二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.258 )
日時: 2016/03/07 01:47
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

「あ? 待てやゴラ」

 ギラリ、と目を向けながらヒナタはドスの利いた声で返した。
 あくまでもそんな提案になど乗るか、という目だ。
 白陽も同じようだった。

『白陽を渡せ!? ふざけるな!! 白陽はあたしのモノなんだから!!』
「いや、お前がキレるんだな! 知ってたけど!」
『クレセント』

 低く、白陽が唸る。



『これは私とヒナタ、そしてあいつらとの問題だ。下がってろ』



 ぞくり、とその場の者は巨大な威圧感を感じた。
 冷や汗が背中を伝う。
 貰うことになる、などと言われて本当にキレているのはどうやら白陽の方であるらしい。
 が——



『はっくよぉぉぉう! 会いたかったよー!』



 ——その場に、今度は戦慄が走る。
 言ったのはアマツカゼだ。
 思いっきり白陽の胸に抱き着いたのだ。
 別の意味で威圧感を感じた。
 白陽の肩に鉄槌が据えられる——
 
『白陽……? 昔の女? 浮気相手? いや、あいつの性別が分からないから白陽がバイかどうかも聞いておく必要があるよね。
ついでにどこまで行っていたのかも聞いておこうか、A? B? それともC(死ー)? なーるほど、自分の問題ってそういうこと。都合の悪い過去を——』
『いやいやいやいや待て!! ストップ!! それ地面に置いて!!』

 一瞬でその場は修羅場になった。
 全員が(コロナとアマツカゼは知らない)が”どう収集付けるんだこれ……”と冷や汗を垂らしながらその様子を見ていた。
 ——俺はヤンデレと言うものの片鱗を感じた……。
 ——僕は感じた。クレセントだけは敵に回してはいけない……女は怖い……。
 ——あばばば、どーすんだコレ……。
 ——リア獣爆ぜろー。

『ともかくだ!!』

 がしり、とアマツカゼを引き剥がす白陽。

『貴様は一体何なんだ!!』
『妖獣界で会ったことあるじゃないかー、白陽ったら。ぼくを傷モノにしたくせにー』
『貴様など知らんわ、貴様のような種族、妖獣界にはいない』
『えー? 白陽の元カノだってばー、覚えてないの? Cまで行った仲じゃん』
『そんなものはいない!! 突き殺すぞ!! 機械と恋仲になった覚えなど無いわ!!』
『槍を使ったSMプレイが得意だったのに白陽ったら——僕が喘ぎ声をあげるのも無視し——』



 グサリ



 結果。下らない思い出話を捏造したアマツカゼは脳天に槍が刺さったまま「あー白陽が見えるー、うふふふ、あははは、やっぱSMプレイ得意なんじゃーん、ゲボェッ」などと言っているが、ガン無視して話を進めることにする。
 クレセントもようやく安心したらしかった。笑顔で鉄槌を握りしめている。怖い。
 全員が唖然として、この一連の流れについていけていない中、フジだけが口を開く。

「コロナとやら。こいつは何だ? 可燃ゴミにでも出せば良いのか?」
「残念ながらその燃えるゴミは私の相棒でな。不承不承、不本意、誠に残念ながら、ではあるが」

 その槍が刺さった燃えるゴミをカードに戻しながら、コロナは語る。




「私は”火文明の適合者”だ。そして、このアマツカゼはどうやら、貴様の白陽と一体になることで真の姿を得るらしい。奴の今の姿は魂の入れ物に過ぎず、本来のものとはかけ離れているらしいからな」




 その場に衝撃が走る。
 ヒナタが火の適合者じゃなかったことで、長らく不明だった火の適合者が此処にきて明らかになるとは。
 ——あの小娘——!! 嘘は言ってねえ……!! 確かに、奴の色は”深紅”! 深すぎて黒ずんでいるように見える程の血の色の炎——!!

「そこで提案だ暁ヒナタ。貴様は火文明の適合者ではない。よって、私が白陽を持ち、邪悪龍に立ち向かうのが筋ではないか?」
「邪悪龍のことも知っているのか——」

 確かに、彼女は火文明の適合者だろう。
 ヒナタでは白陽の力を100%に引き出すことは出来ない。邪悪龍に対抗するには武装の力が必要だ。ならば彼女に白陽を渡した方が良いのではないか、ということだが——その場に緊張が走る。
 次に誰が何を言うのか。
 それを待っている。
 まるで、氷のように冷たい沈黙が過ぎた——




「猶更無理だな、ガキんちょが」



 ——ヒナタが口を開くまでは。

「ほう?」
「まず、見ず知らずの奴に今まで戦ってきた相棒を渡せって言われてはいそうですかって言うバカが居るか? つーか、俺がそういうと思ったのか?」

 それだけじゃねえ、と彼は続ける。

「さっきのカード——実体化したときに恐ろしい強さを持っていた。英雄相手に恐ろしい程の力を持っていた。花村先輩の件と関連させれば、てめーが流出事件に関わってるのは言い逃れ出来ねえ事実! よって、テメェもどーせ口では綺麗事吐いてるが、良からぬことを考えていると見た!」

 やはり、確信する。
 この少女の言う事に惑わされてはいけないと。
 そんな強引な手段を使って凶悪なカードを手に入れるような人間が、真っ当な考えをしているわけがないのだ。

「アマゾカゼ」
『むー、折角白陽に会えたと思ったんだけどなー、後微妙に誤字ってる』
「誤字ではない、事実だ」

 2人はヒナタを見据えた。
 揺るぎない炎が魂に灯っている。
 
「そこまで分かっているか」
「認めるんだな?」
「ああ、そうだ。例の流出事件、盗難事件、犯人は全て私だ」

 今度こそ全員の視線が集まる。
 思ったよりもあっさり認めたものである。

「しかし。私としても穏便に此処は済ませたいところなのだがな」
「俺相手に済むと思ってんのか?」
『あくまでも私達は反抗するぞ』
「ふん。犬は飼い主に似る。飼い主がバカなら犬もバカか」

 いいだろう、とコロナは言った。

「私としてもこの件は焦ることではない——今でなくても良い。だが、いずれ”来る日”は来る……その時の為に、さっきの謝罪も込みで貴様らが如何に無力なのかを今一度思い知らせてやるとしよう——」
「あ?」

 苛立ちを隠せない表情でヒナタはコロナを睨む。
 どうやら、今急ぐことでもないらしいが、その来るべき日のためにヒナタ達に自らの実力を示すつもりらしい。
 流石のヒナタでも彼女の嘗め腐った態度にキレる寸前だった。
 
「おいチビ。どうやら世間知らずも大概にしねーといけねーみてーだな」
「チビだのガキだの小娘だの——うるさい連中だ」

 次の瞬間——黒い靄が掛かった——



「白陽、決闘空間解放!」
『任せられた!!』
「アマツカゼ、決闘空間解放だ」
『はいさー!』

 



 ——決闘空間が開く——