二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.234 )
日時: 2016/01/31 02:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)

 ***



「……バカな……私のシューゲイザーが、たった1枚のカードに……落とされたって言うの?」
「全てこうなることは予想していた。美しく繋がっていたのさ」

 ふぅ、と息をついたレンは崩れ落ちる矢上の方を見た。
 
「……無色使い、黒鳥レン……あたし達無色使いの間では絶対に話題に上がる程だったのに」
「……そいつはびっくりだな。僕は生憎人の評価なぞに興味は無かったから知らなかったぞ」
「あんた結構、その辺では人気なの知ってる? 性格はアレだからなかなか爆発的に火が付かないだけで。イケメンだし」
「オイ。褒めているのか知らんが、別に僕は興味ないぞ」
「だけどやっぱり、無色を使わなくなったあんたに疑問を覚える人がいたのも確かだわ」
「……だが、それはさっきはっきり言ったはずだ。僕には僕なりの意地と意思の貫き方がある。僕はもう、振り返るわけにはいかない。それは僕のため、そして——」

 振り返った彼の先には、仲間が居た。
 皆、彼の勝利を喜んでいる。



「僕を此処まで助けてくれた仲間の為だ」
「……そうか。仕方ないわね」


 
 吹っ切れたように言った彼女は、立ち上がると言った。

「あーあ、フラれちゃったかあ。まあ、仕方ない」
「妙な言い方をするな」
「とにかく、またあんたとは戦いたいわ。今度は絶対に勝つ。絶対、いつかまた、ね?」
「……そうだな。受けて立とう。貴様のもてる美学と実力を持って、な」

 こうして。
 中堅戦はチームFの勝利に終わった。
 レンは、こうして残るノゾムにバトンを渡すことに成功する。
 そして、その相手は——



『副将戦! チームF対チームB! 何と、大健闘にして期待のルーキー、やんちゃな天才少年・十六夜ノゾム選手! そして、最高クラスのデッキビルダー、茅山リョウ選手! 両者、準備に入ってください!』



 ——ヒナタ達のかつての仲間にして、最高のデッキビルダー。
 席に戻ったレンは、その様子を今一度垣間見ていた。
 が、先にさっきの話をぶり返されていたのだった。
 
「お前、あれか。ファンクラブあったんだな」
「知らん」
「でも、レン程の実力者が有名じゃないっていうのもおかしい話だしね。まあ、妥当じゃないの?」
「ふん。言っただろう。僕は他のヤツのためにデュエルをしているのではない。己を磨くために、デュエルを、美学を極めている。さて——」

 並ぶ2人を見ながら、レンは続けた。

「ノゾム。リョウ。貴様らが何のためにデュエルを極めているのか、それはこのデュエルで分かる話。括目させて貰うぞ」
「何のために、か。案外そういうことって意識しねーうちに出来上がってるもんなんだよなあ。ノゾムが今までの経験を、リョウという強敵にどうぶつけるか。俺は先輩として見逃せないぜ」
「ノゾムさん……大丈夫でしょうか」
「なーに、あいつがそう簡単に負けるものか」
「あんたの出番を奪ってやるって意気込んでたものね」
「さて、頼むぜ、ノゾム——」



『それでは、両者。デュエル、スタート!!』



 ***



 副将戦。
 十六夜ノゾム対、鬼才・茅山リョウ。
 かつての朗らかな雰囲気は何処へやら。
 完全に凍てつくような、人を寄せ付けない空気を放つリョウを前に、彼と相対するのが初めてのノゾムでさえ、圧倒されていた。

「君がヒナタ君の後輩の十六夜ノゾム君か……がっかりさせないでくれよ、僕を」
「がっかり?」
「そうだ」

 ぎらり、と眼鏡の奥の瞳が刺すように光る。
 
「僕は嫌いなんだよ……つまらないデッキも、つまらないデュエリストも。そんな奴と戦うのは時間の無駄だからね」

 リョウのマナには、光や水、そして自然が置かれていた。
 所謂ネクラカラーと呼ばれる組み合わせである。
 そして、マナ加速によって、既にマナゾーンのカードはこのターンのチャージで4枚になっていた。

「4マナで《電脳決壊の魔女 アリス》召喚。効果により、僕はカードを3枚引いて、手札から2枚を山札の一番上に置く」




電脳決壊の魔女(カオス・ウィッチ) アリス R 水文明 (4)
クリーチャー:アウトレイジMAX 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを3枚引いてもよい。そうした場合、自分の手札を2枚、山札の一番上または一番下、もしくはその両方に好きな順序で置く。



「アウトレイジ……」
「ただのアウトレイジじゃないよ。僕のデッキには、もっと凄いのが沢山いる」

 ——オレも昔使っていた……だけど、アウトレイジはデッキによって性質が大きく異なる……このデッキは、一体——!?
 リョウが豪語する”ただのアウトレイジではない”という言葉。
 それが気になった。
 それこそが、恐らく彼の自信を形成する切札のヒントなのだろう。

「オレのターン! こっちは、《アクア呪文師 スペルビー》召喚! 効果により、山札から3枚を墓地に置いて、その中から《龍素解析》を手札に! ターンエンド!」
「僕のターン。《全力艦長 イカリ》召喚。効果で《アリス》を手札に」



全力艦長(ハッスル・コマンダー) イカリ R 水文明 (5)
クリーチャー:アウトレイジMAX 3000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
シールド・ゴー(このクリーチャーが破壊された時、新しいシールドとして自分のシールドに表向きのまま加える。このクリーチャーが表向きでシールドゾーンを離れる時、かわりに自分の墓地に置く)
このカードが自分のシールドゾーンに表向きであれば、自分のクリーチャーが攻撃する時、カードを1枚引いてもよい。



 現れたのは、アウトレイジの2大能力の1つ、シールド・ゴーを持つクリーチャーだった。
 シールド・ゴー。それは、アウトレイジに大きく関わる”破壊”をトリガーにし、表向きのままシールドゾーンへ置かれるというもの。
 そして、シールドゾーンにある限り能力を発動し続けるというものだった。
 が、しかし。

「オレのデッキは水単色! シールド・ゴーは出来ませんね!」
「そうだね。君のデッキに、僕のクリーチャーを破壊するカードは無い」

 そのため、受動的にシールド・ゴーを狙うのはかなり難しいのだ。
 あくまでも、シールド・ゴーを発動するには”破壊”されなければいけないのだが、水の除去手段は主にバウンスと山札送還。破壊ではない。

「オレのターン! 《氷河フランツⅠ世》を召喚! そして、《ブレイン・チャージャー》を唱えて、カードを一枚引き、チャージャーで唱えたこの呪文をマナゾーンに置きます! ターンエンド!」
「僕のターン、ドロー」

 しかし。
 そのノゾムの考えは早速崩されることになる。




「教えてあげるよ。これが型破りのアウトレイジの力。そして、何で僕みたいな奴でも、ヒナタ君と一緒に戦えていたかを」



 ノゾムは、アウトレイジの本質を知らなかった。
 そう。
 彼らは既存の法則を壊す。
 それも、自らの立てた法則さえも、常識さえも、常に壊し続ける——



「反撃を司る弓の力! 専守を司る盾の力! そして、驚異的にして脅威的な陣形! 展開せよ必殺のタクティクス、《驚異的陣形 アレキサンドライト》!」



 会場の歓声と共に。 
 光の弓矢を掲げた軍神がホログラムによって、その姿を現した。
 神々しい鎧にその身を包んだ光の無法者は、余りにも輝かしい。
 これが、リョウの切札、《アレキサンドライト》だった。
 
「やべえ……出ちまったか……」
「む? あのカードは超獣界には帰らなかったのか?」
「分からねえ……ドラポンがオーロラと全部請け負った可能性はあるが」
「え? あのクリーチャーも”生きたカード”なんですか?」
「ああ。そうだな——」

 どちらにせよ。
 リョウが最も信頼する切札には変わりない。
 その陣形は、早速展開される。
 彼の驚異的にして脅威的な陣形が。
 
「さて、これだけでは終わらないよッ! 効果により、山札から6枚を見て——《凄惨なる牙 パラノーマル》をシールド・ゴー!」
「なっ!?」
「言っただろう。能動的に動かすものなんだよ、シールド・ゴーは。どんなギミックだろうが小細工だろうが、受け身の態勢では意味が無い。意味が無いんだ!!」

 


驚異的陣形(アメイジングアロー) アレキサンドライト SR 光文明 (6)
クリーチャー:アウトレイジMAX 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から6枚を見る。その中から「シールド・ゴー」を持つカードを1枚表向きにして、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。残りを好きな順序で自分の山札の一番下に戻す。
W・ブレイカー
「シールド・ゴー」を持つカードが自分のシールドゾーンに表向きであれば、バトルゾーンにある自分のアウトレイジはすべて「ブロッカー」を得る。




凄惨なる牙(タスク・プロデュース) パラノーマル R 闇文明 (7)
クリーチャー:アウトレイジ 7000
W・ブレイカー
シールド・ゴー
このカードが自分のシールドゾーンに表向きであれば、バトルゾーンにある相手のクリーチャーすべてのパワーは-3000される。



「さらに、《パラノーマル》がシールド・ゴーしているから、相手のクリーチャーのパワーはマイナス3000。《スペルビー》を破壊だよ」
「っ……!!」

 小型のクリーチャーは全て消される。
 パワー3000低下というのは、それほどまでに痛手だった。
 そして補足すると、《アレキサンドライト》の効果でアウトレイジは全てブロッカーになっているので、突破は難しくなるのだ。

「オレのターン! 《ν・龍覇 メタルアベンジャー R》召喚! 効果でカードを1枚引いて、《エビデゴラス》をバトルゾーンに! ターンエンド!」
「そっちも来たか。ドラグハート・フォートレス——だけど。僕にはまだ、君たちには見せていない切札があるんだ」

 リョウの言い方。
 そこには何かが含まれていた。
 想定外を引き起こすには十分過ぎる何かが。

「僕のターン——7マナをタップ」

 光を含んだ7枚のカードがタップされた。
 そして——最硬の陣形を完成させんと無法者が現れる——




「”シールドゾーン”の《パラノーマル》を進化元に——」
「——え?」



 一瞬、ノゾムには彼が何と言ったのか分からなかった。
 しかし。
 遅れて解した。
 今、この少年は確かにシールドゾーンのカードを進化元に、と言ったということ——




「シールド進化——《絢爛する盾刃マン・イン・ザ・ミラー アイドクレーズ》!!」