二次創作小説(紙ほか)
- Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.230 )
- 日時: 2016/01/15 01:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)
鎧龍サマートーナメント。
その今年のルールは、5対5のチーム戦で、先に3勝した方が勝ちというルールだった。
そして。問題は対戦順である。
各チームは、誰が先鋒、次鋒、中堅、副将、大将になるのかを自由に決めることが出来、予め申告するのだ。
そして、16チームによるトーナメント。
つまり、ヒナタ達は優勝までに4回勝たねばならないのである。
だが、まず浮彫になったのは対戦順であった。
時は遡るが、これは朝の受付の時である。
フジ曰く「完全に忘れていた☆」とのことだったので、先輩とはいえキツいお灸を据えてやり、残る5人は並び順を決めることにしたのだった。
が、しかし。
真っ先にヒナタがその静寂をぶち破ったのだった。
「あ、俺大将で良いぜ。よっぽどの事が無けりゃ、な」
との事である。
突然の申告に各自は固まった。
そして——真っ先にコトハが反論したのだった。
「……何で自分から!? レ、レンもどうかなーってあたし思ったんだけど……」
「いや、フジ先輩から言われたんだよな。今回のこれは、出来るだけ最後まで取っておけって」
「暁先輩、黒鳥先輩の黒単はハンデス、ブロッカー、除去で隙が無いデッキですよ。どのデッキが相手でも、ある程度は戦えますし……」
そーだな、と言ったのは今回”も”元凶のフジであった。
「だが、今回のヒナタのデッキは、ギリギリの追い詰められている状態だからこそ力を発揮するからな」
「で、ですけど……」
「ま、そういうことだから。残り4つは決めてくれ」
釈然としないコトハとホタル。
デッキの特徴を、この特訓で覚えたからこその意見だったのだが、それが却下されて納得いかないのだ。
しかし。
「逆に言えば、ヒナタ先輩のデッキは”今までにない”ってことですね?」
もやもやとした雰囲気に石を投じたのはノゾムだった。
「——ご名答だ」
そして。
にやり、といつもの笑みを彼も浮かべたのだった。
どうやら、よほど今回の切札には自信があるらしかった。
「ヒナタ先輩がこの一週間何をやっていたのかはオレ達も知らない——だけど、オレ達に出来るのは、誰が相手だろうが勝つことですから!」
「——僕もヒナタが大将になるのは賛成だ。貴様は此処一番でいつもひっくり返してくれる。何、コールド負けなどには、僕の面子に、そして貴様の面子に賭けて絶対にありえん。それどころか、貴様の出番を奪ってやる」
「……仕方ないわね。あたし達が、あんたの出番も無いくらいに、活躍すれば良いだけだったわ」
「……分かりました。先輩を信じます」
「何か、俺から出番奪う話になってね?」
「それくらいこいつらも、特訓したんだ。分かってやれ」
全員の闘志が改めて確認される中。
こうして、試行錯誤の先にとうとうチームの対戦順が決まったのだった——
***
——ということがあり。
現在、会場にて。
『これより、鎧龍サマートーナメントを開始します!!』
アナウンスの言葉で、会場は熱気と興奮に包まれた。有志のチームで行われていた、このトーナメントは毎年毎年、見るものや戦うもの、両方を楽しませてきた。
巨大なデュエルリング、そして実体化するホログラム。
質量を持った幻像であるそれは、非常にリアルだ。
まるで、自分が、そしてこの場が戦場にあるかのような臨場感なのだ。
「今年は4戦……か。去年よりも1戦少ないけど、その分チームの数が多いから緊張が続くわね……」
「どれも気を抜ける相手じゃねーぞ。特に、真っ先にテメェらが当たる相手はな——ヒナタ、如月、黒鳥。テメェらが特に知っている奴の1人が入っているからな」
「——そうっすね……」
対戦カードの中には、ヒナタ達チームFと、その相手になるチームBのメンバー名が書いてあった。
そしてその中には——
「デッキビルディングの天才・二回生、茅山リョウ。副将か——」
——ヒナタ達もよく知る少年の名があった。
「知り合いなんですか? 誰すか?」
「ノゾムさん! この人、鎧龍のデッキコンテストで星目先輩と良い勝負をした生徒で有名です!」
「そうなのか?」
自分達が知らぬ間に、恐ろしい存在になってしまった、とヒナタ達は戦慄する。
鬼畜・ドSデッキビルダーで知られる星目テツヤに並ぶデッキビルダーとして、今や認知されてしまっているのだから。
彼は、オラクル事件に関わった者の1人で、ヒナタ達の友人だった。
そして、前回のサマートーナメントでは、光のアウトレイジの力を使い、ヒナタ達の前に立ち塞がることになったのだ。
また、皆の知らないところでは、竜神王の一件でもヒナタの心を動かすきっかけになった人物である。ただし、この件については本人も含めてヒナタ以外誰も覚えていないのであるが。
実力はパッとしない、と言われることはあるものの、それはあくまでもヒナタやレンなどの同期の強豪に比べればの話で、今となっては十分に強くなっていた。
そのデッキも、相手を徹底的に苦しめるコンボの鬼のようなテツヤのものとは違い、種族やコンセプトを生かした、楽しめるものが中心で、さしものテツヤも「うーん、良いよねぇ。ファンデッキ、ネタデッキと見向きもしなかったんだけどなあ、此処まで強いのかコレ。回してみてびっくりしたわ。出来れば、俺のデッキビルディング技術を是非ともレクチャーしてーわ。え? それは駄目?」と一目置くほど。
今回、そのテツヤのチームでは無いものの、やはり上級生に認められる程の実力者であることは分かる。
そして——その対戦相手になるのは。
「オレェ!?」
ノゾムであった。
前後するが、チームFの対戦順は、
先鋒:コトハ
次鋒:ホタル
中堅:レン
副将:ノゾム
大将:ヒナタ
なのだ。
「——成程な。冷静でプレイングにキレがあり、大将に回せるリョウが相手チームでは最適だったわけか」
「とは言え、少しこれ苦しいわね……頼むから、あんたら2人が負けて、笑えないようなことにはならないでよ?」
「どっちにせよ、相手チームには3年生もいるしなぁ……つか、3年生2人、2年生3人か……ちとコレ最初から厳しいな」
「てか、2年3人、1年2人なんてチーム他に居ませんよ」
そんなわけで。
一抹の不安を覚えながら、彼らは1回戦を迎えたのだった——