二次創作小説(紙ほか)

Act3:特訓 ( No.221 )
日時: 2016/01/07 01:28
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)

 というわけで。
 その日からノゾム達の100勝ノルマ達成の地獄の特訓が始まった。
 何戦かした結果、自分たちの使うデッキは完全にランダムというわけではなくある程度パターン化されており、各人によって違うようだった。
 例えばレンならばビートよりの火中心のデッキ。
 ホタルならば闇中心の隙の無いビート・コントロールのデッキ。
 コトハは光中心の天門やロックなどのデッキ。また、闇などの妨害中心のデッキ。
 残るノゾムは、かなり複雑なコンボデッキ・ループデッキが中心であった。
 できれば、自分たちが普段使うデッキで特訓をしたいのだが「それでは意味が無い」とフジは言う。
 そしてそして一方のヒナタはその日から余り姿を見せなくなり、学校でも余り話さなくなった。
 何があったとレン達が聞いても「ま、まあ、俺だけ特別補修なんだとよ、あははは……」と言うだけ。恐らく、彼の疲れた顔からして彼も彼で楽ではないことは確実だろう、と当人たちは判断した。
 今彼を問い詰めるよりも、自分の事の方が大事である。
 当のフジが何を考えているのかという疑惑。
 そして慣れないデッキで勝たねばならないという疲労。
 ノルマ達成が出来なければD・ステラは勿論、英雄もボッシュ—トされるのだから、プレッシャーも大きかった。

「——ま、また負けちゃいました……」



『淡島ホタル
現在勝利数:16』



 3日目。
 こうもなると、全員疲労が目立ってくる。
 ノルマを稼がねば、という焦りだ。
 特に。
 ホタルの戦績は芳しいものではなかった。

「……んなこと言ったら、あたしだってそうでもないわよ? ホタルちゃん。AIがかなり強いんだもの」



『如月コトハ
現在勝利数:25』



「そ、そうだ、何かコツとかは掴めましたか如月先輩!」
「お、新聞部モード入った? でもねー、あたしもよく分からないのよ……ただ、なんていうか、あたしの使うデッキ、大戦のたびに使うとはいえ使ってたら生理的に嫌な気分になるっていうか、何ていうか……特に自分と同じデッキに当たった時には自分をいじめてる気分になるっていうか……」
「何かそういえば、あたしも同じことを……」

 ——しっかしなかなか上手くいかねーな……100勝か……。
 女子同士というだけあって、仲の良いホタルとコトハを横目に、こちらも余り勝率が芳しくはないノゾムは、先輩に問うたのだった。
 息抜きもかねての質問であった。

「レン先輩、どうですか?」



『十六夜 ノゾム
現在勝利数:27』




「……ああ。まあまあだ。ただ——コトハの言ってることは案外的を射ているかもしれんぞ」
「え?」
「僕たちが使っているデッキ……やはり、ランダムとはいえ傾向が似ている。そして、それらはやはり僕たちに何か関係していると思う——まあ、僕としてはその辺は貴様自身で気付くべきだと思うが」




『黒鳥レン
現在勝利数——46』




「——!」
「まあ、スコアはこんなものだ。そのデッキをもっと知るつもりで、”1戦1戦を大事にする”ことだ」
「これって……!」
「ああ。やはりこれは一種のトレーニングだ。貴様が貴様自身で真実にたどり着いたときに、結果が残るはず」

 静かに、重く響くその言葉にノゾムは口を噤まずを得なかった。
 ——すげえ! 流石、ヒナタ先輩と並ぶ強豪って言われるだけはある——! オレももっと、頑張らねえと!
 再びD・コクーンの中に入り込み、彼は対戦を始めた。
 ——100勝って言葉に惑わされて、1戦1戦を流し作業みてーに流していたかもしれない! 集中しろ、オレ! 強くなるには、もっと、もっと更なる境地に達するには——!!
 こうして。
 各人は更に対戦と対戦を重ねることになった。
 やはり一筋縄でいくものではなかったが……。



 ***



 翌日。
 昼休みにノゾムが見たのは——

「あ〜う〜……」

 ばったり机に突っ伏しているホタルであった。
 普段の気丈な彼女からは考えられないその姿に、何が原因なのかは大体察しつつ、取り敢えず放ってもおけないので声をかけることに。
 
「どうしたホタル……」
「のぞむさぁぁぁーん」

 涙目になっている彼女に若干苦笑いした。
 まあ、気持ちは分からないことも無かった。

「デュエルってあんなに辛いものでしたっけノゾムさん……」
「早速心が折れてやがる」
「そもそもデュエルって何でしたっけ……ああ……デュエルという言葉が頭の中でゲシュタルトデュエル崩壊して……」
「何言ってんだ、正気に戻れ……デッキが選べねえ辺り、完全にプレイングだとかそういうのを鍛えるんじゃねえか?」
「完全に私が足手まといじゃないですか、やだー! しかも普段とは違うデッキを使うって、先輩は本番で私たちに別のデッキでも使わせる気なんでしょうか!?」

 結局。
 ホタルは殆ど昨日も勝ち数を増やすことが出来なかった。
 AIの強さもあり、なかなか勝てないのだ。
 全敗ではないだけまだマシなのであるが。

「いやー、しかしなあ……それはねぇと思うぞ? じゃねえと、わざわざオレ達のことを分析したりだとかそういうことはしねぇ気がするなあ……そもそも、オレ達が何文明の適合者ってのは武闘先輩が一番知ってる気がするし」
「しかも、1人ノルマ不達成だったら全員脱落だとか……無茶苦茶ですよぉ! 武闘ビルに行きたくない……」
「ま、それはさー、フジ先輩がオレ達には絶対できるって確信してるからじゃねえか?」
「無理無理!! だって、私にはいきなりレベルが高すぎますって……」

 この間の意気込みは何処へやら。
 疲れているからか、本音がダダ漏れだった。

「レン先輩もこれは一種のトレーニングだって言ってたし。まだまだ有情だと思うぜオレ」
「甘言を吐いてるのは重々承知なんですけど……流石に疲れました」

 ぐでー、と机に突っ伏すホタル。
 それを見兼ねたのか、クレセントも現れた。

『どうする? ノゾム』
「オレは後四日あれば勝利ノルマは稼げそうだから良いんだけどな……休日は一日中D・コクーンで対戦することが出来るわけだし」
『あたしたちボッシュ—トされちゃうかもだよ!? どうすんの!?』
「……よし!」

 妙案が思いついたのか、ノゾムは彼女に良い放つ。




「今日の放課後、オレに付き合え! ホタル!」