二次創作小説(紙ほか)

Act7:鎧龍頂上決戦 ( No.261 )
日時: 2016/03/17 08:30
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 女性型のソニック・コマンドの本体に、左腕に蛇の頭からなる胴、右腕に尾からなる胴を持つクリーチャーが現れた。
 そして、脚にはめらめらと燃える車輪が回転している。
 しかし、何よりも白陽とクレセントが驚いたのは、その蛇が完全に自らの記憶の中のあるクリーチャーと一致していたこと。
 そして、喉元にある傷跡であった——

「白陽、どうした? ビ……ビビってんのか!?」
『ヒナタ……私は、あいつを知っている……!!』
「え? や、やっぱ浮気相手」
『刺し殺すぞ、それは違う』

 全力で否定する白陽。
 しかし、その顔にはどこか別の必死さがあった。 
 一方のクレセントも

『な、何であいつが……!』
「ちょ、ちょっと待て、どうしたってんだよ!?」
『あいつは……! あいつは……!』

 何かを思い出すように、そしてとても怯えたような表情を浮かべていた。
 間もなく、アマノサグメは口を開く。



『忌々しい玉兎のクレセント……このワタシから白陽を奪った泥棒兎め……』




 機体の首には——確かに白陽の槍で刺したと思われる傷跡が残っていたのだった。
 思い返すように白陽はヒナタに囁く。

『あいつは高天原の蛇——妖獣界に生息する巨大な蛇だ! 以前私とクレセントを襲っている——!!』
「そ、それって——」
『ああ、前に話した奴だ。間違いなく同一個体だろう。姿形こそ変わってはいるが、奴の機体の頸動脈にあたる部分に傷跡がある。同じだ。私もあのとき、奴の頸動脈をこの槍で掻き切って殺しているからな!』

 確かにその話には聞き覚えがあった。
 以前、アヴィオールの件の時に白陽がヒナタに聞かせた話の中にあった出来事だ。
 しかし、それではアマツカゼ、もといアマノサグメが白陽を好いている理由が分からない。現に今もクレセントのことを泥棒兎と言っているわけだし。

『クッククク……! ワタシは昔から白陽が好きだった——一目見た時からな……!』
「良かったな、白陽。お前異種族からやたら好かれまくってんじゃねーか。今度は蛇だけど」
『良くない!!』
『だが、お前はいつまで経ってもクレセントから離れなかった!』
「そりゃそーだよな、今だってラブラブだもんな」

 うっ、と白陽は図星を指されたように赤くなる。
 そして、ヒナタにこつん、と頭を小突かれたのだった。

『だからクレセントを殺そうとしたのだ! そうしたら——白陽、貴様に殺された。喉を掻き切られてな!』
「そりゃそーだろーよ、何でこいつに喧嘩売ったし」

 間違いない。
 この蛇は相当白陽もクレセントも恨んでいる。大方逆恨みという形で。
 
『如何にワタシが苦しんだか分かるか? 止め止めなく流れる血! 息も出来ない苦しさ! それはもう——』
『……すまんことをした。仕方がなかったのだ』

 何であれ、苦しめてしまったことは事実だ。素直に謝罪の言葉が口から出てくる。
 流石の彼にも罪悪感が沸いて来る。この事態は自分が招いたことだ、と。

『黙れ!! ワタシは、ワタシは——』

 白陽が申し訳なさそうに言うのも遮り、アマノサグメは叫んだ。




『最高だった!! いやもう天にも昇る快感だった!!』




 ……。
 全員は沈黙した。今度はコロナ含めて。
 完全に忘れていた。この蛇がとんでもない性癖の持ち主であるということを。
 こいつは——救いようのない究極のドMだ、と。
 やはり思考回路のどこかがおかしい。
 白陽は謝罪の言葉を取り下げることにした。
 やっぱこいつおかしいわ、と。

「うっわマジかよ……今わの際にんなこと考えていたのか、本当救いようがねえな」
『いやホントドMに生まれてよかった! 何故なら、より白陽のことが好きになれたのだから!』
「え、まさかコレあの世行っても意識あった系? ずっとあの世で白陽のこと恋い慕ってたってのか!?」
『その通りだ!! だが、ワタシにとっての最大の拷問は!! 白陽、お前がクレセントといちゃいちゃしているところを天から見せつけられることっだった!!』

 流石高天原の蛇。昇天しても文字通り天から白陽のことをストーキングしていたのだというから驚きである。
 この驚異の執着性と変態性能。最早、並みのクリーチャーは及ばない。
 周囲からも完全にドン引きされる始末である。

『たまに誰も他にいないのに誰かの視線を感じると思ったら!!』
『さあ、こっちに来るんだ、白陽! 今のワタシはそう簡単に壊れは——』






「アマノサグメ」






 機嫌の悪そうな声が響き渡った。
 コロナだ。
 いい加減に長話に業を煮やしたのだろうか。

「さっさと攻撃をしろ。ダイレクトアタックだ」
『あ、あはははは……分かったよコロナ』

 流石の彼女も、コロナに逆らうわけにはいかないのか、不承不承といった様子で前方を見据えた。
 次の瞬間、火車が燃え上がる。
 そして、神速とも取れる速度で《アマノサグメ》が突貫した——しかし。
 ヒナタはまだ逆転の手を残しているのだ。

「まだだ! 革命0トリガー発動! 《革命の鉄》——」
「《アマノサグメ》の効果発動」

 しかし。
 次の瞬間、天上に現れた巨大な拳が一瞬で石のようになり、ぼろぼろと崩れ落ちてしまう。
 
「な、なにが起こった——!?」
「《アマノサグメ》が場にいるとき、相手のシールドが2枚以下ならば、相手は呪文を唱えることは出来ない」
「え!?」

 呪文封じの能力。
 これにより、革命の礎は一瞬にして破られる——もう、ヒナタを守るものはないのだ。





「《超火車 アマノサグメ》でダイレクトアタック」





 淡々と告げられる敗北の宣言。
 その炎がヒナタを焼く——!!