二次創作小説(紙ほか)

Act1:デュエルは芸術か? ( No.29 )
日時: 2016/09/12 23:58
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 現われたのは、究極の悪魔龍王だった。その瞬間、ヒナタのマナゾーンとバトルゾーンのカードが全て墓地へ送られる。
 確か、自分の記憶の中にある《悪魔神 ドルバロム》は登場時に闇以外のクリーチャーとマナを全て破壊する効果を持つ進化クリーチャーだ。
 そして今、目の前にいる龍は、それと全く同じ効果を遂行した。現にヒナタのバトルゾーンとマナには何も無い。
 
「ド、ド、ド、《ドルバロムD》!?」
「そうだ! DはドラゴンのDだ。ドラゴンのサポートを受けたいならば、答えはシンプル。”ドラゴンになってしまえば良い”。簡単だろう? さて、すべてを消し去る闇文明の美学! 嗚呼、美しい、美しい……!!」
「やっぱこいつたまに気持ち悪くなるよな……」

 そのヒナタの発言を受けてか、いよいよ青筋立つレン。好い加減に怒りが爆発しそうだった。

「そんなにくたばりたいか貴様ァァァァァァァ!!」

 マナゾーンのカードとバトルゾーンのカードを吹っ飛ばされたにも関わらず、この発言だ。
 無理も無い。

「あー、それと質問。お前、今のでマナのカード全部使っちまったよな? ついでに、《コッコ・ドッコ》も自壊して、バトルゾーンにはそいつ以外いねぇよな?」
「余計な事を抜かすなよ、ヒナタ。次のターンで、地獄の底まで突き落とす」
「いやー、それがあるんだよなー」
「地 獄 の 底 ま で 突 き 落 と す」

 威圧的なオーラがレンから放たれた。
 だが、それを見てもヒナタはもったいぶるように肩をすくめているだけ。
 にやにやとした笑みを浮かべながら。

「どーせ破壊すんなら、”手札”も破壊しておくべきだったなって」
「悪いが、僕の手札も2枚。幾らババロアブレーンの貴様でもそれが何かは察しているだろ? もう、何も怖くは無い——行け、《ドルバロムD》!! シールドをT・ブレイクだ!!」

 レンはもう、何も怖くなかった。レンの手札には、出てきた瞬間に敵のパワーを−6000するニンジャ・ストライク獣、《威牙の幻 ハンゾウ》と、パワーを−3000する《威牙忍 ヤミノザンジ》がいるのだ。S・トリガーのクリーチャーが出てきたところで怖くは無い。
 悪魔の龍王が腕を振るう。
 衝撃で吹っ飛ばされそうな感覚に陥ったが、所詮はホログラムだ。
 ヒナタのシールドが全て吹っ飛んだ。これで互いにシールドはゼロ。
 だが、同じシールド0でもこの場合は訳が違う。
 しかし、レンは気づいていなかった。
 1つ目は、”もう、何も怖く無い”は死語であることに。
 2つ目は、マナが無いならばマナを使わなければ良いという事に。


「こんなこともあろうかと、実はとっておいたんだよな。S・バック火、発動!」

 
 ヒナタは、手札に加えるはずのシールドを墓地に置いた。《スーパー炎獄スクラッパー》だ。
 そして、そこから一陣の炎が巻き上がり、龍が顕現した。
 強烈な奇襲性能を持つ装甲竜、《デュアルショック・ドラゴン》だ。

「《デュアルショック》、だと!?」

 普通ならば、赤単の速攻に入れられるドラゴンだ。しかし、このように万が一のときの保険として火の入るデッキに入れることも出来る。

「そうだ! こいつはな、登場時にシールドを1枚墓地に置かなければいけねえけどな、もう俺にはシールドがない! さあ行くぜ、俺のターンだ!」

 龍が雄々しく咆哮を上げた。
 まるで、自らの勝利を確信するかのように。


「《デュアルショック・ドラゴン》で攻撃!!」


 装甲竜の炎が一気にレンを包む。(ホログラムだが)

「く、くそっ! ニンジャ・ストライクで《威牙の幻 ハンゾウ》を」
「残念だったな! こいつのパワーは圧巻の8000!! そいつじゃ破壊できないぜ!」



デュアルショック・ドラゴン SR 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 8000
S・バック−火
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のシールドを1枚選び、自分の墓地に置く。
W・ブレイカー



 この瞬間、ヒナタの勝利が決まったのだった。


 ***

「く、くそっ、まさか——この僕のデッキがまたしても……」
「まー、良いじゃねえか、レン」

 ぽん、とレンの肩に手を置くヒナタ。
 そして、優しい笑顔で言った。

「形あるものはいつか壊れるんだ。そうだろ?」
「ヒナタ——」
「また、作れば良いじゃねえか」
 
 良い様な感じに締めようとする。
 何か、本当に良い話みたいになっているが、ここでレンは思い返した。

「待てよ——よく考えたら、貴様が壊したのではないかああああああ!!」
「バレたかぁぁぁぁぁぁ!!」

 再び、鬼(またはドルバロム)のような形相になったレンが、拳を振り上げて、ヒナタを追い回す。
 美術室の中で走り回る2人。ヒナタは、さっきまで売ろうとしていた後輩に助けを求める。

「おいノゾム! お前、先輩を助けろ!」
「今回は先輩の自業自得っすよ」
「くそ、この薄情者め!!」
「後輩売ろうとしたあんたの方がよっぽど薄情でしょうが」
「おらぁ、待て貴様ぁぁぁフルボッコにしてくれらああああ!!」

 この後、ヒナタはレンによって、地 獄 の 底 ま で 叩 き 落 さ れ たのだった。



 ***



 その後だった。石膏像はヒナタが徹夜で直すということで可決。残念でもないし当然の結果である。
 次いで、ヒナタはレンに昨日のことを話して聞かせた。
 不思議なカードを使うローブの少年。そして、クレセントに白陽のこと。
 レン自身も、オラクルとの戦いを経験している以上、否定はしなかった。

「また面倒なことになったな。で、その白陽とクレセントは?」
「学校でのデュエルに使ったら危険だと思ったから置いてきた。能力が暴発したらどうする」
「オレもっす。それより先輩! 今度は、オレが質問です! 決闘空間の事を、何で知っていたんですか!」

 ああ、思い出した。そういえば、ノゾムはそれをヒナタに聞くために来たのだった。
 ヒナタはまず、昨年起こったオラクル事件の事を話した。
 既に、オラクルの教祖であるヨミが完全消滅したために、人々の記憶から事件のことは消え去っていたが、”真のデュエル・マスターズのカード”の所有者に選ばれた数名だけが、覚えていたのだった。

「信じられないと思うけど、俺達は連中と戦う中で決闘空間のことも知ったんだ」
「本当ですか! クリーチャーが生きているって!」
「ああ、そういう世界が宇宙のどこかに存在する」

 レンが答えた。
 しかし、野心家のヨミはそれだけでは飽き足らず、地球にまで支配地域を伸ばしてきたのだった。
 その野望をヒナタ達は打ち砕いたのだった。

「ヒナタとノゾム。僕からの提案だが、白陽とクレセントはやはり学校にもってこい。一緒に居るうちに、何か分かるかもしれないからな」
「ああ、そうするか」
「どのみち明日は土曜ですけどね」

 ***

「ったく良いんですかぁ? あいつの力が見たいからって東京までワザワザ足を運ぶとか。折角の土日なんだから、もっと有意義に過ごしましょうよ」
「貴様の言い分は間違ってはいない。だが、デュエリストとは直に目で見てこそ実力が分かるもの」
「俺は今日上半身と下半身が痛いんですって」
「それを世間は全身が痛いと言う」
「分かりましたよ。ま、サクッとやっちまいますから」
「少なくとも、聖羽衣の面は汚すなよ——キイチ君」
「わぁーってますって——獅子怒さん」