二次創作小説(紙ほか)

Act5:天王/魔王VS超戦/地獄 ( No.286 )
日時: 2016/03/27 18:33
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

「蓬莱学園は、ドラグハートの開発に特化した機関だ」

 そう、フジは言った。
 それも、今までとは段違いのレベルの強さを誇るフォートレスを扱っているという。
 
「だからこそ黒鳥。超次元に頼らないお前のデッキは、手数では不利になるだろうな」
「……重々承知しています。そこで、自分もサイキックを搭載してみた次第です」
「賢いな。良い心がけだ」
「元々、授業で習ったことも合わせているので、これを使ったプレイングに慣れていないわけではありません」
「なら心配はいらねぇな」

 カードの枚数は単純に手数の多さを現す。
 超次元という拡張されたゾーンにある8枚のカード。これらが命運を分かつ時も少なくない。
 サイキック、ドラグハート。
 しかし、その両方をレンは今のデッキに搭載してはいない。
 フジの言う通り、手数ではやはり劣ってしまうだろう。
 特に強力なドラグハートを呼び出せるドラグナー、強力なサイキックを呼び出す超次元呪文・クリーチャーは”呼び出される側”は去ることながら、”呼び出す側”も高いカードパワーを誇っている場合が多いのだから。
 レンも、決戦が近づくにつれて、より勝ちにいくデッキを選んだのだろう。

「後もうちょいで、蓬莱戦だが——残りの期間は淡島と組んで特訓した方が良いぞ。テメェも教える側じゃねえ。自ら率先して学ぶ側になることだな」
「……分かりました」

 フジにしては珍しくまともな事を言った、とレンは思ったが当然口に出さないでおくことにした。
 自分でも痛い程分かっていることだ。
 
「闇に魅せられたモノ同士——どんなデュエルを見せてくれるか、俺様は楽しみにしているからな」
「闇に魅せられた、ですか」
「淡島だって、操られていたとはいえ”闇”に魅せられたことには変わりねえ。お前らはな、似た者同士なんだよ黒鳥」
「……そうですか」

 似た者同士——アルゴリズムに操られ、仲間に牙を剥いた者。
 その深層の心理は似通っている。
 闇——暗い闇に行き場を求めたことだ。
 眩しい光の使い手であるホタルも——そうだった。
 彼女も本能では、強さを求めているのだろう。
 今更、そのことを否定はしなかった。自分がどんな形であれ、”そんな強さ”を求めた事には変わりないのだから。

「だがな。何のために強くなるのか。今度はそれを考えてれば良い」
「何のために——ですか」
「ああ。そうすればもう、何も見失わないで済むはずだ。後はお前に任せる」
「……そうですか」
「それさえ分かればな。お前が革命0を手にする日は近い。俺様が問題ないと判断した時、その時に革命0を渡す」

 革命0——追い込まれた時だけとはいえ、発動すれば凄まじい力を発揮する最強の革命。
 無限の剣で全てを切り開く革命——それがヒナタの《ドギラゴン》の革命0だった。
 


「残る2つは——”時間”を止めて全てを変える革命、そして全てを”虚無”に帰して滅ぼす革命だ。特に後者は——お前にピッタリだろ」



 ***




「というわけで、もうすぐ蓬莱戦だからな。僕と淡島がコンビを組んで特訓することになった次第だ」

 フジと話していたため、遅れて昼食にやってきたレンは真っ先にそう告げたのだった。
 今までノゾムとホタルを相手に特訓をしていたレンだったが、今度からはホタルと組むことになるということだ。
 これはタッグマッチが近づいている以上は仕方のないことである。
 
「じゃ、オレはヒナタ先輩と如月先輩と特訓してろってことっすね」
「いや、それだけじゃダメだ。貴様自身もデッキを更に研究し、己を磨き上げることだな。貴様は次の試合に出る事が決まっているのだから」

 最も、フジはまだノゾムと誰を組ませるのかは決めていないらしい。
 今回のタッグマッチ、1人だけ2度出場させることが出来るためである。
 既にレン&ホタル、ヒナタ&コトハという組み合わせが決まっているのだが、残るノゾムとの枠には誰でも入れることが出来るらしい。
 故に、悩んでいるらしいのだが。

「ま、聞いた話によれば闇と光の革命はすっげーつえーんだろ?」
「そうらしいな」
「全く自然と水も、もう少しどうにかならなかったのかしら」
「まだ完成していないと言っていたな」
「でもでも! オレ、絶対見てみたいです! 時間を止める革命に、全てを虚無に帰す革命! どっちもどんな効果なのか、楽しみです!」
「時間を止めるなら既に《クロック》というのが居てだな」
「それ以上はいけない」

 しかし、光で時間を止める、というのをやってのける以上、どういった能力になるのかはまだまだ未知数だった。
 
「淡島!」
「ひゃ、ひゃい!」

 声を掛けたところ、声が裏返ってしまうホタル。
 やはりまだ、緊張しているところがあるのだろうか。
 が、どこか怯えているようにもヒナタには見えた。

「てかレン。お前どんな特訓したんだよ。ビビってるぞ」
「そんなに酷い事をした覚えはないのだが」

 すると、小声でノゾムがヒナタに耳打ちした。

「い、いや、いちいち細かいんすよ、レン先輩って。説教臭いっつーか……」
「あー、それは分かる。俺も分かる」
「悪かったな説教臭くて。貴様は特別訓練だな。蓬莱戦が終った後に」
「か、勘弁してください!!」

 どうやら訓練が厳しいのもあるらしかったが。
 地獄耳のレンに陰口など持っての他であった。流石闇使いと言ったところだろうか。
 
「ま、俺じゃどーしても甘くなっちまうところがあるからな。指導役にレンは適任だろ」
「勘弁してくださいよ! レン先輩のスパーリング、すっげー容赦ないんですから! 相手の心折るようなプレイングを熟知してるよ!」
「……お前が言うなら相当だな」

 ノゾムの打たれ強さはヒナタも重々知っている。そのノゾムがこう評するのだ。
 レンは案外、鬼教官のタイプだったのだろう。
 とはいえ、ノゾムも全部本心で言っているわけではない。彼の指導を受け入れている。

「全く、弱音を吐くのも大概にしてほしいものだな。元はと言えば貴様らが志願してきたのだから。まあいい。休憩中くらいは見逃してやる」
「うお、こえーなぁ」
「ヒナタ。何なら貴様も付き合うか?」
「遠慮しとく」
「でも、レンに着いて来られたらいよいよ一人前ね。これでもレンは、ヒナタに並ぶくらい強いんだから。自信もっていいわよ」
「というわけで淡島。夕方からの特訓に付き合ってくれ。我儘で済まないが、僕自身も地力を上げていく必要があるのだから」
「は、はい」

 こうして、束の間の休息は終わったのだった——