二次創作小説(紙ほか)
- Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.257 )
- 日時: 2016/03/07 00:31
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)
「知ってるか! さっき花村が使ってた侵略のカード! どうやら忽然と消えちまったらしいぞ!」
「ええ!?」
走りながらフジはヒナタ達にそう告げる。
どうやら、さっきの《音速 ソニックブーム》はインベイト社が開発し、DASHに規制されることになった最強クラスの高速種族のクリーチャーらしかった。
その名は——
「”ソニック・コマンド”! 俺も初めて見たが、こいつこそがDASHが侵略者を規制した理由と言える程の恐ろしいカードらしい!」
——疾風を意味する侵略者。
スピードに取り憑かれた欲望渦巻く凶悪なクリーチャーだと言う。
しかし、どうも情報通のフジでさえ又聞きのような言い方であった。侵略者のデータは流出しているので分からないのか、と聞いたところ、意外なことが分かった。
どうも今回の犯人、何故かソニック・コマンドのカードだけは盗んだもののデータを流出させなかった、とのことである。流石に他の者に渡すのが惜しくなったのだろうか。
しかし、今回花村がそのソニック・コマンドを使ったということは(尚、観客やその他大勢は武闘財閥も便乗してとうとう侵略にノって試製カードを作ったかと思ったのか、普段のフジのはちゃめちゃぷりから誰も突っ込まなかった、いや突っ込むだけ無駄と思ったのか)黒幕はその流出事件の犯人、及びそれに近い人物になるということだ。
「だけど、俺のドギラゴンと白陽が居れば対抗できるはずですよ!」
「分からない……何か不可解なものを感じる……」
「レンは心配し過ぎだって! 革命は侵略に対抗するために作られたんだぜ?」
ヒナタの自信も大概であった——ように見えるが、やはりいつも通り表向きだけだろう。本心では不安を隠せないようだった。
こうして、フジとヒナタ、その一方後ろをレンとノゾム、更にその後ろをホタルが走っていたのであるが——階段を3つ程駆けていたときであった。
ホタルはふと後ろを見る。
そこには——ぜーぜー息を切らせて手すりに掴まっているコトハの姿が。
「ぜひゅー、ぜひゅー、脇腹痛い……」
『コトハ先輩、お気を確かに! 大丈夫ですかにゃ!?』
「た、体力をつける薬とかがあればって、それドーピングだし……ダメじゃん……」
さて、これが何度かネックになったこともあるのだが、如月コトハという少女は”本来”運動が苦手、というよりは体力不足なところがある。
いつも容赦なく、かつ遠慮なくヒナタとフジ(たまにレン)をぶちのめしているのでこの事を忘れている人も多いと思うが、彼女は”本来は”全力で跳んだり跳ねたり、走ろうものなら息切れして動かなくなるがオチである。
ただし、呪いに掛かった、及び怒りで普段のリミッターをぶっ壊し、暴れたこともあるが。
「如月先輩、肩貸しましょうか、というか貸しますよ」
「だ、だめよ……先に行って……」
「そーゆーのは、死亡フラグですから!」
「どういう理屈!?」
「ほら、遠慮しないで!」
ぐいっ、とホタルが自分の肩に彼女の左腕を乗せた。流石に放っておけなかったのだ。
さて、コトハが運動が苦手な理由は諸説あるが、その一つに——
——うっ、大きい……当たった、今……。
この年不相応のボディがあるのかは不明である……。
***
屋上の扉をそろりと開ける。コトハとホタルが来るのが遅いが、この際もう待ってはいられない。逃げられても文句が言えないからである。
勿論、白陽とアヴィオールとクレセントがセットで背後についているので、万が一不意打ちされたとしても危険は少ない。
そして、フジが目くばせする。どうやら、まだ敵は動いていないらしい。
それを確認するや否や、一気にヒナタとノゾムとレンが扉を大きく開け放し、躍り出た——
「来たか」
声がした。
3人、そして一歩遅れて出てくるフジは身構える。
屋上の中心には——少女が居た。
身長は小学生程。少なくとも小柄なノゾムよりも更に低いだろう。
赤毛が真っ先に目に付いた。無造作で長く、腰程まである。
その服装もラフで動きやすそうなもので、ズボンにパーカー、そして首にはヘッドフォン。
現代的ではあるものの、どこか浮いた印象を持たせたのだった。
「な、何だ……!?」
「少女……? こいつが……犯人?」
「だけど……只者じゃねえ気がしますよ、先輩……!」
どこか憂いを帯びた眼で、少女は3人を見回した。
「わざわざ誘うような真似をして悪かったな」
「まず、テメェが何者か教えて貰おうか」
進み出るのはフジである。
少女は淡々とした口調で「そうだな」と返した。
数的に分が悪いこの状況を怖いとも思っていないのか。
「私の名は”コロナ”と覚えて貰おうか」
「コロナ——?」
「風貌からしても、まず日本人ではなさそうだが……」
きょろきょろ、とコロナと名乗った少女はそんな彼らの問いを無視し、辺りを見回す。
「ふん。生きたクリーチャーまで居るのか——それも英雄が5体、合計で」
瞬間、少女の目が光る——
「邪魔だな。その2体が」
——そして、一気に背後に居たアヴィオールとクレセントが物凄い音を立てて吹っ飛んだことに気付いたのは、少し遅れてである——!
風が吹き、髪が煽られてなびいた。
ガアアアン、と音高く衝突音が響き渡る。
「アヴィオール!」
「クレセント!?」
振り向く2人、しかしその前に、ふっ飛ばされた2体は一気に今度は鉄槌とガンブレードを構えて地面を蹴り、”見えない何か”に襲い掛かった。金属音が鋭く空気を切り裂いた。硬い装甲を持っているのか、殆ど響いていないようだ。特に、クレセントは自慢の鉄槌攻撃が効かなかったことに驚きを隠せないようだった。
反撃を食らったことにより、ようやく、それが姿を現す。
『な、なによこいつ!!』
『機械……!? ロボ——アーマロイド……!? いや、違う。まさか、こいつが——』
それは、灼熱に燃える機体を持ったクリーチャーだった——
「ほう。こいつに反撃まで食らわせられるのか。流石英雄と言ったところだな」
「な、何だったんだ今の——!!」
『私も反応出来なかった——!! あれは、クリーチャーなのか!?』
まだ朧げではあるが、それがカードに戻ったのを見るや否や、警戒して下がるクレセントとアヴィオール。あまりにも不気味すぎる。
「さて。”アマツカゼ”」
『はいはーい!!』
ボムッ、と爆ぜるような音がして今度はさっきのクリーチャーによく似ているものの、どこか”蛇”の意匠をした三頭身ほどの小さなクリーチャーが姿を現す。
「何だ、テメェらは……! 生きたクリーチャーと、その使い手ってことは確かだが——」
「暁ヒナタ。私は貴様に用があって来た。要件は2つ——」
2本、指を立てる少女。
その目はヒナタしか見えていない。他はその他大勢、興味なしと言ったところだ。
「まずは先ほどの貴様らの戦い。このアマツカゼ(バカ)が邪魔したことを詫びねばならないこと」
「あ、ああ……そこは詫びるんだ」
「そして——」と少女は続ける。
幼い容姿、幼い声からは想像できない程はっきりと——
「近い将来、この私が貴様の白陽を貰うことになるということだ」