二次創作小説(紙ほか)

Act5:天王/魔王VS超戦/地獄 ( No.304 )
日時: 2016/04/07 03:53
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 伝説の英雄は魔王となって蘇った。
 それはレンの折れても尚立ち上がった決意のように、更に大きな悪魔龍の王となったのだ。
 《デス・ザ・ロスト》は絶叫を上げる。
 阿鼻叫喚の魂の絶望が詰まった絶叫だ。
 それが、全てを滅ぼしていく。
 悪しき魂を全て滅ぼしていく。
 そう。《デス・ザ・ロスト》は文字通り、消滅と破壊を司る魔の力に革命を起こしたのだ。

「覚悟する事だな。こいつが出たら、最期。貴様らはこいつの一撃で沈む。まずは、能力で貴様らの手札を全て墓地へ」
 
 一瞬だった。
 《デス・ザ・ロスト》のおぞましい叫び声と共に、ライトとジュンの手札は全て墓地へ叩き落される。
 全ての希望を闇に葬り去るその容赦の無さ。
 まさに、魔王に相応しい貫録だ。

「あ、あ、何だよこのクリーチャー……!!」
「《デスゴロス》よりも小さいのに、何ておぞましさだ……!! こんなに、恐怖を味わった事はない……!!」
「おい、どうするんだジュン!! テメェがハンデスを決めねえからだろうが!! 俺の、俺の活躍の場をどうしてくれるんだ!! こんな大勢の前で恥晒しも大概にしろ!!」
「何を言うんだ!! そんなことを言ったら、兄貴もしくじったじゃないか!! 他でもない、蓬莱の恥晒しは兄貴だ!!」
「心外だな。そんなに怖がってくれてはこちらも少し胸が痛くなる」

 あくまでも、抑揚のない淡々とした声でレンは語るだけ。
 裁きを下すのは——彼の最強の使い魔だ。

「教えてやろう。貴様らのコンビネーションは所詮、スタンドプレー精神から出てくるチームワークに過ぎない。確かにそれは時に貴様らを勝利に導いてくれるだろう。しかし、所詮はその程度。薄っぺらい」

 彼らのチームワークを薄っぺらい、と言い捨てるレン。
 結局、己が活躍することしか考えていなかった2人に向けて。
 上辺だけの協力関係など無意味と言わんばかりに。

「真の結束とは、互いが理解し合い、何をすべきかを考える事。皆が利己に走っては、何もかもを見失ってしまう。僕たちは互いに役割を分け、戦略を立てた。守りに徹してくれたホタルの分以上に、僕は全力を持って貴様らを葬らせて貰う!!」
「葬るだと!? 俺達のシールドは10枚まだあるんだ!! このターンでどうやって決めるつもりだ!!」
「だらだらと長引かせるのは嫌いでな。さっきも言ったが、こいつを出したが最期、一撃で貴様らは沈む。ホタル」
「はい」

 並ぶ天王と魔王。
 それぞれが互いを見た。
 未来を見通す瞳。
 過去を戒める瞳。
 それらが交錯する。まるで、互いを相棒と認識したかのようだった。
 そして、《ミラダンテ》の時計の針が12時丁度を差した。



「止まれ時間よ。変わりゆく世界を停止し、賛美の咆哮を上げなさい! 革命0、発動!」



 次の瞬間——全ては止まった。
 ぴたり、とライトとジュンの場が歪み始める。
 そこだけが、時間の法則も流れも変わってしまったかのようだ。

「私達のシールドが0枚になったので、もうあなたたちはクリーチャーを召喚できません」

 彼女は淡々と言った。
 だが、今度はもうライトはそれを聞き逃さなかった。
 いや、思わず聞き返さずにはいられなかった。

「は、今何て——クリーチャーが召喚出来ない!?」
「待て兄貴!! こいつはさっき何と言った!? 《ロッキンスター》の効果で呪文も唱えられないって言ったよな!?」
「つ、つまり——俺達はもう何も出来ないってことかぁ!?」

 クリーチャーは全てフリーズ状態。
 光以外の呪文は唱えられない。
 そして、クリーチャーも召喚できない。
 S・トリガーも召喚に含む以上、最早彼らは何も出来ない。
 デュエル・マスターズというカードゲームにおける基本の行動を全て封じられてしまったということは、文字通り何も出来ない状態と同じだ。

「そして、《デス・ザ・ロスト》で攻撃——するときに」

 おぞましい絶叫を上げる魔王。
 そして、その身体中に付いた目玉から無数の触手が現れた。
 あまりにも醜悪なその姿。
 しかし、そこに秘められた正義の革命が目覚める。
 ギリギリまでに追い詰められたことで、最高の反撃を生んだ。



「醜き罪人よ。絶叫し狂い悶え、絶望せよ。裁きの時は既に訪れた——革命0発動」



 現れた触手は10枚のシールドに貼りついた。そして、触手を《デス・ザ・ロスト》が絶叫と共に両手で引っ張る。
 今こそ、処刑の時。
 


「執行!!」



 鋭い音が連鎖して響き渡った。
 触手が絡んだシールドは全て割られていった。
 無残にも、あんなにあった盾は全て無くなり、ぽっかりと彼らの眼前から1つも無くなってしまっていた。

「革命0——《デス・ザ・ロスト》が攻撃する時、相手のシールドを全てブレイクする」
「そして、《ミラダンテ》と《ロッキンスター》の革命でS・トリガーによるクリーチャー召喚、呪文の詠唱はできません。これが、革命のコンビネーションってことです!」
「成す術は無いということだな」



時の革命 ミラダンテ LC 光文明 (8)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン/革命軍 13500
進化−自分の光のクリーチャー1体の上に置く。
T・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーをすべてタップする。それらは次の相手のターンのはじめにアンタップしない。
革命0—自分のシールドが1枚もなければ、相手はクリーチャーを召喚できない。



魔の革命 デス・ザ・ロスト LC 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン/革命軍 13000
進化−自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
T・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の手札をすべて捨てる。
革命0−このクリーチャーが攻撃する時、自分のシールドが1枚もなければ、相手のシールドをすべてブレイクする。



 鎧龍の最終兵器・レジェンドカード。
 その2体がコンビを組んだことで、絶対の勝利がもたらされた。
 時が止まっている間に、全てを失い、もう成す術はない。

「しかも《デス・ザ・ロスト》の革命0によるシールドブレイクはあくまでも効果によるブレイク——どういう意味か分かるか?」
「は、はははは、な、なにを——俺は、俺はまだ負けるわけには」
「み、認めない……!! 俺は貴様を……認めないぞ、黒鳥レン……!!」
「地獄への道は僕なりの善意で舗装されている。ありがたく思うがいい。余りにも見苦しいから、僕が直々に教えてやる」

 絶叫する《デス・ザ・ロスト》。
 レンの中のドス黒い感情が全て、このカードになって現れているのだろうか。
 双子はもはや、考える事すらしなかった。
 その巨大な瞳に睨まれ、自分たちが如何に無力かを思い知ったからである——





「貴様らの負けだ」




 単純にして、単調な一言。
 それ以外、もうレンは何も言わなかった。 
 その瞬間を確かに見届ける。
 自らの切札が裁きの鉄槌を振り下ろす様を——