二次創作小説(紙ほか)
- Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.259 )
- 日時: 2016/03/08 01:37
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)
***
「……何だコレは」
そう言ったのはヒナタではない。
レンだ。あの後、彼らのデュエルが終わる(決闘空間内の時間経過は現実世界ではかなり短い)のを待とうとしていた彼らだが、黒い靄がいきなり自分たちも飲み込んでいき——現在に至る。
少し離れた場所で、ヒナタがコロナと相対しているところが見えるが、どうやら隔離されているらしく、それ以上先に進むことが出来ない。
「何でオレ達まで決闘空間の中に!?」
「知らん!!」
「……おい黒鳥、ノゾム、アレ見ろ」
見れば、こちらにだんだん近づいて来る人影が。
2人だ。
ようやく声が聞こえてきた。
「ノゾムさん! 黒鳥先輩! 武闘先輩! 何で此処に!?」
「あんた達も居たの!? びっくりしたわ!」
朧げだった影がはっきりしだす。
見れば、それはコトハとホタルだった。
どうやら、遅れていた彼女達も一緒に空間に巻き込まれたか。
「い、いったい何があったのよ!?」
「コトハ。今、ヒナタが戦っているのは今回の一連の事件の犯人だ」
「え!?」
彼女はヒナタが相対している相手を見る。
どこからどう見ても幼い少女だ。しかし、赤毛に灼眼という浮いたところはあったが。
ホタルも「こ、この子が犯人……?」と困惑を隠せないようだった。
「あいつは白陽を狙っているんだ、ホタル!」
『だけど、今すぐ奪うわけじゃないって……ますます怪しい!』
「白陽を狙っている……ですか。で、でも何で——」
「奴が本来の火の適合者だからだ」
言い切るように言ったのはフジだった。
「ですが武闘先輩、奴の言ったことを真に受けて——」
「俺様はこういう事に関しては自分の感性しか信じねえんだが——いや、なんでもねえ、とにかく奴は火の適合者だ」
若干取り乱しながらも続けるフジ。
その姿に不審さを感じる一同。
「ともかく、だ。あのコロナというガキの実力——この目で確かめさせてもらう。革命が通用すればいいのだがな——」
***
1ターン目。先攻ヒナタ。
彼はマナゾーンに必要性の薄い《イフリート・ハンド》を置くのみでターンを終える。
——ついカッとなっちまったが、ソニック・コマンドとやらがどんだけ強いのかは分からない……! 警戒は必要だな!
『ヒナタ、相手がコマンドだと私の効果は生かせないが』
「ああ、そうなるな……! 仕方ねえ、今回は革命軍に任せてくれ!」
『くっ、悔しいがそうなるか……!』
コロナの隣に現れているアマツカゼを見ながら、白陽はそれを睨んだ。
何者か分からない。しかし、少なくとも自分に関わった人物というのならば、放ってはおけない。必ずその正体を突き止めねばならない。
それは自分だけではない。クレセントのためでもあるのだ。
——私が愛するのはクレセントだけだ! それは今も昔も、一度も揺るいだことはない! あんな奴の——アマツカゼの思う通りになってたまるものか!
そんな中、コロナがとうとう動き出した。
「私のターン——ドロー」
カードを引くコロナ。
そして、ヒナタ同様マナゾーンにカードを1枚置き、それをタップする。
1ターン目から動き出すこの動きにヒナタは見覚えがあった。
「エンジンを掛ける。1マナで《凶戦士 ブレイズ・クロー》召喚」
凶戦士ブレイズ・クロー C 火文明 (1)
クリーチャー:ドラゴノイド 1000
このクリーチャーは、可能であれば毎ターン攻撃する。
「赤単速攻の動き——!」
「ターンエンド」
赤単速攻。
手札の消耗は激しいものの、1ターン目からクリーチャーを出して、一気に軽量獣で相手を殴り倒すというデッキだ。
しかし、火のウィニーのパワーは総じて貧弱。ターンが過ぎれば過ぎる程不利になっていくデッキでもある。
だからこそ、下手に殴れば革命の餌食に成り得るのだ。
「俺のターン、《ラブ・ドラッチ》召喚!」
火の鳥を召喚し、ターンを終えるヒナタ。
次のターンに《シルド・ポルカ》、更に次のターンに《革命龍 ドラッケン》、流れは完全に来ていた。
「私のターン、マナをチャージ」
そして、置かれた2枚のマナをタップする。
そこから炎に包まれた無法者が現れた。
「セカンドトラック、《一撃奪取 トップギア》召喚」
「コスト軽減クリーチャー……速攻気味のビートダウンか?」
大方、次のターン辺りにコスト4の少し速攻にしては重めのクリーチャーを出すか、手札に任せて2体出しを狙うかは定かではない。
しかし、此処で確定していることは——
「《ブレイズ・クロー》でシールドをブレイクだ」
「っ!」
強大な爪を携えた竜人が走り、1枚目のシールドを叩き割った。
破片が飛び散り、肌を切り裂いた。
「だけど、その程度ならまだいける——!」
——そして、革命の元に叩きのめせる!
ヒナタのターン。此処で彼のマナは3枚になる。
そして——再び火の鳥を召喚したのだった。
「《シルド・ポルカ》召喚! ターンエンドだ!」
此処までの展開を見れば劣勢なのはヒナタだ。
しかし、革命が発動すれば一気に巻き返すことが出来るということでもある。
「所詮は赤単速攻、手札を切らせばそこで終わりだ」
「まあ、そうなりますよね……青単と違って手札補充できねーんすから」
「……まだ分かんねーぞ」
フジは険しそうな顔をした。
「まだ、肝心のソニック・コマンドが出ていない以上、分からねえ……!」
そう。一番の心配の種は未知なる敵であった。
そして、それはすぐさま訪れることになる。
彼らの思惑を遥かに超えたスピードで地平線から現れる——!!
「……私のターン……サードラップ——《トップギア》でコストを1軽減して3枚のマナをタップ」
風が吹いた。
妙に熱い風だ。
そしてそれはまだ見ぬ場所から現れる。
「我が侵略の翼——鳳の証を焼き付けろ」
人知を逸したそれが駆け抜けた——
「《轟速 ザ・レッド》、侵略開始」
轟速 ザ・レッド C 火文明 (4)
クリーチャー:ソニック・コマンド/侵略者 4000
スピードアタッカー
現れたのは《ソニックブーム》同様、燃える機体に乗った機械のクリーチャー。しかし、その姿は小柄で非力ささえ感じる。
一見すれば、ただの準バニラと言えるそのカード。
しかし何故だろうか。
胸が焼ける程の不穏さが秘められている——
「貴様の革命とやらが伊達でないのなら、この一撃を耐えることが出来るはず」
「耐えるもクソもねーよ。それだけじゃ打点は足りねえはずだ」
「侵略とは——まだ見ぬ場所から現れる」
マナのカードはもう無い。
これ以上クリーチャーを出すことは出来ない。
しかし、彼女は言った。
侵略とはまだ見ぬ場所から現れると。
「《轟速 ザ・レッド》で攻撃——」
ブルン、とエンジン音を立てて機体が発進する。
それと同時に——手札から1枚のカードが《ザ・レッド》に置かれる。
「侵略発動」
——赤の領域から侵略の風が吹いた——!
「イグニッション、オーバードライブ——無限に加速(ブースト)せよ、赤の領域へ——」
《ザ・レッド》が駆け抜ける。
己のスピードの限界を超えて。
その身体が燃え尽きる時——その鳳の炎から伝説の侵略者が姿を現した。
「——《轟く侵略 レッドゾーン》、アクセラレーション!!」