二次創作小説(紙ほか)

Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝 ( No.318 )
日時: 2016/08/10 22:17
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

『遂に始まろうとしています! D・ステラ、学校対抗予選、聖羽衣対鎧龍が此処、大阪セントスタジアムで行われようとしております!』



 会場は沸き立った。
 大阪湾の人工島に建設された巨大ドーム、その名は大阪セントスタジアム。
 今回の試合は、此処で行われる。用途は海戸マリンスタジアムと同様。
 そこで対峙する2組の影。

『鎧龍決闘学園の代表、夜明けの風雲児・暁ヒナタ選手と希望と期待の1年生・十六夜ノゾム選手!』

「来たわね……」
「ふむ、いよいよか。観戦側に回ると、かえって緊張するものだな」

 前面に現れたホログラムパネルを見ながら、レンは答えた。
 それに同意するようにホタルも頷く。
 そして、祈るようにして両手を合わせたのだった。

「ノゾムさん……」
「大丈夫。ヒナタが着いてるわ」
「さーて——問題の対戦相手はやはり——」



『対する聖羽衣学園代表は——鎧龍からの転校生にしてドライな狩人・槙堂キイチ選手、そして——3年生にして聖羽衣チームのリーダー、そして絶対的なエース・獅子怒シド選手!』




 わあああああ、という擬音が聞こえてきそうなレベルであった。
 大きな歓声が上がる。
 そして、聖羽衣学園の生徒達で構成された”大”応援団が。夏休みなのに生徒のほぼ全員が観戦と応援にやってきているらしい。
 そして、あちこちから「しーしーど! しーしーど!」という声援が飛んでくる。

「うわあ、何このアウェー感……」
「野球応援か何かかコレは? 何であれ、あの獅子怒シドという男。相当なカリスマの持ち主らしいな」
「そうらしいですね! 厳つい顔に反して、紳士的な性格で成績優秀、運動神経抜群の鉄の男! にも関わらず、デュエマでは一癖ある戦法を使うっていうギャップがまた人気を生んでいるらしいです!」
「その一癖ある戦法っつーのがどんなもんか……だがそれだけじゃねえぞ。お供の槙堂キイチも相当な強さだ。去年の鎧龍サマートーナメントで、ヒナタとコトハと共に俺様が指揮していたチームを打ち破っている。皮肉な狩人。それが奴の二つ名だ」
「キイチ……」

 コトハは心配そうに、ホログラムパネル越しの彼の表情を窺う。
 いつもは顔色一つ変えないが、デュエルとなれば薄ら笑いを浮かべ、愉悦のままにカードを操り、相手との全力のぶつかり合いを望むあの姿は——

「今も、変わってないはず……勝負事には人一倍貪欲なんだもの」
「槙堂さんは、今では獅子怒さんのお気に入りだって噂ですね。言うなれば、暁先輩とノゾムさんのような関係らしいです」
「成程な。互いに似た者同士のコンビの戦いか」
「何だっていーんだよ、んなこたァ。ごたごただとか問題だとかが解決したのは良いがな」
「半分貴方の所為ですよねソレ」
「仕方ねえじゃぁーん、仕方ねぇじゃぁーん」

 脚を組んで適当に返すフジ。反省する気はゼロらしい。

「それはともかく——始まりますよ」
「ああ」
「そうね」

 既にシールドは展開された。
 
「そうだ。超次元のカードをチェックしておかねばな」

 ホログラムパネルを操作するレン。
 そこに次々にデータが映し出されていく。

・暁ヒナタ
無敵剣 プロト・ギガハート
熱龍爪 メリケン・バルク
大いなる銀河 巨星城
最前線 XX幕府
天守閣 龍王武陣 〜闘魂モード〜
銀河剣 プロトハート
将龍剣 ガイアール
斬鉄剣 ガイアール・ホーン


・十六夜ノゾム
龍波動空母 エビデゴラス×2
超龍素要塞 エビデシュタイン
真理銃 エビデンス
龍芭扇 ファンパイ
立体兵器 龍素ランチャー
二丁龍銃 マルチプライ
神光の龍槍 ウルオヴェリア

「うむ……これは」
「ノゾム君がガッチガチに固めてるのは分かるわね……でもヒナタはどうなんだろ」
「それはともかく、相手の方も見ねばな——」

 そう言い、レンはホログラムパネルをスライドさせ、聖羽衣の選手データを閲覧していく——



 ***




 対峙する2組。
 今まで表情一つ変えていなかったキイチであったが、じろり、じろり、とヒナタとノゾムの顔を眺めると口角をじわりと上げる。

「へーえ。まさか、雑魚2人がコンビ組んでくるとはね。よくもまあご苦労さん、そしてご愁傷様だコノヤロー、テメェらの無様な負けっぷりが全国ネットで放映されるのを考えると、笑いが止まらねーや」
「……」

 敢えて、何も返さない2人。
 それで挑発する気も興醒めしたのか、キイチは獅子怒に呼びかけることにする。

「獅子怒さーん、やっちまいましょ。コイツらチョーシこいてやがりますよ」
「要らん戯言は止したまえ。今は目の前のデュエルに集中するのみ」
「面白くねェなあ」
「何だって良い」

 遮ったのはヒナタだった。




「——さっさと始めようぜ。今日勝つのは俺達2人だ」
「——お前、本気で言ってんの?」



 視線がカチ合う。その迫力の凄まじさに、ノゾムも後の言葉が続かない。
 ——やっぱり、ヒナタ先輩も——
 悔しかったのだ。
 この日のために、特訓とデッキの改造を繰り返してきたヒナタは、もうあの時とは違う。今度こそ彼を打ち負かすために、そして——

「お前の言った通りだな。ノゾム」
「えっ?」
「デュエマは楽しんだモン勝ちだ。それだけはこいつらに負けないようにしようぜ!!」
「……はいっ!!」

 シールドが展開される。
 互いのプライドを賭けた戦いが始まろうとしていた。

「オラぁ!! ぶっつぶしたれや、聖羽衣ぉーっ!!」
「キャーッ! 獅子怒先輩、今日も素敵ィーっ!!」
「槙堂ぉーッ!! 気張ってけぇーっ!!」
「東京モンなんかぶっ倒せェーっ!!」

 アウェー感満載なヤジが飛んでくる。
 それを煩わしそうな表情で流すと、獅子怒はヒナタに落ち着き払った態度で向かう。

「申し訳ないな。こんな煩い中では集中も出来まい」
「い、いや、心配に及ばねーっすよ」
「暁ヒナタ。十六夜ノゾム。今日は互いにベストな試合をしよう」
「は、はいっ……こっちこそ」
「よろしくお願いしますッ!!」

 柔道家と見紛うほどの体格と、岩のような顔とは裏腹に本当に獅子怒という人物は紳士的な性格らしい。
 こっちも形式ばった礼を思わず返してしまったほどだ。
 しかし、表情筋1つ動かさない巌のような姿は1つの迫力を感じた。
 カリスマと支配者の貫録。
 静かではあるが、それを確かに感じられた。
 しかし。それを裏付けているのは確かな実力。
 それも絶対的なエースにしてリーダーと呼ばれる程の、だ。
 そう思ってる間にターン順が決定された。
 画面には4枚のカードが映し出されている。そして、それがかき混ぜられて並べられた。これにより、ターン順はヒナタ→キイチ→ノゾム→獅子怒の順となったのである。
 シールドが展開された。
 4人の視線が交差し、遂に決闘が始まる。




『それでは、試合開始です!! デュエル・スタート!!』