二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.256 )
日時: 2016/03/04 01:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 ***




『試合終了——!! 大将同士の一本勝負、勝者は暁ヒナタ選手だぁぁぁーっっっ!!』




 アナウンスが響き渡ると同時に、歓声が上がる。
 



『これにより、鎧龍サマートーナメントは武闘フジ率いるチームFの優勝となりましたーっっっ!!』



 
 へ? とそれを聞いたコトハは、力が抜けてへたり込んでしまった。
 信じられない気分だった。1年の時に目指した場所に、自分が一番辿り着きたかった場所に今、此処にいるのが実感が持てない。
 ——勝った——ヒナタが勝ったんだ——!
 
「全く、ヒヤヒヤさせてくれるな、あいつは。しかも良いところ全部あいつが全部持っていってしまったぞ。全く、遺憾だ」
「す、すげぇ……オレ達、勝ったのか……? いや、決めたのはヒナタ先輩っすけど……」
「え、ええ——これで——世界への一歩は踏み出せた?」
「まあ第一タスクはクリアしたことになるわな」

 いつになく、険しい表情でフジはデュエルリングを見つめる。
 救護班に運ばれる花村を見ていたのだ。どうやら、意識を失って倒れたらしい。

『お、おっと、今此処で連絡が! 花村選手はデュエル終了後に突如失神してしまいましたが、どうやらホログラムの光が強すぎたようで、それが原因だろうとの事です! 命に別状はありません!』

 ——当然、俺様が吹き込ませた嘘だがな。目まいを起こすようなホログラムなんざ、うちが作るわきゃねえ。
 そう呟きながら、彼はタブレットをしまったのだった。
 ヒナタの俯き加減の表情を見ながら——




 ***




 表彰式が終わる。 
 盾と表彰状を大将を務めたヒナタが受け取り、掲げる。
 同時にそれは、彼らが学校対抗予選に進めることを意味していた。
 しかし、優勝したということを手放しで喜べる状態ではない。
 大会終了後、会議室に集まったヒナタ達はやはり複雑な心境で複雑な表情をそれぞれが浮かべていた。

「まあ、どんな形であれ、まずは優勝だ。お疲れさん」
「……しかし、結局あのクリーチャーは一体——」
「今連絡入れたばっかだよ、ビルの方には。もう逃げたとは思うが……」
「花村先輩を乗っ取ったクリーチャー……許せませんね」
「そうっすよ! ヒナタ先輩だけじゃねえ、皆が大迷惑を被ったんすから!」
「一番の被害者は花村先輩よね。あの後保健室で自分の恰好見てもう1回気絶したらしいわ」
「全く……何と言えばいいのだ」

 そんな中。
 フジのタブレットに入電が入る。
 全員は身構えた。
 
「ああ……俺だ……何!?」

 そして、フジの動揺を隠せない表情が一層全員の緊張感を煽った。
 当の本人の額には青筋すら浮かんでいる。
 キレる寸前と見て間違いない。

「上等じゃねーか……!! ああ、ああ……安心しろと伝えてくれ。心配するな。こっちで処理する。ああ、また連絡を頼む。じゃあ切るぞ」

 普段、気だるそうな彼は——殺る気に満ち溢れた表情で言った。

「嘗めてやがる」
「え?」
「おめーら、このまますぐ上に上がるぞ」
「い、いや、どうしたんすか先輩——」

 喜べ、とフジは一言付け加えると言った。
 とびっきりの”笑顔”で。




「奴は——この校舎の屋上に移動し、ずっと動いていねーらしい」




 全員に衝撃が走る。
 まさか、逃げていないとは思わなかった。
 それどころかまるで待ち侘びるかのように屋上を陣取っているのだという。
 怒りに満ちた表情で立ち上がったのはヒナタだった。

「さっさと奴を倒しにいきましょう。正体を突き止めねえと!」
『私も同感だ。真剣勝負に水を差す輩は火文明の風上にも置けん。成敗してくれる』

 あわわわ、と流石に真っ青になったのはノゾムとホタルである。
 ヒナタが此処までキレることも少ないからだ。
 このまま沸騰したままでいくのは危険と見たか、クレセントが白陽に割って入った。
 
『白陽! 落ち着いてってば!』
『し、しかしだな……』
『ヒナタも! すっごい怖い顔してるよ!』
「い、いや、そーだけどよ……」
「あたしも同感よ、ヒナタ」

 呆れた表情で言ったのはコトハだ。
 まるで彼を宥めるように続ける。

「冷静にならないと、あんたらしくないわ。敵が何を仕掛けてくるのか分からないのに」
『そ、そうですにゃ、ヒナタ様。今此処は抑えて……』
「全く、普段が普段なだけに、沸騰する時は沸点などガン無視してキレるのが貴様の欠点だからな」
「俺そんなに怖いって思われてるの!? お前の方が少なくとも」
「何か言ったか」

 ギロリ、とクリーチャーも真っ青の視線がヒナタを射抜いた。
 さぁぁぁ、と血の気が引いてしまい、しどろもどろになりながら「い、いや、何でも……」と返すしかなかった。クリーチャー級の眼光とはこのことだろう、恐ろしや。
 こんなやり取りをしている間に、すっかり頭に上っていた血が降りてしまった。
 やはり、仲間、というかストッパーの存在は偉大だ、とヒナタはつくづく感じるのであった。
 ——確かに俺らしくなかったな。

「オーケー、分かった。ありがとな」
「とにかく先輩! そうと決まったら、オレ達も全力で先輩をサポートする所存です!」
「特ダネのスクープになりそうですからね!」
「……間違っても新聞部に掲載すんなよ?」
「あはは、しませんよお」

 やれやれ、と言った様子でそれを眺めていたフジだったが、「そんじゃ行くとするか」と立ち上がる。
 
「テメェら。相手がクリーチャーである以上、注意しろよ。もう分かってると思うがな——何考えてるのか見当つかねえ」




 ***




「間違いないよ、コロナ……! 何よりも”あの人”も見えた! やっほい!」
「火の適合者ではないが、それ以上の才能を秘めている、か……」
「そうだよ! この僕が身を持って痛い!! 痛い!! もっと強く!! あふん!!」
「そして貴様は何故こんな真似をしたのか答えて貰おうか。返事次第では尋問は拷問に変わるぞ、良いんだな」
「そ、そんなんじゃイけないよコロナ……一流のSMプレイヤーは」
「破くぞ」
「だ、ダメだよコロナ、女の子がそんなこと言っちゃ——」
「私にはもう関係ない話だ」

 どこか憂いを帯びた瞳が揺れる。
 革命の足音を聞きながら——



「……来たか」



 ——自らの侵略を手に掲げる——