二次創作小説(紙ほか)
- Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝 ( No.314 )
- 日時: 2016/08/03 22:22
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
「——コレで俺の勝ちだ。白陽」
「クッ、馬鹿な……」
暁ヒナタと白陽は互いに睨み合っていた。
床にはカードが置かれている。
白熱とした試合。頭脳と運の絡む駆け引き。今、2人は純粋なる勝負の世界にめり込んでいた。
「俺はこれに賭けるぜ。さあ、どうする、白陽」
「おのれ……ヒナタ……この私を此処まで追い詰めるとは……」
「観念しろよ——さあ、勝負だ!」
「やるしか——無いのか」
刹那。
互いに持つ全てが露わになった——そう。勝負を決めるカードが。
「スリーカード!!」
「ストレートフラッシュ!!」
「クッソォ、負けたァァァァーッ!! 絶対勝ったと思ったのにぃぃぃーッ!!」
「ふん、手持ちの札が顔に出ている奴に私が負けるわけがないだろう」
——ただし、カードはカードでもトランプのカード、そして今やっているのはポーカーであったが。
「無様だな、ヒナタよ。賭けの内容通り、私は”あいすくりーむ”を全て頂く」
「く、クソッ……!! こんな猛暑日に大切なアイスを全て奪われるとは、何という拷問ッ……!! カードの交換もしなかったのに、何て強運な奴ッ!!」
「フッ、大事なアイスが目の前で私の口の中に消えるところを大人しく見ていることだな、フハハハハハ——」
「——じゃないでしょうがぁぁぁぁーッ!!」
鈍い音と共に、白陽の身体が思いっきり倒れた。トランプが散らばる。そのまま床に顔面から押し倒される結果に。
何事だ、と突然の来訪者の顔を見て、ヒナタは言葉を失った。
見れば、白陽の後頭部を思いっきり踏みつけているのは、クレセントであった。
唖然とした表情を隠せないヒナタは、恐る恐る口を開く。
「お、おい……お前何しに来たんだよ。つかどっから入ってきたんだよ」
「網戸開いてたけどー?」
「クッ、不覚……母さんが洗濯物を出すために開けてそのままになってたのか」
「ク、クレセント……そろそろ脚を……もがもが」
「るっさい! 何で!? 明日から大事な戦いがあるんでしょ!? 何でデュエマじゃないカード広げて、しかもアイス賭けて遊んでんのよ、一本寄越しなさい!」
「お前絶対それ目当てで来ただろ!!」
***
「いや、さあ、あれだよ。息抜きだよ息抜き。こんな猛暑日、アイスでも賭けてゲームしてなきゃやってらんねーっつの。明日から大阪に行くって言っても、今日は結局暇だしな」
「いやさ、随分と楽観してるよね……」
あっけらかんとしたヒナタを前にして、呆れた表情を浮かべるクレセント。考えてばかりで前になかなか進まない自分の主とは大違いである。
「と言ってもなぁ。今更グダグダ悩んでたって仕方ねえんだ。これでもさっきまでデッキのテストプレイを何十回もやってたんだぜ」
「相手は私だ。一応、デッキは動かせる」
「つか、いい加減何しに来たのか言えよなクレセント。人ん家勝手に入ってきやがって」
どうやら、遊んでばかりではなかったらしい。
しっかりとした基礎と鍛錬の合間に休息をしっかりと取るのは彼らしかった。
じろり、と睨まれたクレセントは、決まりが悪そうに苦笑いを浮かべつつも答える。
「そ、それがさ……ノゾムのことについてなんだけど」
「何?」
「うん。何か、此処最近自信なさげな表情を浮かべてずっと悩んでるみたいなんだよね……前に負けた奴と戦うって言ってたのは覚えてるんだけど、デッキを弄れば弄るほどに、だんだん精気が失せていったっていうか、何ていうか……」
「あー……」
ヒナタは思い返す。
自分と彼は、似ているようで相違点はやはり多い。
明るく、口が悪いのは互いに同じなので、性格も似ているように思えるが——
「俺は理屈よりもまず行動、だけどノゾムは——結局のところ理屈をまず立てるタイプだからなあ。考え方が理系なんだよなあ。やたらと体育系に近いってだけで」
「理屈? ああ確かに……よくあんたらの奇行にも突っ込む側だしね……」
「そうそう、常識人だからな。……俺のことを常識ない奴みたいに言うんじゃねーよ」
「じゃあどうするの?」
「……しっかたねぇなァ。多分あいつ、キイチの奴と戦うから余計力みまくって頭パンクしてんだろうなぁ……考えまくるから、普段は頭が冷えてても、コンピューターみたくヒートアップしたら思考回路が狂うタイプか」
イレギュラーへの弱さ。
特に、槙堂キイチという因縁の敵との戦い。緊張もあり、焦りもありなのだろう。
年の割に老成しているようには見えるが、彼もまだ精神が年相応の少年ということなのだろう。
しかも最近、革命のカードを使えるようになるため、フジにもしごかれまくっていたのを思い出す。1日何度もD・コクーン内でデュエルをし、しかもその後繰り返しスパーリング。彼がげっそり、としていたのを思い出す。
がたり、と立ち上がるとヒナタは言った。
「よし分かった。俺に良い考えがある」
***
「……で、何すか先輩」
「よーく来たな」
集合したのは近所の公園。
しかし、流石海戸というべきか、デュエルテーブルが此処には置かれている。
そしてヒナタと、クレセントによって呼び出されたノゾムは、それを挟んで相対していたのだった。片や眠たげに目を擦り、片や口角を上げて笑みを浮かべている。
「デッキは組んできたか? きたよな?」
「……組んできましたけど、まだ完成形って訳じゃ……」
ヒナタの”指定”に従いつつも、ノゾムは自分がまだ納得できていないデッキを使うのが不服だった。
しかし、彼はいつも通りあっけらかんとした表情で言う。
「構わねーぜ。つーか完成形かどーかなんて、誰かと戦わなきゃ分かんねーだろ」
「……そーすっけど」
「考えてるだけじゃ、前に進まねえぜ、ノゾム」
「先輩が考え無しなだけっすよ」
カードを並べながら言うヒナタ。
不満気に頬を膨らませて、ノゾムもカードを並べた。
超次元ゾーンには、クレセントのステラアームド・クリーチャーを置きながら。
「確認っすけど。クレセントを使っても良いんすよね?」
「そうだ。久々に全力で掛かってこい!」
「……オーケー、っす」
『気合入れてくよ! ノゾムっ!』
「わーってるよ、クレセント」
「白陽、頼むぜ!」
『了解した』
互いに視線が交わる。
そして——デュエルの幕が切って落とされた。