二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.233 )
日時: 2016/01/24 12:26
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)

神聖麒 シューゲイザー 無色 (7)
クリーチャー:オラクリオン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、コスト5以下の進化ではないクリーチャーを1体、自分の手札またはマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2枚ブレイクする) 



 現れたのは、伝説の聖獣・麒麟の姿を模した偽りの神だった。
 生命を司り、意思を扇動する。
 その能力の凶悪さは、ノゾム達も知っていた。
 まず、その理由は——
 
「さあ、教えてやるわ!! シューゲイザーワンショットキルの恐ろしさを!! 《シューゲイザー》の効果で、マナゾーンより《龍覇 レグルスフィア》を召喚! そして、その効果によって超次元ゾーンより《龍魂城郭 レッドゥル》をバトルゾーンに!」



龍覇 レグルスフィア UC 光文明 (5)
クリーチャー:ジャスティス・ウイング/ドラグナー 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト3以下のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。(それがウエポンであれば、このクリーチャーに装備して出す)



 獅子座の星々が光る。
 そこから、激しい光と共に純白の天使が現れた。
 そして、更に矢上の背後に巨大な龍の城郭が。
 ドラグハート・フォートレス。
 浮沈の要塞であった。

「《レッドゥル》の効果で、《シューゲイザー》をスピードアタッカー化! そして、此処からどうなるかは分かるわよねぇ!!」
「——!! 来るか」
「《シューゲイザー》で攻撃! その効果により、手札から《逆転王女 プリン》をバトルゾーンに!! 効果で《シューゲイザー》をアンタップよ!」



逆転王女プリンセスプリン UC 無色 (5)
クリーチャー:ハンター/エイリアン 2000
S・トリガー
ガチンコ・ジャッジでこのクリーチャーを見せた時、またはこのクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、タップまたはアンタップする。



 これが、シューゲイザーワンショットキルとこのデッキが呼ばれる所以であった。
 このデッキは、端的に言えば《シューゲイザー》で延々と殴り続けるというものだ。
 手順としては、まず《シューゲイザー》は召喚時と攻撃時にコスト5以下のクリーチャーを呼び出せるので、召喚時に自身をSA化させるクリーチャーを呼び出す。そして攻撃時に自身をアンタップさせるクリーチャーを呼び出す。これを繰り返して相手をワンショットするのだ。
 
「つか、まずいんじゃないですか先輩!! これ、ブロッカーで防いでも、最後に《キリュー・ジルヴェス》を呼ばれたら残ったクリーチャーが大挙して襲い掛かってきますし!!」
「これ、結構危ないわね……」
「やばいどころの騒ぎじゃねーな……。S・トリガーが都合よく引ければ話は別だが——レンのマナゾーンを見てみろ。《デス・ハンズ》と《魔浪月下城の咆哮》がそれぞれ3枚と2枚落ちてる。序盤あいつがいつもよりも展開出来なかったのは間違いなくS・トリガーが手札に来まくった所為だ。それでも《ヴェイダー》引けただけでも上出来だぜ」
「あ、いつものレン先輩だった。って、えええーっ!?」
「これ、シールドにトリガー埋まってるのよね……」
「現実は非情である」
「武闘先輩ぃぃぃーっ!! それは言ったらダメな奴だ!!」

 不幸ながら。
 真に不幸ながら。
 レンは序盤にトリガーを引きまくっていた。
 それも手札に。
 使うに使えないのでマナの肥やしになっていたのは言うまでもあるまい。
 
「《シューゲイザー》でW・ブレイク!」
「ブロックはしない」

 パリン、パリン、とシールドが割られていく。
 レンのシールドは残り3枚。
 
「これ、やばくねーか? 完全に防ぐ手段が見当たらねぇからあいつトリガー頼みになっているだけじゃ——」
「あ、あははは……ブロッカーがいるのにブロックしない時点で、手札にニンジャ・ストライクを握ってませんよアレ」

 そして、今度は二撃目を放とうと《シューゲイザー》が襲い掛かる。
 
「はっ! ブロックすることも諦めたのね! あんたは所詮その程度! 《シューゲイザー》の効果で《プリン》をバトルゾーンに!」

 ——私の手札には《キリュー》がいる!! 《プリン》と《ソニックマル》が切れても攻撃を継続できる! 勝った!
 完全に勝ち誇っていた。自らの優位を確信していた。
 彼女は攻撃を仕掛ける。 
 レンのシールドを全て削り取らんとばかりに——!
 
「ブロックする? しても無駄だけどねぇぇぇーっ!!」
「2枚」
「——は?」
「2枚手札が入れば十分だ。《ギラン》でブロック」

 ギラリ。
 彼の瞳が獲物を狩る目をしていた——!!




「貴様の一人芸は見飽きた」



 次の瞬間。

「——は?」

 《シューゲイザー》の胸に《ギラン》の剣が刺さっていた。
 そして、先に《ギラン》が爆散する。
 しかし。
 《シューゲイザー》は動かない。

「え、今何が起こって——」
「マナゾーンの数からして、僕が《ハンゾウ》や《ゼロカゲ》も出せないと油断したな? この愚か者め」

 既に、バトルゾーンには現れていた。
 黒い霧を纏った暗殺者が、《ギラン》の剣に大物殺しの毒を塗っていたのだ。
 
「ニンジャ・ストライク2発動。《威牙忍 ヤミカゼ・ドラグーン》。僕のクリーチャー1体、《ギラン》はスレイヤーになっていた」




威牙忍ヤミカゼ・ドラグーン C 闇文明 (3)
クリーチャー:ティラノ・ドレイク/シノビ 2000
ニンジャ・ストライク2
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体は、「スレイヤー」を得る。




「あ、そんな——!」
「さて。手札補充もさせて貰った。貴様の前のめりなプレイングを見れば、殴ってくることは予想済みだった。貴様のデッキがシューゲイザーと分かった瞬間、この戦略は既に完成していたというわけだ。最も。三流も甚だしい。浮かれているのか、デッキに飲み込まれているのかは知らんが、貴様のプレイングは無色使いとしては——」

 《シューゲイザー》が。
 偽りの神が崩れ落ちていく。
 そして、消滅した——



「——美学の欠片も感じられなかったということだ」



 ——彼の言葉が消えると共に。
 
「あ、そんな! あたしの切札が!!」
「ワンショットキルデッキの対策に少し積んでいたのは正解だったな。しかも、《ギラン》の効果発動。バトルに《ギラン》が負けた時、タップしてバトルゾーンに復活する。つまり、僕の損失は実質0だ」

 墓地から、再び暗黒の騎士が現れる。
 巨大な剣と禍々しい邪眼を掲げて。

「み、認めない!! 何であんたが無色使いから転向したのか——!! あんた程の実力者が何で——!!」
「さぁな——」

 瞳は冷たい。
 まるで、遠くのものを見ているように。
 語るように彼は答えた。




「——僕は狡い人間、それだけの話だ」



 彼はカードを引く。
 そして——

「僕のターン。7マナで《悪魔龍ダークマスターズ》召喚。貴様の手札3枚を見て、《キリュー》、《ソニックマル》、《プリン》を纏めて墓地へ」
「あ、ぐっ——!」
「これでもう、まともに動けまい。ターン終了時に《ヴェイダー》の効果で1枚山札から墓地に置き、それがクリーチャーの《暗黒鎧キラード・アイ》だから1枚ドロー」

 狡い人間。
 そうレンは自分を皮肉る。
 かつて彼女がそう言った通りだ。
 しかし。もうその瞳に、今までの負い目は無かった。

「私のターン!! 《龍覇 マリニャン》召喚! 効果で《龍魂教会 ホワイティ》をバトルゾーンに! 効果で《ギラン》をフリーズ! 残りのシールドだけでも、叩き割ってやる!! 《レグルスフィア》でシールドをブレイク!」
「トリガー無しだ」
「《プリン》で攻撃!!」
「《ヴェイダー》でブロックし、破壊」
「そして、2枚目の《プリン》でシールドをブレイク!」

 レンのシールドは残り1枚。
 しかし。もう彼の目には恐れも、焦りも無かった。
 
「僕のターン、ドロー。そして7枚のマナをタップ。墓地の《キラード・アイ》を進化元に——墓地進化!!」

 現れ出でるは、闇より這い出る蟲の統領。
 彼は掲げる。
 自らの下僕を。

「新月の宵闇を前に、断罪の時! 悔い改めよ、《黒蟲奉行》!」

 今回のレンのデッキは黒単進化ビート。
 それも、特に”墓地”をテーマにしたもので、墓地進化や《キラード・アイ》による墓地からの進化など、徹底的に彼の好みにカスタマイズされているのである。

「さて。まずは、《黒蟲奉行》の効果で進化ではないクリーチャーの《マリニャン》を破壊する。そして、《黒蟲奉行》で《レグルスフィア》を攻撃して破壊。更に《ダークマスターズ》で《プリン》も攻撃して破壊だ」
「あ、あああ——!!」

 完全に、これで主導権はレンが握った。《ヴェイダー》の効果で手札と墓地を増やし、ターンを終える。

「そんな、私は——! 貴方のプレイングを見ていた! 同じ無色使いであこがれて——! 《破界の右手 スミス》を——召喚!」

 最期の足掻きとばかりにクリーチャーを召喚する。
 黒いサングラスに、白髪。そして、機械の右手を持つアウトレイジだった。
 かつて。何度も共に戦ったカード。かつてのレンを象徴するカードだった。
 その姿が、余りにも懐かしすぎて——

「——物好きだな。わざわざそのカードをシューゲイザーに入れるとはな」
「笑いなさいよ……!! 存分に笑いなさいよ!! 私は——」
「——いや、すまなかったな」

 切なそうに彼は言った。



「もう、貴様が見ていた僕は居ない」



 レンのターン。
 6枚のマナを払う。
 そして——

「礼を言う。もう一度そのクリーチャーの姿を見せてくれて。だがもう——十分だ。僕は、あくまでも前を向く。それは誰のためでもない。他でもない僕のためだ。自分勝手で狡い僕だが、もう振り返らない。《ギラン》を進化——」

 ——暗黒騎士の頂に、悪魔龍の王を重ねた。



「《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》」


 
 そして、その魔眼が《スミス》を貫き、破壊する。
 余りにも容赦なかった。
 それは、レンの決意を表していたのだ。

「これで——これで良かったんだ。《キラー・ザ・キル》でシールドをT・ブレイク」

 3枚のシールドを薙ぎ払う。
 そして、まだ猛攻は続いた。

「《黒蟲奉行》でシールドをW・ブレイク」

 ガラ空きになるシールドゾーン。
 もう、矢上を守るものは無い。
 そして、最後の一撃は——



「《悪魔龍ダークマスターズ》でダイレクトアタック」



 ——切なかった。