二次創作小説(紙ほか)
- Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.252 )
- 日時: 2016/03/02 17:30
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)
『遂に、鎧龍サマートーナメント決勝戦ッッッッッ!! この時を待ち侘びた人々も多いでしょう!』
わああああ、と空気さえも揺るがす歓声が上がる。
景気の良いアナウンスが会場に響き渡った。
『鎧龍一のド畜生、ボンボンの武闘フジ率いるチームFっっっ!! しかし、実力は指折りつき。三回生が不在ながらも切り開く風雲児達が集っている!!』
「しゃー、行くぜ!!」というヒナタの声と共に、入場してくるチームF。今まで一番多い会場の人数。
そして大きな声援。
この中でデュエルをするのか、と一同は気圧されることに。
そして、アナウンスと共に相対することになるチームGも現れた。
『園芸部部長に何があった!? 今日はハプニング続きだけど大丈夫か!? しかし、爆走する勢いで優勝候補・チームAを下した実力だけは確かだ!! チームGッッッ!!』
「ブルンブルンブルンブルンブルン」という声と共に。
ドン引きするクラスメイトと共に。
そして、静まる観客と共に。
花村は現れたのだった——
「おい、今日何度目の質問になるか分からんが、あれ本当に花村か?」
「ま、まっさかー……代打じゃねーの?」
「で、でもちゃんと……何度もアレ花村って……」
会場からは、やはり困惑の声が上がる。
ともかく、このままでは埒が明かないので、実況が『それではっっっ!! 鎧龍サマートーナメント決勝戦っっっ、此処に開幕——』
「ちょっと待ちなっっっ!!」
と言い終る前に、花村が指をヒナタに向けて叫ぶ。
「俺様は暁ヒナタと戦いたいんだ……!! 前哨戦だとか、その他色々の戦いに興味はねぇ!!」
「っ……!!」
当然ながら「勝手なこと言うなー!!」「おかしいぞ花村ー!!」とブーイングが上がった。
当然だろう。花村の発言は、大会のルールを覆すものであり、団体戦の意義を揺るがすものだった。
そんなことは許されないし、まして相手のチームも了承するわけはないだろう——そう会場の者は教師含め、思っていた。
そろそろ誰か、花村を止めようと出て行くのが見えたが——
「よし分かった。それでは、決勝戦は大将同士のデュエルで決めるというのはどうだ?」
その前に会場に鶴の一声が鳴く——
——えええええーっ!?
会場の全員は衝撃に包まれる。
高々とそれを言ったのは、フジであった。
そして、同時にこの鎧龍きっての天災がマジで花村の勝手な言い分を受諾してしまったことにある一種の納得を感じ得てしまった。
しかし、これはある意味ヒナタ達が狙っていたものでもあったのだ。
「都合が良いってところだな。どうやら、花村——いや正確に言えばそれに取り憑いたクリーチャーはヒナタと戦いたいらしい」
「成程な。これなら邪魔なしで花村先輩の身に何があったかをデュエルで突き止められるわけだ」
「クリーチャー事件はデュエルで解決、か……全くデュエル脳も大概ね。仕方ないとはいえ」
見れば、それを観戦していた校長もフジの方に向かって頷く。
生きたクリーチャーの使い手である彼は既に事態を悟っているのだろう。フジから連絡したのか、元より知っていたのかは分からないが。
「では、私の方からも了承するとしまショウ。暁ヒナタ、花村テルヒコ、両者共にデュエルテーブルへ」
『おーっっっと、校長までもがこの事態にOKサインを送ってしまったぞぉぉぉー!? だけどデュエリスト同士のもめごとはデュエルで解決と言うことなのか!? これはこれで熱い展開になってきた気がする!! D・ステラは公式試合だが、その出場選手を決めるこのトーナメントは公式試合ではないからこそ許された裁定か!?』
実況の熱気にも押され、観客もだんだんこれはこれで、という空気になってくる。
本来なら避けたい事態だが、今回は状況が状況だ。校長も、クリーチャーが取り付いている以上、その要求を呑むのが一番手っ取り早いと判断したのだろう。
どうやら相手チーム側も、花村がどうしてこうなったのが知りたかったらしく、異論は無かった。真相はデュエルの中で分かると判断したのだろう。
「つーわけで行って来い」
「ちょちょちょ、ストップ!? 結局これで良いんですか!?」
戸惑いをやはり隠せないヒナタ。
やはり彼としても自分の所為で、という念があるのだろうか。
しかし、それを仲間達が後押しする。
「今はヒナタ先輩の革命が頼みってことっすよ!」
「全く、結局貴様に美味しいところは持っていかれるのだな……まあいい。今回は譲ってやる」
「相手がクリーチャーなら仕方ないでしょ」
「ばっちり私が記事にまとめますから! 安心して下さい!」
全員の顔を見回す。
どうやら自分も前に出るしかないようだった。
「……おう、勝ってくるぜ!!」
自分を鼓舞するように、そして仲間の信頼に応えるようにそう言った。
暁の戦場に、勝利を刻むため——
***
『それでは、鎧龍サマートーナメント決勝戦!! まさかの大将同士のタイマン勝負!! 奇しくもこれまで、両者共に、この対戦順可変ルールで全試合において大将を務めています!!』
デュエルテーブルにカードを並べる両者。
ヒナタは花村の方を見渡す。
近くで見ても、やはりさっき見せられた写真とは別人のようだった。
「暁ヒナタ……!! てめぇを此処でぶっ倒してやるよ……!!」
「何者だ? 俺達の祭りを邪魔するんじゃねえ。真剣勝負に水を差すんじゃねえ」
未だ姿を見せない”何者か”に怒りの声をあげるヒナタ。
こうなったら、このデュエルに勝って全てを突き止めるしかあるまい、と自分の信じるデッキを掲げた。
「”侵略”してやる……ブルンブルンブルンブルンブルン……!!」
「……行くぜ」
『それでは、デュエル・スタート!!』
***
「アマツカゼの奴め……騒ぎを大きくしたな? 愚かな……まあ良い。いずれはこうなっていたさ」
赤毛の少女はどこか憂いを帯びた灼眼で自らの下部を一瞥する。
そして、それと相対する少年にも目を向けた。
「今日は奴がどれほどの実力を持つか——即ちこの私とアマツカゼの踏み台足り得るかということが確かめられれば十分だ——奴の革命が虚言で無ければ良いが——なあ」
そう言いながら、彼女は1枚のカードに目を向けた。
自分が手に取っているカードだ。
それにはLEGENDの金文字が押されていた——
「——我が轟速の伝説よ——」