二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.246 )
日時: 2016/02/29 04:11
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)

 現在、ヒナタのマナゾーンのカードは4枚。
 このターン、マナチャージをすれば5枚になる。しかし、無暗にカードを使うのは危険だ。それが命取りになる可能性がある。

「どうする? さっき君が僕に見せた《ドラッケン》のパワーは11000……《ラ・ローゼ・ブルエ》のパワーを上回っているからね」
「……いや、出さねえ。その代わり——《ゴーゴー・ジゴッチ》をもう1回召喚だ!」

 現れた《ジゴッチ》の効果により、山札から5枚が展開された。
 そこから、《永遠のリュウセイ・カイザー》を手札に取り、そのままヒナタはターンを終えた。
 万が一のための牽制か、それとも他にめぼしいカードが無かったのか、それはヒナタの他に知る人は居ない。
 しかし、ヒナタが何を手札に加えようが彼は既に勝利へのシナリオを組み立てていた。
 
「ほーう。ハンデス対策と言ったところか——だけど、もう遅い! 僕のターン、ドロー——そして」

 マナゾーンにカードが1枚置かれた。これで8枚だ。
 それらすべてをジェイコフはタップする。
 自然と闇の文明マークが浮かび上がった。 
 ——火のクリーチャーじゃない……!?
 しかし、同時にホログラムの大地が揺らぐ。
 そして——王龍の咆哮が天を裂いた。




「それは破壊と誕生のラプソディ。《偽りの王 ハチャトゥリアン》」




偽りの王(コードキング) ハチャトゥリアン SR 闇/自然文明 (8)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン 11000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体破壊する。その後、そのクリーチャーとコストが同じクリーチャーを1体、自分のマナゾーンまたは墓地からバトルゾーンに出してもよい。




 王なる鎧を纏った龍、キング・コマンド・ドラゴン。その実態は、別の種族のクリーチャーがゼニスの鎧を身に纏った、言わば呪いの姿だという。
 その圧倒的力で相手をねじ伏せるその様は、いつ見ても圧巻の一言だ。
 そして、ヒナタもまた、かつてそれに立ち向かった一人だった。
 体が震えている。巨大な龍を前にして。

「《ハチャトゥリアン》の効果発動。《アサルト》を破壊だ。そして——破壊したクリーチャーとコストが同じクリーチャーを1体、バトルゾーンに出す」
「なっ……!!」
「マナゾーンから《無双竜鬼 ミツルギブースト》を召喚! 効果で自身をマナゾーンに送り、《ラブ・ドラッチ》を破壊だ!」

 これで、彼はターンを終えた。
 しかし、同時にヒナタの場には《ゴーゴー・ジゴッチ》1体しか残っていないという事態に。
 クリーチャー2体が一瞬で破壊されてしまったのだ。その損失は大きい。相手も比較的大したアドを取ったわけではない。ただし、比較的、ではあるのだが。

「俺のターン——《シルド・ポルカ》召喚! ターンエンドだ!」

 シールド・セイバーを持つクリーチャー、《シルド・ポルカ》。更に破壊されたときに相手のパワー3000以下のクリーチャーを倒せる。しかし、この状況では焼け石に水と言ったところか。
 何故ならば——

「これでジェイコフがビートダウン使うならば、まだマシだったかもしれんがな。相手は大型、破壊できるクリーチャーもいないだろう。余り美しい状況とは言えないな。僕としては、ヒナタが何を考えているのか知りたいところだが……」
「どうするのよ、これ……攻撃が止まった時点で、ヒナタは厳しいわよ?」

 ジェイコフのターン。
 此処で、彼のマナゾーンのカードは9枚に。
 その中の全てを再びタップした。そして——




「破壊こそ新たな命の糧なり。ダイチを司る龍《偽りの王 ヴィルヘルム》!」




偽りの王(コードキング) ヴィルヘルム SR 闇/火/自然文明 (9)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 12000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを1体破壊する。その後、カードを1枚相手のマナゾーンから選び、持ち主の墓地に置く。
相手のカードがどこからでも墓地に置かれた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
T・ブレイカー




 現れたのは、分厚い鎧と杖を身に着けた偽りの王龍であった。豪華な装飾を身に着け、まさに王を体言したような姿は普通のドラゴンなど足元に及ばないことを示している。
 しかし、大きな翼には巨大なトライストーンも嵌め込まれており、王でありながらゼニスの傀儡であることも示していた。

「その効果で《シルド・ポルカ》を破壊! そして、マナゾーンのカードを1枚選び、墓地へ!」
「くっそ……!!」
「そしてこの時、《ヴィルヘルム》のもう1つの効果を誘発させるよ!」

 不敵に笑ったジェイコフは、更に山札から2枚をマナゾーンに置く。
 これにより、マナゾーンのカードは11枚。既に、彼はデッキの全てのクリーチャーをコストを支払って出せる状態になっていた。
 
「登場時にクリーチャー破壊もランデスも出来る上に、相手のカードがどこからでも離れた時にマナゾーンのカードを増やせるって、やっぱり凶悪すぎますよ!」

 真っ青になっているのはホタルだ。流石の彼女も、これを相手にしたいとは思わなかったのだろう。
 レンやコトハも、普通の赤単ビートがこの状況で勝てる様子を思いつかなかった。余程強いカードを使わない限りは無理だ。
 もっとも、それを使うためのマナが減らされてさえいなければまだ希望は持てたのだが。

「……いや、それでもヒナタはやってくれるはずだ。やってくれるはずだが……!」
「いえ、あいつならやってくれるわ。根拠は無いけど……!」
「ちょっ、アバウトすぎるんですけど!? おいホタルも何暗い顔してんだよ! ヒナタ先輩がこの程度で負けるわけねぇだろうが!」
「で、ですけど……」
「仕方がねぇだろーが。こんな状況ならな。マナもクリーチャーも減らされ、挙句には相手にはブロッカー。攻め切ろうと思っても攻め切れねえだろーよ」

 だが、とフジは続けた。
 決して、この状況を悲観しているわけではないらしい。

「さっきも言ったかもだが、あいつには素質があるからな——無法も革命も、似たり寄ったりの性質だ」
「結局武闘先輩はヒナタに何を教えたんですか? 僕達とは離れで何を……」
「あいつにはな、色々教える代わりにすっ飛ばしていち早く革命を身に付けさせた」
「革命?」
「ああ……文字通りだ」

 彼は口を開く。
 ヒナタが此処に辿り着くまでの経緯を——




「ヒナタは火文明の適合者じゃねえ。おめーらと違ってデッキの相性による”見えない恩恵”もそこまで受けられねえし、まして”白陽の星芒武装は極めて絶望的だ”」