二次創作小説(紙ほか)

Act7:暁の光と幻の炎 ( No.23 )
日時: 2014/06/08 22:31
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「S・トリガー発動! 《天守閣 龍王武陣》で山札から5枚を確認して、その中から《超熱血 フルボコ・ドナックル》を選択し、こいつのパワー11000以下の《白陽》を破壊!」



天守閣 龍王武陣 R 火文明 (5)
呪文
S・トリガー
自分の山札の上から5枚を見る。その中から火のクリーチャーを1体、相手に見せ、そのクリーチャーのパワー以下の相手のクリーチャーを1体破壊してもよい。
マナ武装5:自分のマナゾーンに火のカードが5枚以上あれば、その見せたカードを自分の手札に加える。
自分の山札をシャッフルする。



 突如、城が現われた。天守閣が龍の頭を成した和風の城だ。その上に乗っている《鬼ウッカリ 爆マル》の命令によって、城砦の砲台が鳴り響き、1体のクリーチャーが撃ち出された。(ついでに命令を出した《爆マル》もウッカリ大砲の中に落ちて撃ち出された)
 《フルボコ・ドナックル》が超獣大砲となって、飛んでいく。(《爆マル》は途中で落ちたが)
 そのまま、《「白陽」》に突っ込んで大爆発した。
 さらに、手札に《フルボコ・ドナックル》は戻っていく。

「ぐああ!?」
「俺はわかっていたんだ。さっき《スピア・ルピア》の効果で山札を見たとき、俺は《龍王武陣》を4枚フルで投入しているが、2枚は山札、1枚はマナにあった。じゃあ、残りの1枚はどこにある? 答えはシンプル」

 そう、即ちシールドだ。
 白陽はこのターンで決めることが出来なくなった。しかも、ヒナタの場には《コッコ・ルピア》、《ピアラ・ハート》、《フジサンダー》に《柳井・ドラゴン》の4体。シールドは全て持っていかれるだろう。
 だが、そのままでは止めをさせない。
 だからこそ、ヒナタは”あのクリーチャー”を手札に加えたのだ。

「俺のターンだ! てめぇは泣くまでぶん殴る!! 行くぜ、《シンカゲリュウ・柳井・ドラゴン》進化!」

 《柳井・ドラゴン》の体が爆炎に包まれた。そして、黄金の鎧を全身に纏った熱血龍がその姿を現す。
 その身体は龍にしては極めて異型だ。非情に巨大な体格に、両手にはメリケンサックが装備されており、さらに大きく膨れ上がった身体には黄金の鎧が着けられていた。


「俺の拳が激しく燃える!! 努力、根性、勝利! 熱血の三カ条を掲げ、今戦場に見参せよ! 出てきやがれ、《超熱血 フルボコ・ドナックル》!!」

 
 超熱血の大親分、《フルボコ・ドナックル》が現われた。火文明の戦闘龍を束ねるリーダーで、自分と部下に常に厳しい訓練をつませる鬼教官だ。



超熱血 フルボコ・ドナックル SR 火文明 (6)
進化クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 11000
進化−自分のドラゴン1体の上に置く。
このクリーチャーがバトルに勝った時、このクリーチャーをアンタップし、相手のシールドを2枚ブレイクする。
W・ブレイカー



「ぶっ飛ばせ!! 《ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》を攻撃して破壊だ!!」

 いくら戦国の鎧で身を固めた装甲竜だろうと、熱血を司る最強の戦闘龍の前には敵わなかった。
 拳が次々に撃ち込まれて、鎧は一瞬で砕け散り、そのまま《ボルバルザーク》は場外へと吹っ飛ばされる。
 さらに、吹っ飛ばされた《ボルバルザーク》がシールドへぶつかって、2枚割ってしまった。

「な、な、いったいこれは--------------!!」
「《フルボコ・ドナックル》はバトルに勝てばアンタップする上に相手のシールドを2枚、叩き割る!」

 トリガーはない。続けて、大山が鳴動する。《フジサンダー》がようやく怒りを噴火させるべく動き出したのだ。
 その前を通り過ぎるのは、槍を携えた《ピアラ・ハート》だ。

「《ピアラ・ハート》でシールドブレイク! 《フジサンダー》でW・ブレイク!!」

 シールドが一気にゼロに。
 白陽の顔は青ざめる。

「S・トリガー、《ミラクル・バーストショット》でパワー3000以下を破壊------------」

 だが、無駄だ。《コッコ・ルピア》と《ピアラ・ハート》が破壊されただけで、痛くもかゆくも無い。
 ヒナタは先に低コスト低パワーのクリーチャーから攻撃させた。何故なら、それらを止めに使おうとすると、先に火力呪文で焼かれてしまう恐れがあるからだった。
 ヒナタの場で攻撃できるクリーチャーは唯一つ。
 先ほどバトルに勝ってアンタップした《フルボコ・ドナックル》のみ---------------


「《超熱血 フルボコ・ドナックル》でダイレクトアタック!!」


 刹那----------白陽は自分の身体に無数の拳が叩きつけられる感覚を覚えたのだった。
 最早、痛みも感じないほどに。

 ***

「私は一体-----------何をしていたのだ」

 もう、人気の無い大通りで大の字に倒れる白陽。気付けば、大粒の雨が降ってきた。
 ようやく、白陽は正気に戻ったらしかった。
 しかし、自分がやってしまったことはよく覚えていたらしい。

「クレセントを傷つけて、関係の無いものまで巻き込んで---------」

 上事のように呟く白陽。

「おめーらってホント考えてること似てるよな」

 見下ろすように言うヒナタ。
 白陽は何も感じていないかのように、虚空をただただ見つめるだけだった。

「大丈夫だって。クレセントもお前が邪気に当てられたのは分かってるから」
「すまなかったな、私1人のために」

 申し訳なさそうに白陽は言った。
 雨が濡らしていく。
 白陽の眼から流れる雫と区別が付かないほどに。

「バーロ、てめぇ1人のためじゃねえよ。クレセントがいるんだろうが」
「……ふふ、それもそうだったな」

 白陽は零すように初めてこのとき笑った。
 犯した罪はすぐには流せない。
 だが、生きていれば必ず償える。

「さーてと、町の人の安否は警察とかに任せるとして。さっきの廃ビルに戻るか」

 そういって、足を踏み出すヒナタ。

「お前も行くだろ?」
「ああ」

 白陽は起き上がった。
 ふと、ここでヒナタは思いついた。
 さっきから気になっているのは、白陽の尻から凛々しく伸びた9つの尻尾。
 雨にこそぬれているが、まだふさふさしたままだ。
 このとき、1つの感情がヒナタの中でわきあがった。
 ---------ヤベ、滅茶苦茶もふもふしてぇ。
 
「その前によぉ?」
「ん」

 サッ、とヒナタは眼にも留まらぬスピードで白陽の背後に回りこむ。

「その尻尾をもふらせろォー!!」
「ええええええ!?」

 ぎゅっ、と白陽の尻尾を握る。
 ふわふわとした感覚に包み込まれる----------------が、そのときだった。
 急に、白陽の身体が小さくなるような感覚を覚えた。
 ずっと尻尾に寄りかかっていたヒナタはずっこけそうになる。尻尾も縮んでしまっている。
 さらに、沢山あった尻尾も今触っている1本だけになってしまった。
 陰陽師の服は消え---------最後に残ったのは、小さな狐の姿。
 愛くるしい瞳は怒りで少し揺らいでいたが、逆に可愛いほどだ。

「何だこれ」
「こーらー!! 尻尾を握るなぁー!! オイラ達は尻尾を握られたら力を失ってこうなっちまうんだい!!」

 姿だけではない。口調まで幼いものとなっている。さっきまでのシリアスティックな雰囲気はドコへ消えたのか。

「パチコンボールΩの主人公みたいだな。尻尾が弱点って」
「うっせ!」

 ただ、あの状態で街を一緒にうろつかれても困るので。
 この状態のほうが楽だろうと判断したヒナタによって、哀れな白陽は廃ビルに着くまでこの姿だった。