二次創作小説(紙ほか)
- Act6:最後の夜 ( No.229 )
- 日時: 2016/01/13 21:01
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)
画して。
残り時間、5時間というラストスパートに漕ぎ着けた。
土日で勝数を稼いだからか、もう終わりは見えている。
「よしっ!! これで終わりだ!! 《凶戦士 ブレイズ・クロー》でダイレクトアタック!」
『黒鳥レン、100勝ノルマ達成。』
まずは、速攻デッキやビートダウンを使っていたのもあり、レンが真っ先に終える。
そして、残り3時間というところで——今度はコトハが、100回目のダイレクトアタックを決めたのだった。
「《奇跡の精霊 ミルザム》……あんたには助けられたわね」
そしてそして、残り2時間。使っていたデッキが複雑なコントロールということもあり、遅れていたノゾムだったが——
「《我臥牙 ヴェロキボアロス》でダイレクトアタックだ!!」
——一気にケリをつけることに成功する。
流石に、数の暴力の前にはコンピューターも屈するしか無かったようだ。
しかし。
未だに、やはりというべきかホタルだけが出て来ない。
既に終わっているものの、彼女が100勝を終えて出てくるのを、3人はホタルのD・コクーンの前で待ち侘びているのだった——
***
——ノゾムさん……! 私を、闇から助けてくれた人……!
ぜぇ、ぜぇ、と摩耗しきった体力と精神力で、彼女は画面を見据える。
ホタルの場には、《悪魔龍王 ロックダウン》と《一撃奪取 ブラッドレイン》。
しかし、相手の場には——タップされた《術英雄 チュレンテンホウ》と《一撃奪取 マイパッド》があった。そして、相手の手札には2枚のカードがある。
互いにシールドは残り2枚。
此処で《チュレンテンホウ》を潰して、次に持っていくのもアリと言えばアリだ。
——安定行動を——これが最後だから——!
”だからオレも、オレの最強を持ってお前に真っ向から立ち向かう!!”
——違う。此処で決めなきゃ——! あたしの、あたしが今持てる最強を持って——!!
「《ロックダウン》でW・ブレイク!!」
シールドを思い切り、叩き割ることを決断した。
それが、今の自分を変えることにつながるのなら——!!
そして、S・トリガーも、《チュレンテンホウ》の効果も——発動しなかった。
「《ブラッドレイン》でダイレクトアタック!!」
そして、迷いなく終わりの一撃を叩き込んだのだった——
ばたり、と筐体に彼女は倒れ込む。
力が抜けたような気分だった。
そして、『100勝達成、おめでとうございます』というアナウンスがひたすら流れていたのだった。
開くD・コクーンの扉。
ノゾムの、「すげー! ホタル! やったんだよ!! お前、100勝達成できたんだよ!」という声だけが耳に残っていた——
***
「いやー、お疲れ。すっげー眠いと思うけど、最後まで俺様の話を聞いてね」
3分前。
実にぎりぎりであったが、何とか全員ノルマを達成することに成功した。
「ヒナタの奴も、目標を達成したし、まあこれで万事オッケーか」
「結局、武闘先輩。今回の特訓についての答え合わせをして貰いたいのですが」
「んあ? ああ」
曖昧に答えた彼は、にやりと口角を上げた。
「実戦形式で色んなデッキを知ってもらいたかったこと、そしてその対処法を自分の身を持って分かって欲しかったってのが一番だな。大会じゃあ、1つのデッキで戦わないといけないわけだし、多くのデッキへの対処法を知っておくのは効率的だ」
「はぁ」
「しかし。前にも言ったと思うが、違うタイプのデッキを使うことで見えてくるものがある。物事は1つの視点からじゃあ何も見えやしねぇのよ」
彼の言うことは一理あった。
そして、続けた。
「まあ、アレだ。テメェら多分、自分のデッキの最終調整する時にこの一週間の経験をフルに使うが良いぜ。こんな俺様だが、伝えたかったことはこんなもんだ。後は、追い詰められた時の精神管理だとか、一年は分かったことも多いんじゃねえか?」
「……はい。ノゾムさんのおかげです」
「い、いや、オレはちょっとアドバイスしただけだし……」
「オーケーオーケー。ともかく、だ。第一段階クリアってところだな」
全員が疲れたような顔をしている。
このまま歩いて帰らせるのはアレなので、この日は全員が武闘財閥の車で送って帰してもらうことになったのだった。
そして、ヒナタは先に帰ってしまっていたらしい。
本当にこの一週間、何をやっていたのかは謎であった。
***
「——揃ったな」
遂に、この日がやってきた。
フジは、全員を見据える。
控室に揃った5人の顔を見て。
もう、その顔に緊張してアガったりだとか、そういうものはなかった。
全員が、真剣に戦いに臨む戦士の表情をしていた。
「何であれ、よくやった! としか言いようがねえ。てめーらの実力は確実に上がったはずだ」
「——まあ、それは——先輩が」
「俺様は不器用だからな。こんなことしかできねーんだ。だが1年。特にてめーらが、上とちったぁマシに戦えるようにはしたつもりだぜ。そして2年。てめーらには更なる実力の底上げ、そして思考持久力を鍛えて貰ったつもりだ。心して掛かれ。ぜってぇに優勝だ!! そして、D・ステラへの道を繋ぐんだ!」
はいっ! と全員が強く、返す。
ノゾムは、ちらり、とヒナタの方を見た。
この一週間、何度か彼の姿を見た。
しかし。
今日の彼は、今までになく引き締まっていた。
「ヒナタ先輩、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか? あんた今まで何の特訓を」
「まー、それはお楽しみだ。今は目の前の戦いに集中しろ、ノゾム」
「あたし達にも教えてくれないわけ?」
「一体、何だって言うんだ。武闘先輩の言っていた革命のカードと、何か関係があるのか?」
「まーまー、落ち着けって」
そんなことをやっている中。
遂にアナウンスがなった。
『定刻になりました。選手はアリーナに入場してください——』
こうして。
鎧龍の最も長い日が始まった。
世界に行くための切符を手に入れる、第一歩となる大会。
若者達のデュエル魂をぶつけ合う場。
鎧龍サマートーナメントの幕開けだ——!
「勝ちにいくぞ! 目にモノ見せに行ってやるんだ!」
フジに続くように、全員は歩いていく。
戦いのステージへと——