二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.236 )
日時: 2016/02/01 20:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)

「僕の場には、《アイドクレーズ》、《ストーンゴルド》、《アレキサンドライト》の3体が居る……!! そして、こいつを出す!! 2体目の《アレキサンドライト》をね!!」
「っ……来たか!?」

 6枚のマナがタップされて、2体目の《アレキサンドライト》が現れる。
 そして、再びリョウは自らの山札の上から6枚を表向きにした。
 その中には——

「《進撃する巨砲 クロムウェル》をシールド・ゴー!! これで、僕のクリーチャーは全て、スピードアタッカーだ!!」

 ——彼の詰めを進めるには十分すぎるものが入っていた。

「全体除去は覚悟の上! だけど、この盤面でひっくり返されることは早々無い! 《ストーンゴルド》で攻撃! 効果で、《パラノーマル》を墓地からシールド・ゴー! これで君のクリーチャーのパワーはマイナス9000だ! いけぇっ!!」

 ノゾムのシールドが2枚、吹き飛ばされた。
 ホログラムで実体化したシールドが割れて、手札となって手に渡る。
 しかし、これしきの修羅場、彼は何度も潜り抜けて来た。
 
「S・トリガー、《幾何学艦隊 ピタゴラス》!! 効果で《アイドクレーズ》と《アレキサンドライト》をバウンス!」
「っ……! やるじゃないか……!」

 2体のクリーチャーが消えたことにより、これ以上の攻撃はリョウにとってうま味の無いものとなる。
 手札を安易に増やすのは良くない。現に、こちらにはまだ《ストーンゴルド》も《アイドクレーズ》も残っている。
 しかし。逆に言えば、速効性のある打点があるならば、やはり殴った方が良いのではないか。
 この場面の二択に悩んだ末——

「《アレキサンドライト》でシールドをW・ブレイクだ!」
「ぐっ……!!」

 ノゾム、残りシールド1枚。
 対するリョウ、残りシールド8枚。
 完全に、どちらが有利かは一目瞭然だった。
 ——まずい、あんな数のシールドを叩き割れるのか……!?
 完全に落ち着いて状況を見渡した。
 しかし。
 まだ希望は残っている。
 一つづつ、相手の手を潰していけば、まだ勝ち目はあるのだ。

「オレのターン! 《龍素知新》を使って、墓地から《龍素解析》を使用する!! 効果で、手札を全て山札に戻して——4枚ドロー! そして、カードをターン中に5枚引いたから、《エビデゴラス》の龍解条件クリア!」

 龍の要塞が再び、魂の鼓動と共に解放される。
 そして、撃滅の咆哮を上げた——

「もう1回頼むぞ《Q.E.D+》! そして、手札から《龍素記号Sr スペルサイクリカ》を召喚だ! 効果で墓地から、《ピタゴラス》を使って残りの《アレキサンドライト》もバウンス!」

 これにより、リョウの場にクリーチャーは居なくなった。

「場を真っ新にしたか……だけど、《サイクリカ》はパワー0で破壊される!!」
「破壊されるとき、《サイクリカ》は代わりに山札の一番下に置かれる! そして、今度は1マナで《エマージェンシー・タイフーン》を使用! カードを2枚引いて、手札から《ピタゴラス》を墓地に!」
「……何を考えている……!?」
「そして《Q.E.D+》で攻撃! 《パラノーマル》と《クロムウェル》のシールドを、W・ブレイク!!」

 これにより、リョウの残るシールドは6枚。そのうち、3枚が表向きのシールドであった。

「ターンを終了——」

 最悪の事態だけは回避せねば、とノゾムはパワーダウンの根源を墓地へ叩き込んだ。
 しかし、それでもまだ《パラノーマル》2枚と、《鋼鉄》のシールドが残っている。更に、加えて表向きのシールドも残っているのだ。

「——それじゃあ、僕のター——」
「——する時に」
「——あ?」
「オレはこのターン、3枚の呪文を唱えました。よって——」

 にやり、と悪戯っ子のような笑みを彼は浮かべた。



「その力を証明し、全ての弱者のために新たなる希望を証明せよ! 
出て来い、《ν・龍素王 Q‐END》、龍解完了!!」



 ざわっ、と会場は盛り上がった。
 そして、同時にリョウも表情に動揺が隠せなかった。

「ま、まさか、立てたというのか……!? あの一瞬の間に龍解のシナリオを!? だけど……どっちにしたって!!」
「マナゾーンのカード的に、茅山先輩は1体しか切札級のクリーチャーを出すことは出来ない」
「っ……!!」
「手札を温存するため、そしてそれ以上は必要なかったため、マナのカードを7枚前後で抑えていた。出すだけでそのマナの半分を使う、コスト5の《ストーンゴルド》は進化元と一緒に場に出せない。だから残る選択肢は《アレキサンドライト》か《アイドクレーズ》だけだ。だけど、《アイドクレーズ》は登場時にシールドを2枚焼かないといけない、という致命的な弱点がある上に、自身も進化するときにシールドを消費しないといけない。よって、必然的に出るのは——」
「っ……!! 《アレキサンドライト》、召喚!!」

 今回で、もう何度目になるだろうか。
 再び鉄壁の布陣を作らんとばかりに山札6枚からカードを展開しようとする。

「だけど、追い詰めていることには変わりないんだ! 《クロムウェル》をシールド・ゴー!」
「2枚目か……もう後は無いな」
「そして、そのままシールドをブレイク!! ……ターンエンドだ。だけど、《Q-END》だけでどうやって僕を詰ませるつもりだ? 次のターン、この理屈だと君はどうあがいても勝てない」

 次のターンではノゾムはリョウにダイレクトアタックが出来ない。よって、此処を耐えて凌げれば、リョウは例え《アレキサンドライト》が倒されても、《アイドクレーズ》でワンチャン掛けることが出来るのである。
 しかも、《アレキサンドライト》を倒すのに、《Q.E.D+》か《Q-END》のどちらかで殴らないといけないので、3枚ある表向きのシールドを全てブレイクするのは不可能だ。

「えっ!? ってことはノゾムはかなりやばいんじゃないの!?」
「トリガーは埋まっていなかった。そして、小細工をしようにもクリーチャーがパワー0になって破壊される。これは余り嬉しくない状況だな」
「ノ、ノゾムさん……」
「……なーに、俺の後輩がその程度で負けるわけねーだろ」
「同時に、茅山は仮にもてめーらと行動を共にした面子。そう簡単に負けてはくれねぇが」
「どーっすかね、フジ先輩。俺はノゾムに賭けますよ」

 そんな不安と期待などつゆ知らず。
 彼は余裕を見せる。
 水のように涼しげな余裕を。

「どーすっかね、茅山先輩。いよいよ、お楽しみの証明の時間ですから。それで全部分かる!!」
「じゃあ見せて貰おうか!! 君の証明とやらを!! 僕を、がっかりさせないでおくれよ!!」
「言われなくても!!」

 弾かれたようにカードを捲るノゾム。
 《Q.E.D+》の効果で山札の上から5枚を見て、4枚を山札に戻し、1枚ドローした。
 そして——

「オレのターン、ドロー!! これで決める!!」

 次の瞬間。 
 ノゾムのマナゾーンのカードが全てタップされた。
 9枚だ。
 9枚が水の魔力を生み出す。
 そして——

「呪文、《神々の逆流》!! 効果で、互いのマナゾーンのカードを全て手札に!!」

 ——必殺の呪文を唱えたのだった。
 
「——《神々の逆流》!? まさか——」
「成程——そういうことか。考えたなノゾムは!!」

 沸き立つ会場、そして、同時に全て残らず消し飛ぶマナゾーン。
 一瞬で、この数ターンの間に積み重ねていたものが全て崩れる。


神々の逆流 R 水文明 (9)
呪文
各プレイヤーは自身のマナゾーンにあるカードをすべて、手札に戻す。



「な、なにを考えているんだ——!?」
「そして、オレが呪文を唱えた時、《Q-END》の効果発動!! それよりもコストの小さい呪文を唱えることができる!! 呪文、《幾何学艦隊ピタゴラス》!! これでチェックメイトだ!!」
「なっ——!? そ、そんな、馬鹿なぁ!?」

 今度こそ、リョウの場のクリーチャーは消滅した。
 そして、もうリョウはクリーチャーを出すことが出来ない。
 完全に彼のクリーチャーは、手札という名の牢獄に閉じ込められたも同然なのだ。 
 手札があっても、カードを使うマナが無ければ意味が無いのだから。

「2連鎖——十分だ!! このまま決める!! 《Q.E.D+》で《パラノーマル》のシールドを2枚ブレイク!! そして、《Q-END》で《クロムウェル》と《鋼鉄》のシールドをブレイク!!」

 さらに、表向きのシールドも全て墓地へ叩き落される。
 残りシールドは2枚だけだ。
 ——マナゾーンのカードを根こそぎ持っていっただけじゃない——!! まさか、こちらのクリーチャーも徹底的に排除するなんて——!!
 
「ターン終了です、先輩」
「くっ——僕のターン! マナをチャージして、ターンエンドだ……!!」

 ——あと一歩、あと一歩なのに——!! 何故届かないんだ!! クソッ、クソッ!!
 しかし、消し飛ばされたマナは既に手札にある。
 同じマナが無いと言っても、ノゾムには2体のクリーチャーがいるのだ。

「これでお終いだ!! オレのターン、ドロー!! そして、《Q.E.D+》でシールドをW・ブレイク!!」
「くっ——!!」

 これにより、リョウのシールドは残り0枚に。
 絶体絶命であった。
 しかし、まだ終わりたくない。
 その意思が引き寄せたか。

「S・トリガー発動!! 《ナチュラル・トラップ》、《地獄門 デス・ゲート》!! 《Q.E.D+》と《Q-END》を除去——」

 2枚のトリガーがヒットした。
 そして、同時に結晶龍の王は空母の姿に戻ってしまう。
 しかし。途中で手が止まった。
 何とも無い。
 もう一方の《Q-END》は除去呪文を受け付けていない。

「《Q-END》の効果発動。こいつは呪文では選ばれません」
「あ、そ、そんな——!!」

 
 この日。目の前の少年の強さを彼は思い知ることになる。
 そして、この試合は茅山リョウという少年にとって、一生忘れられないものになる。
 何故ならば——



「《ν・龍素王 Q‐END》でダイレクトアタック!!」



 ——この少年の無限に等しい可能性を、直接叩き込まれたからだ——