二次創作小説(紙ほか)

Act5:天王/魔王VS超戦/地獄 ( No.302 )
日時: 2016/04/03 17:05
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 ***




「絶対にぶれない芯って結局何なんですか」
「……」
「先輩は優しいけど意地悪です。何で教えてくれないんですか? デュエルの事はいっぱい教えてくださったのに」

 むう、とスパーリングを終えたレンはため息をついた。
 彼女がやっと自分に心を許した矢先の事であった。
 とはいえ、彼女も笑顔で言っているので、本気ではないのだろう。

「当たっていない事もないし、意地悪なのも否定はしないが……」
「え、いや、そんなつもりじゃ……てか意地悪だったんですか!?」
「昔も、妹分にそう言われた事がある。同級生というより後輩のようだった奴にな」
「い、いや……ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったんです。でも、なんかあの時、はぐらかされた気がして、ちょっと仕返ししてみたくて……」
「僕は誰かを失って不安定になったことがあったからな。自分の中で絶対に消えない芯に縋ろうと思った、それだけだ」
「それって……?」
「理想だ」

 彼は言いきった。

「”こうなりたい”という自分の理想像が、人を強くする、僕はそう思っている」
「りそう、ぞう……?」
「ああ。僕は美しくありたいと思っている。正々堂々と、誇りを持つ。薄っぺらく聞こえるだろうが、大切な事だ。どんなに上面が良くても、心が汚くては意味が無い。僕を戒める理想像だ」

 彼が言うと説得力が増す。彼の美学の原点はそこにあるのかもしれない。
 ”美しくあれ”。
 不正を嫌い、厳格でも仲間想いな彼を現す言葉だった。

「……私にはまだ、そんなものはないです」
「そうか」
「……だから、私はノゾムさんに惹かれたのかもしれません。あんなに、人のために戦える人は見たことなかった。まるで、ヒーローみたいだったから」

 思春期という不安定な時期に、自分を見出すのはとても難しい。
 故に、彼女は十六夜ノゾムという少年に縋ったのかもしれない。

「でも、想えば想うほど、胸が苦しくて……だから強くなろうって思えるんです。あの小さな体に大きな魂を秘めたあの人に追いつくために」
「……成程」
「え?」
「貴様、そしてあのグラサン馬鹿のように、誰かを思う事で強さを求める者もいるということは分かっていた。だが——否定していた」

 彼は初めて、ホタルに笑みをこぼした。
 しかし、それは自嘲の笑みであった。
 本心から笑っているわけではない。

「いつ失ってしまうかも分からないものに、何故縋り、求め、想う事が出来るのか——それがずっと疑問だった。だけど、やっとわかった」

 彼は言った。

「その疑問こそが答えだということにな」
「……先輩の言う事は難しくてよく分からないです」

 むぅ、と若干拗ね気味に彼女は膝を抱えた。
 彼は気にせずに続けた。案外彼もマイペースなのだろう。

「要は、いつ無くなるか分からないものだからこそ、守り貫くために強くなろうとする。意思は同じでも、その強さは——恋い焦がれている貴様の方が上だ、淡島」
「ふぇっ!?」
「……いちいち反応が可愛いな、貴様は」
「い、い、い、意地悪!!」

 顔を真っ赤にして反論するホタル。
 それにレンは、あくまでも仏頂面で続けた。本人からすれば至極真面目のつもりで言っているのだろう。
 が、しかし、こちらとしてはさっきから気持ちがかき乱されている気がしてならない。

「褒め言葉として受け取っておけ。この黒鳥レンに褒められた、と誇りに思え」
「あんまり嬉しくない……」

 でも、合ってます、と彼女は続けた。
 レンの言っている事は図星だ。流石というべきだろう。
 顔を真っ赤にしながら、言葉を1つ1つ選んで紡いでいく。




「ノゾムさんは、自分の理想像を持ってる。だから私はこんなにあの人にあこがれて——好いてるんだと思います。ノゾムさんのことが……好きなんです」



 しばらく、沈黙が続いた。
 そして、先に吹きだしたのはレンの方だった。
 彼は素で笑ったのを、初めてみたのもあり、驚き、そして羞恥と怒りも混ざった感情で彼女は吠えた。

「ちょっ!? 何がおかしいんですか!?」
「い、いや、すまない。それをノゾムに言えば良いモノをだな。まあ、あの鈍感坊主が恋の味を知るのはもう少し先か」
「ひ、酷いです!! 人がこんなに真剣なのに!!」
「いや、だが、それで良いと思うぞ。自分の気持ちに自覚が持てているならな」
「じかく……ですか?」

 「ああ」と彼は返す。素直になれないあまり、恋の気持ちをこじらせている、あのポニーテールを思いだしながら。

「その気持ちを忘れるな。そして、守られるだけじゃなく、守れる人間になるが良い。淡島——」



 ***



 ——誰かを思う気持ちなら——誰にも負けない!! それが、私の力になる!!
 手札からカードを取り出す。
 これこそが、自分の考えていたシナリオだから。
 超戦覇龍の攻めに——奇跡の盾をぶつけるため。




「革命0トリガー発動——《革命の防壁》」 



 ——その前に、最後の防壁が立ちはだかった。
 攻撃が通り切らず、絶叫するライト。
 鎧龍の最終兵器・革命0。その詳細は火文明のヒナタのものしか聞かされていなかったのだろう。

「か、革命0トリガァァァーッ!?」
「私のシールドが0の時、貴方は私に攻撃しました。よって、革命0トリガーの条件が達成されたってわけです。私はこの呪文を手札からタダで唱えることができる!」





革命の防壁 R 光文明 (3)
呪文
革命0トリガー—クリーチャーが自分を攻撃する時、自分のシールドが1枚もなければ、この呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。
自分の山札の上から1枚目を見せ、山札の一番下に置く。それが光のクリーチャーなら、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに置く。
この呪文を唱えた後、墓地に置くかわりに山札に加えてシャッフルする。 



「効果で、山札の上から1枚を見せて、それが光のクリーチャーなら《革命の防壁》は成功します!」

 ごくり、と生唾を飲む。
 賭けだ。クリーチャーの割合が多いとはいえ、失敗する可能性も無いわけではないのだから。
 ——だけど、賭けないと当たるわけがない!!
 捲られたカードは——《真・龍覇 ヘブンズロージア》だった。

「第一タスククリア! そしてこのまま第二タスク! 山札の上から1枚をそのままシールドゾーンに加えます!」
「ッッッ!! 《モルトNEXT》でブレイク!!」

 割られる最終防壁。
 まだ、攻撃できるクリーチャーは残っている。
 しかし。

「S・トリガー、発動! 《ヘブンズ・ゲート》! その効果で、《時間龍 ロッキンスター》と《エメラルーダ》を出し、手札から1枚をシールドに仕込みます!」
「ぐっ、だが、W・ブレイカーだからそのシールドもブレイクするぞ!!」

 ブロッカーに阻まれようとも、執念の拳を叩き込むライト。
 これで、正真正銘、最後のシールドが割られたのだった——それが、ホタルの仕込んだものでさえなければ、だが。

「S・トリガー発動、《DNA・スパーク》! 全クリーチャーをタップし、シールドを1枚追加します!」
「っ!?」

 まだ、防壁は残っていた。
 何重にも、何重にも——光の鎖が、全てのドラゴンを拘束した。
 あれだけの猛攻は経った今、終わったのだった。

「だ、だが、次のターンでお終いだ!! ターンエンド!!」



 ライト
 手札0
 マナ1/8
 墓地2
 next turn:ホタル

 ホタル
 手札5

 鎧龍シールド:1



 確かに傍から見れば、この状況は鎧龍が虫の息で生きながらえているだけのように見える。
 しかし。
 革命を起こすには、絶好のタイミングだ。

「私のターン——」

 もう、迷うことは何もなかった。
 マナをチャージし、全てのマナをタップした。
 奇跡は起こした。
 後はもう、迷わず戦うだけ。

「コストを2軽減し、6マナを使って《時の玉 ミラク》を進化——」

 正義の宝玉が大空へ飛ぶ。
 未来へ行くために、時さえも空間さえも超える天王へと昇華する。
 人を想う覚悟に、革命の時は未来より訪れた。

「時を超える天王よ、私の天命の下へ! 更なる未来を掴むため、革命を起こしなさい!」

 《時の玉 ミラク》は遂に超えた。 
 時間も空間も、すべての節理を超えて奇跡を起こす。
 未来の天王にして、伝説の革命軍が今、降り立つ——



「天高く舞い、歴史を変える奇跡となれ!!
《時の革命 ミラダンテ》!!」