二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜  ( No.32 )
日時: 2014/06/15 09:43
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「《永遠のリュウセイ・カイザー》、だと!?」
「ぶっ潰せぇーっ、《リュウセイ》! ヒナタの馬鹿面叩きのめせ! 《ヒャクバイザー》を攻撃して破壊っと」

 キイチがあからさまにヒナタを馬鹿にした歌を歌いながら(野球応援のカッ飛ばせー、○○のノリで)カードをタップする。
 《「四つ牙」》の攻撃だ。釘バットを振り回し、ヒナタへ飛び掛る。
 これで、全てのシールドが割られた。

「トリガー、なし……だ」
「先輩ィィィ!!」

 ノゾムの叫ぶ声が聞こえる。
 だが、それはキイチには届かない。

「アーッハッハッハ! 前よりも更に弱くなったかァ? ああ!?」
「く、くそっ……!!」
「へっ、トーナメントで当たったときも、そうだったなあ。最期の神頼みで運にも見放されてよォ。それで、負けた後にこれだぜ。『また、デュエルしような』って」

 ギッ、と歯を食いしばるキイチ。
 うざったいような感情が、今の彼を支配していた。
 うっとおしい。気持ち悪い。目の前にある”光”が。


「虫唾が走るんだよ、クズ野郎ォ!! 負けたくせにヘラヘラしてんじゃねェぞ!!」


 最期に、贐をするように、キイチは言った。

「少しだけ猶予をくれてやる。それで良いだろ?」

 ---------何を言ってるんだ、こいつは?
 この状況でまだデュエルを続けることがどんなに苦しいか。
 負けが確定したのに、プレイングを大勢の前で無様にも醸すことになるのがどんなに恥ずかしいか。
 これではまるで、公開処刑のようだ。
 たとえ、それで生き延びられたとしても次のターンに殺される。
 たとえ、それで勝ったとしてもお情けで勝たせて貰ったにすぎない。
 しかも、だ。《リュウセイ》がいるので、スピードアタッカーによる強襲さえ許されない状況だというのに。
 さらにキイチは、何ターン猶予を与えるとは言っていない。少しだけ、と言った。いつ命綱を切られても文句は言えないのだ。
 ---------く、くそっ! 俺のプライドまでギタギタに痛めつけるつもりか、こいつはッ!!


「先輩はリタイアだ!! もう、こんなデュエルを続けるのは止めてくれ!!」


 ノゾムが進み出た。

「ちっ、ガキか。まあいいぜ。そういうことなら、な」

 元の無気力な表情で、キイチは応答した。
 このとき、槙堂キイチの勝利が決まったのだった。

「あんたの外道っぷり、沢山見させてもらったぜ」

 怒りの形相でノゾムは彼に食って掛かった。

「外道? むしろ人道的と言って欲しいな。お情けで勝つチャンスを与えてやったんだぜ? 俺は優しいだろ」
「あんたは卑劣だ!」
「何とでもどうぞ」

 悪びれずに彼は返した。

「そーいったことは、俺に勝ってから言ってほしいな」
「このやろ……」

 思わず、拳を振り上げる。だが、その拳にはデッキケースが握られていた。
 あくまでも、デュエマで勝負しろ、という気持ちで暴力衝動を抑えているのだろう。

「止めろ、ノゾム! あいつは強い。お前が太刀打ちできるような奴じゃない!」
「ヒナタ先輩------------」

 ノゾムは言った。
 このとき、確かにヒナタに対する疑問が生まれた。

「勝機があるかないなんて、関係ねぇよ。ただ、正々堂々ぶつかって勝てば良いんだ、そうでしょう!?」
「ノゾム------------」

 カードを広げた。同時に、ヒナタのカードを纏めて、ヒナタに渡す。

「全く、また分からんちんが出てきちまって、困るぜ------------お前は、本気で”潰す”」

 そういって、再びキイチもカードを展開した。
 このとき、2人の間には明らかな”敵対”の念が生まれていた。

 ***

 ノゾムとキイチのデュエル。
 2ターン目で今度もキイチの後攻で始まった。しかし、1ターン目から《アクア・ティーチャー》、そして《アクア戦闘員ゾロル》をノゾムは召喚しているため、その展開力には目を見張るものがある。

「俺のターン、《ヤッタレ・ピッピー》を召喚。ターンエンド」

 しかし、一方のキイチも次のターンへさっきの布石を繋ぐ。

「オレのターン! 《アクア・ソニックウェーブ》を出して、《ヤッタレ・ピッピー》をバウンス!」

 だがそれは、《アクア・ソニックウェーブ》によって妨害された。
 《ソニックウェーブ》はコスト3以下のクリーチャーを手札に戻す--------つまりバウンスするリキッド・ピープルだ。 
 これで、キイチは次のターンに《ヴァルボーグなう》を出すことはできても、場数を増やすことができない。

「うぜぇ、俺のターンだ。《青銅の鎧》召喚」


青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ) C 自然文明 (3)
クリーチャー:ビーストフォーク 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。



 さっきとは違い、今度はマナを増やしてきた。恐らく、次のターンに出すのは5コスト域の超次元呪文か。
 不幸にも、今ノゾムの手札にバウンス系の呪文は無い。
 
「オレのターン! 《アクア・ジェスタールーペ》召喚! 効果で連鎖発動! よし、コスト3の《アクア・ハルカス》を出すぜ!」

 運が良い。《ジェスタールーペ》の効果と合わさって、2枚引くことができた。

「ターンエンドだ!」
「調子に乗るな。俺のターンだ。呪文、《超次元 ボルシャック・ホール》で《アクア・ティーチャー》を破壊して、《激沸騰!オンセン・ガロウズ》を出すぜ」

 現われたのは、火と水のエイリアンサイキック・クリーチャーだった。
 ハンターメインのデッキのはずなのに、たまにエイリアンが入っていたりする。
 しかも、ドローソースの《アクア・ティーチャー》も破壊されてしまった。
 だが、こちらにも手はある。リキッド・ピープルは3体。

「オレのターン! シンパシーでコストを−3してこいつを召喚だ! 龍素記号iQ解放確認! 出力せよ、結晶龍! 正義の方程式を今、構築せよ! 《龍素記号 iQサイクロペディア》!」



龍素記号iQ(アイキュー) サイクロペディア P 水文明 (8)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 8000
シンパシー:リキッド・ピープル
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを3枚まで引いてもよい。
このクリーチャーはブロックされない。
W・ブレイカー



 現われたのは、全身が結晶で包まれた龍だった。
 さらに、こちらには大量の軍勢がいるのだ。

「《アクア・ソニックウェーブ》でシールドをブレイク!」

 先手を取るノゾム。
 だが、割られたシールドが集積して、カードの形を成した。

「S・トリガー、発動。《火焔タイガー・グレンオー》でパワー2000以下の雑魚を全て破壊」

 計算が狂った。仕方がなく、ターンを終える。
 さらに、ここでキイチは、さらに追い討ちをかけていく。

「《アパッチ・ヒャッホー》召喚。効果で、《剛腕の政》を出す」



アパッチ・ヒャッホー P 火文明 (4)
クリーチャー:メルト・ウォリアー/ハンター 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト4以下のハンター・サイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。



剛腕の政(ビシャモン・キッド) P 火/自然文明 (4)
サイキック・クリーチャー:ビーストフォーク/ハンター 3000
覚醒リンク−自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《不死身のブーストグレンオー》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。
ハンティング



 だが、これだけでは終わらない。突如、《アパッチ・ヒャッホー》がキイチの山札の一番上に戻り、再びバトルゾーンへ戻ってきた。
 しかし、これで再び《アパッチ・ヒャッホー》の能力が発動した。
 一体、何が起こったのか、とノゾムは場を見回すと、《オンセン・ガロウズ》の姿が。

「……やられた」




激沸騰!オンセン・ガロウズ  ≡V≡  水/火文明 (7)
サイキック・クリーチャー:サイバー・コマンド/フレイム・コマンド/エイリアン 6000
W・ブレイカー
自分のターン中、水または火の進化ではないクリーチャーを召喚した時、そのクリーチャーを表向きにして自分の山札の一番上に置いてもよい。そうした場合、そのクリーチャーを山札の上からバトルゾーンに出す。



 一回出したクリーチャーを山札の一番上に置いて、再び出すという行為は普通ならば無駄足他ならない。
 しかし、これが強烈な登場時効果を持つクリーチャーならば話は別だ。

「さあ、今度は超次元ゾーンから《カチコミの哲》を出すぜ」



カチコミの哲(チェーン・アーム・トライブ) UC 自然文明 (3)
サイキック・クリーチャー:ビーストフォーク/ハンター 2000+
覚醒リンク−自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《紅蓮の怒 鬼流院 刃》と《魂の大番長「四つ牙」》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。
ハンティング(バトル中、このクリーチャーのパワーは、バトルゾーンにある自分のハンター1体につき+1000される)



 まずいことになった。たったの1ターンで、クリーチャーの数は5体。一方のノゾムの場は、孤軍奮闘という状態だ。

「どうした? さっきまでの意気込みは。もしかして、もうお終いかよ?」

 挑発的なキイチの態度が余計、耳に障った。