二次創作小説(紙ほか)
- Act1:デュエルは芸術か? ( No.27 )
- 日時: 2016/09/12 23:54
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「つー訳で、先輩! 知ってること全部、話してもらいますからね!」
十六夜ノゾムは、皆もご存知デュエリストである。今日は昨日の事件で見せたヒナタのクリーチャーに対して手馴れた1面。それについて聞きにきたのだ。
そして、それに詰め寄られている暁ヒナタはご存知その先輩である。
そしてそして、ここは皆もご存知デュエリスト養成学校の鎧龍決闘学院である。
さて、このとき暁ヒナタの顔は真っ青だった。
別にノゾムに聞かれていることはいずれ話そうと思っていたことなので、問題は無いのだ。
だが、ヒナタの顔が真っ青なのは、別の理由があった。
(ふざけんなあああ! こちとらレンの石膏像ぶっ壊してバレないように直そうとしていたところなのに! 早くしねえと誰か来たらどうするんだ!)
レン——つまり黒鳥レンは帰宅部でありながら、美術に付いては抜群のセンスを誇っていた。
先ほどの7時限目の授業でレンは自分の顔の石膏像を見事に作り上げた。(此処から分かるように、少々ナルシストの気があり)
そして、ヒナタは授業の終わりにそれを見ようとしたら、偶然手が当たって像を床に落とし、壊してしまったのだった。
怒るに決まっているだろう。彼が見たら。誰だってそうする。
幸い、他には誰もいなかった。(日直で美術室の板書を消すように命じられていたため)
だが、このままでは誰かにバレてしまうことは間違いない。
まず、美術室の鍵を帰りの会の後に拝借(あくまでも”拝借”)し、美術室に誰も入れないようにした。そして放課後に像をボンドで直そうとしていたのだった。
色々とムリの入った作戦だったが、今までその作戦はスムーズに進んでいたのだった。
美術室に入ろうとしているヒナタをノゾムが偶然見つけてしまうまでは。
ノゾムはヒナタを探していたところ、美術室に行ったと言う情報を掴み、(美術室の鍵をヒナタが借りたため)ここにきたのだった。
そして今に至る。ノゾムは、ヒナタが何故ここにいるのか、といった疑問は全てすっ飛ばし、今日自分が聞きたかった疑問をぶつけたのだった。
(クソ迷惑な……ん?)
誰か来る。見れば、そこには黒鳥レンの姿が-----------------
は? 何で? 何でお前が今此処にいるの!?
というヒナタの疑問を他所に、それはやってきた。
「お、ヒナタ。何故貴様が此処にいる?」
上から目線の物言いは良い。そんなことより、石膏像の件がバレたらヤバい。
「いや、んなことより何でお前が?」
「当然だ。美しい我が石膏像をもう一度見たくなってな」
こんのアホォーッ!! 何で今更来るの、どんだけナルシストォ?! と言いたかったが我慢した。
そこで、ヒナタは1つ思いついた。はっきり言って、主人公にあるまじき思考回路だが、何とか後輩を犠牲にして自分は助かる方法だ。
——俺、悪役の方が向いてるくね?
「いやー、レン。それが、その像なんだが-------------」
「む?」
***
「ぎゃあああ!! 僕の顔があああ!!」
悲惨な自分の石膏像を見せられて、レンの絶叫が美術室中に響き渡った。
そしてヒナタは、すかさず言う。
「いやーすまん、レン。ノゾムの奴がこれを壊しちまって、あれ? レン君?」
ここであろうことか、後輩を盾にしようとするヒナタ。
しかし、レンの様子がおかしい事に気付く。
紫色のオーラのようなものが見える。ゴゴゴゴゴゴゴ……というジョジョみたいな効果音が聞こえる。
「……貴様だな? 貴様がやったんだな?」
「え、えー、何の事かな」
「貴様の浅はかな嘘などすぐに分かる。現に今の貴様は冷や汗たらたら見るからに焦っている」
「さ、流石ワトソン君、盲点……!!」
「黙れアホームズ、地獄へ突き落す」
「先輩? 今オレに罪を擦り付けようとしましたよね?」
「ジョーク! ジョーク! ごめんよ、ノゾム!」
ま、いいんですけど。とノゾムは許してくれたので良かった。
”ノゾム”は。
問題は目の前の友人である。
「貴様を処す。デュエマでな——地獄を見せてやろう」
「いや、さ。だから何でいっつもデュエマで勝負をつけようとするんだお前は!!」
「問答無用、地獄へぶち込む」
ダメだ。この状態のレンは、正気ではない。
仕方が無く、デュエルを受けることにするヒナタ。
「僕が勝ったら、石膏像を徹夜で直して貰おうかヒナタ……!!」
「良いぜ、俺が勝ったら今の件は全部チャラで」
「ヒナタ先輩、幾らなんでもレン先輩が可哀相っす!!」
ノゾムの突っ込みをスルーし、互いは机の上にホログラム発生マットを目の前に引き、カードを展開する。
『デュエマ・スタート!!』
***
ヒナタと怒り狂うレンのデュエル。
互いにシールドは5枚、まだ何も始まっていないという状況で、まずはレンが動き始めた。
「呪文、《ボーン踊り・チャージャー》! 効果で我が山札から2枚を墓地へ!」
レンのデッキは、闇単。それも、凶悪な悪魔が何枚も積まれたデッキだ。去年、ある友人に触発され作り、徹底的に闇文明にこだわった。わざわざ泣く泣く無色を捨ててまで作った。
そして、墓地には《ポーク・ビーフ》に《デーモン・ハンド》が置かれていた。
「ターンエンドだ! どうした? 早く始めろ」
苛立った表情でレンはターンを終える。
一方のヒナタのデッキは、いつもの火文明単色ドラゴンだった。ただ、昨日も夜遅くまで改造をしていたのだ。以前よりも、その炎は苛烈に盛るだろう。
しかし、相も変わらず札補充に乏しいので、手札破壊を打たれたら苦しくなる。
ちなみにデッキ名は、”開闢の熱血龍”である。
「よし、俺はまず、《コッコ・ルピア》召喚! ターンエンドだぜ!」
これで次のターンに、手札の《ボルシャック・NEX》が出せる。
そう思った矢先-----------
「それで良いんだな? では僕のターンだ。《コッコ・ドッコ》を召喚」
紫色のぬいぐるみのような鳥が現われた。そして、バトルゾーンを駆け回っている。
こんな奴出してどうすんの? といった表情のヒナタだったが、レンは不敵な笑みを浮かべて言った。
「ターンエンドだ」
「へっ、それだけかぁ? んじゃ行くぜ! 《ボルシャック・NEX》召喚!」
炎に包まれ、黄金の鎧を纏った龍がその姿を現した。さらに、ヒナタの山札から1匹の鳥が現われる。
「《マッハ・ルピア》召喚! 効果で《NEX》はスピードアタッカーだ! 行け、W・ブレイク!」
レンのシールドが2枚、はじけ飛ぶ。ホログラムなので、決闘空間の時のように破片で怪我をすることはないが。
「ふっ、浅はかな奴だ! S・トリガー、《地獄門 デス・ゲート》で《マッハ・ルピア》を破壊——そして効果で墓地から《ポーク・ビーフ》を召喚だ」
「クッ、ターンエンド……!!」
「では僕のターン。早速見せてやるとしよう」
笑み一つ浮かべず、彼はマナを一気にタップする。
そして——煉獄の悪魔龍を呼び出したのだった。
「大罪書、グリモワール解放!! 7大罪、”憤怒”! 現われよ、《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》を召喚!!」