぇは自分で自分の大切な奴を傷つけても何とも思わないのかって聞いてんだ、このインチキ陰陽師が!!」


 吐き出すようにヒナタは怒鳴った。はっきり言って、”怒る”とはこんなにも疲れることか、と今更ながら実感した。
 だが、悪びれた様子も見せずに白陽は言った。

「ない」

 彼はたった二文字、それだけでヒナタの言葉も、そしてクレセントの思いも否定した。

「今の私には人間への憎悪、怒りしかない!! すべてを焼き尽すまで、私の復讐は終わらない!!」

 白陽の中には闇文明のように渦巻く黒い感情があった。本来の自分を見失ってしまうほどに。
 愛する人の区別も付かないほどに。
 それは簡単には止められない。
 だが。

「じゃあ何で”本当”に焼き尽さなかったんだ?」
「何を!!」

 白陽は言い返したが、ヒナタがさらに畳み掛けた。
 良く考えてみれば、こいつは本当の炎を一度も使わなかった。
 
「本当は傷つけるのも、誰かが傷つくのも怖いだけなんじゃねえのか!! だから単なる自己満のためにあんなことをやったんじゃねえのか!?」
「貴様、言わせておけば----------------!!」
「俺はてめぇみたいなずるい奴を一人前のクリーチャーとは思わない。今のてめぇは、人に嘘ついて喜ぶ唯のガキだ!!」

 こいつを絶対に引っ張り出す。心の闇から。
 いつしか、そう言った感情がヒナタの中にあった。
 ターンの最初のカードを引いた。よし、これだ。

「俺のターン、《コッコ・ルピア》召喚! そして、《スピア・ルピア》で《トット・ピピッチ》と相打ちに! 効果で山札を見てドラゴンを手札に加える!」

 山札を見て、何かに気付くヒナタ。そのまま、選んだ龍を手札へ。

「んでもって、《シンカゲリュウ・柳井・ドラゴン》を手札に! ターンエンドだ!」

 準備は整った。
 だが、白陽が言い知れないオーラを放っていることにヒナタは気付く。まずい。完全に怒らせたか。

「貴様は簡単には死なせてやらんぞ、暁ヒナタァァァァァァァァァ!!」

 激昂する白陽。いや、逆ギレとも言うべきか。
 だが、いずれにせよまずいことには変わらない。何故なら、白陽が繰り出してきたクリーチャーは--------------


「蘇る刃は紫電の如し! 今こそ、その姿を再び現せ! 現われよ、《ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》召喚!!」


 現われてしまった。二刀流で強烈かつ疾風怒濤の二連斬撃を得意とするアーマード・ドラゴンだ。
 つまり、簡潔に言えば初めてタップされたとき、アンタップするというもの。擬似的なQ・ブレイカー、敵獣を破壊しつつシールドへの強襲、そして殴り返し防止。用途などいくらでも思いつくが、此処で思いつくのは------------やはり二連撃か。
 幸い《トット・ピピッチ》は潰しておいたため、すぐに攻撃される心配は無用だ。

「ふはは、次のターンの一斉攻撃で一気に終わらせてやるぞ、ガキめ。地獄の業火に炙られるが良いわ! ターンエンドだ!」
「どうだかな!」

 ヒナタは余裕の笑みを浮かべた。
 そして軽快に言い返す。

「おごり高ぶってると、ロクなことが起こらないぜ狐君? 俺のターン、《シンカゲリュウ・柳井・ドラゴン》召喚! 効果でマナに在るドラゴンを全てアンタップだ!」
「む?」
「そして、《ピアラ・ハート》召喚! 効果で《コッコ・ルピア》も破壊!」

 大口を叩いた割には行動を積極的にしなかったヒナタ。
 九尾はその様子を見て、口角を卑しく上げた。
 場には《ボルバルザーク》と自分自身がいる。勝てる。

「それで終わりか! 貴様は楽には地獄に送ってやらんぞ! さあ、私のターン! 《ボルバルザーク》でW・ブレイク!!」
「トリガーなし----------か。いや、大丈夫だ!」
「死ねぇぇぇ!!」

 《ボルバルザーク》の斬撃第二波が迫り、最期のシールドを叩き斬った。だが、そのときだ。


「S・トリガー発動! 《天守閣 龍王武陣》!!」