二次創作小説(紙ほか)
- Act5:天王/魔王VS超戦/地獄 ( No.295 )
- 日時: 2016/03/30 13:44
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)
『遂に始まろうとしています! D・ステラ、学校対抗予選、鎧龍対蓬莱が此処、海戸マリンドームで行われようとしております!』
海戸マリンドーム。海戸ニュータウンの海沿いに位置する巨大な名前通りのドーム状の建物だ。
此処は野球、サッカー、テニス、陸上競技などの屋外スポーツは勿論のこと、バスケットボール、バレーボールなどの屋内スポーツも行うことが出来る万能施設である。
しかし、その最大の特徴は国内最大規模のホログラムエンターテイメント施設でもあるということだ。
それをドヤ顔でフジは自慢するのだった。正直うざい。
「設計、計画は武闘財閥がやった。褒めて良いぞ」
「うわー、すごいっすねー」
「はいはい本当、武闘先輩は凄いですねー」
「かがくのちからってすごいわねー」
「泣いて良いか俺様」
棒読みの一同。
いつも行っている所業からすれば当然の結果であるといえばあるのだが。
才能と財力の無駄遣いをダイナミックな規模で行う、それが武闘財閥のやばいところであるが、今回ばかりは無駄遣いとも言えないだろう。
東京ドーム規模の建造物に最新技術を詰め込んだ、まさに文明を一歩先取りした施設と言えるだろう。
そして今回、ヒナタ達はその選手用特別観客席に座り、観戦をすることになったのだった。
「あ、ホタルとレン先輩っすよ!」
「おうマジか。そろそろだな」
ノゾムの指の先には、ホタルと並んで入場するレンの姿があった。
手前に出て来たホログラムパネルで、2人の姿がより近くで確認できる。
これにより、試合の状況も詳しく見ることが出来るのであるが——ホタルの顔は引き締まっており、緊張した様子は見られなかった。
「あいつは今日は、お前の声を受けるまでもないってところだな」
「そ、そうですね……なんつーか、真剣そのものっていうか」
「レンの方はいっつも通りの仏頂面だから分からないけど」
「まあ、2人共覚悟完了ってところだな」
フジはパネルで2人の顔を見ながら、そう言ったのだった。
「革命も無事手に入れられたしな。後は実戦でその成果を見せてくれればいいんだけどよ」
「大丈夫っすよ、先輩! ホタルとレン先輩ですから!」
「レンはとことんツイてないからねぇ……ここぞというときに不運でポカしなければいいんだけど」
「なーに心配するなよコトハ。幾らレンでも最初に手札にS・トリガー全部引いて負けるような事はそうそうねぇだろ」
——前回それで1回負けてるんだけどね……。
この間の鎧龍サマートーナメントで、レンはロマノフサイン相手に絶望的な引きを見せてそのまま負けている。
彼の不運はいつ出るのか分かったもんじゃないので、不安を抱えるのは仕方がないと言えるだろう。
「だけど、あいつはそれ以上に高い実力を持っている! やれるさ!」
「運も実力のうちって言葉があってね、ヒナタ」
「それ以上はやめてやれ」
「後はホタルも緊張でテンパらなければ良いんすけど……あああー!! 心配だぁぁぁーっ!!」
「ノゾムが珍しく取り乱してる!?」
「まあ、仕方ないわよね……」
「おいコラ、そろそろ相手選手が出てくるぞ」
見れば、レンとホタルの向かい側には2人の少年が入場してきた。
黒髪の少年と、赤毛の少年だ。
しかし、両方とも背丈はほぼ同じ、顔もほぼ同じだった。
「これって……」
「ホタルとレンの相手は、龍門寺ライトと龍門寺ジュン……双子の兄弟だ」
「双子!? それじゃあコンビネーションばっちりってことじゃないっすか!!」
「いや、どうか分かんねーぞ、あれ見たら……」
ヒナタはホログラムのパネルを拡大する。
するとそこからは——
『何やってんだ、テメェがちんたらしてるから遅くなってんじゃねぇか!』
『ふん。たんぱら兄貴に合わせられる奴の方が少ない。先輩も兄貴が問題児だから俺に任せたのだろうよ、蓬莱の恥晒しめ』
『んだと、ゴルァ!! 文句あっか!! ぶん殴るぞ!!』
『どーぞ、お好きに。人前で社会的に終わる兄貴の泣き面をぜひとも拝んでみたいものだ』
——双子の罵り合いが繰り広げられていたのだった。
「あの気性が荒くて髪が赤い方が兄のライト。気が短く、喧嘩っ早く、そしてデュエルでは速さとパワーを突き詰めた脳筋」
「同じ火文明使いでもこんなに違うんだよなぁ」
「こないだドギラゴンで無限攻撃しまくってたのが言う言葉かしら」
「まあ、言いたい事は分からんでもない」
フジは解説するように言った。
「ヒナタが直感と閃き、そして戦略で相手を追い詰めるタイプに対し、こいつはもう殴る事しか考えてねぇからな。逆に言えばそれだけパワーに特化していると言える」
「性格がそのままデッキに直結してるってどんだけ脳筋なんすか……」
「一方、黒髪の方が弟のジュン。頭が切れ、皮肉と文句を言わせれば右に出る者はおらず、そのねちっこく嫌味ったらしい性格は使っている黒単デッキにも表れている」
「こっちもこっちで厄介だなぁ……」
そんな事を思いながら、ヒナタはモニターを見たのだった。
——頼むぜー、レン、ホタル。お前らが頼みの綱だからよ……!
「ぶっちゃけ、革命0が通用するかどうかも分からねえ。奴らの使うドラグハートは業界でも屈指の一品。鎧龍が開発したものをそのまま発展強化させた最強と最凶のドラグハートだ」
「……革命を、起こせるかしら」
「何、俺様が信頼した後輩だ。そうそうヘマはしねえはずだぜ。俺様が革命0を渡したってことはそれなりの実力あり、と判断したということだからな——」
***
いがみ合いながらもデュエルリングに上がってきた2人。
そのまま、各人の位置に立つ。
そして、2人で10枚のシールドが展開されたのだった。
「頼むから、試合中に余計な喧嘩をしてくれるなよ。迷惑だ」
レンがさっきの言い争いを見兼ねていたからか、きつく言う。
——仲の悪い双子か。コンビネーションはガタガタ、そっちの方面では恐るるに足らんな。
「おい、ジュン。聞いたか今の。あいつ生意気だぞ」
「潰そうぜ、兄貴。俺達の喧嘩に口を出すなんて、命知らずも良いところだ」
——え?
ギラリ、と4つの目がレンを睨んだ。
『テメェは潰す!! 俺達龍門寺兄弟が!!』
——成程、理解した。
レンはこの時、冷や汗をかいていた。
この2人、確かに普段は仲が悪いのだろう。
しかし、共通の敵を見出した途端に結束するタイプなのだ。
「黒鳥先輩、大丈夫です!」
「淡島……ああ、慄いている暇は無いな」
『それでは、初っ端から剣呑な空気になってしまいましたが、これよりタッグマッチのルールを改めて会場の皆様に解説します! お手元のホログラムパネルをご覧ください!』
次の瞬間、会場のホログラムパネル、そして選手の手元にもそれが現れる。
ルール説明にページが出現したのだ。
一応、確認の意味も兼ねてだろう。
タッグマッチルール
・プレイヤー2人と2人に分かれて対戦を行う。
・シールドは共有。各自で5枚ずつを並べて10枚で行い、ダイレクトアタックを受けた瞬間、チームで敗北となる。
・ターン順は、味方A→敵A→味方B→敵Bといった感じに味方と敵で交互になるように行う。
・バトルゾーンは共有で、1つとして扱う。味方のクリーチャーの攻撃に対するブロックも可能。
マナのカードは各自管理。
自分のクリーチャー、呪文の効果は味方のクリーチャーに使うことが出来ても、味方に使うことは出来ない。
『それでは、これより試合を開始します! デュエル・スタート!!』
こうして、史上初となる公式戦のタッグデュエルが始まったのだった——