二次創作小説(紙ほか)
- Act7:青天霹靂 ( No.327 )
- 日時: 2016/08/17 16:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
観客席の鎧龍チームの席は、緊迫した空気に包まれていた。
「……嘘っ、何あのクリーチャー!? もうやだ、何なのアレ!! さっきから気持ち悪いのばっかだしぃ!!」
「落ち着けコトハ。気持ち悪いのならばトイレで思う存分リバースしてくるが良い」
「デリカシーは無いのか、あんたに!!」
ガァン、とレンの顎に拳を食らわせるコトハ。
「元気で……何より……」と今わの際の言葉を吐き、倒れるレンを横目に、フジは分析するようにタブレットを見ながら、言った。
「あれが大元のボスってところか……なんつーやつだ。出しにくいかと思えば、G・ゼロでの早期召喚も可能な訳だしな」
フジは溜息をつく。聖羽衣の隠していた脅威を前に、やはり動揺を隠せないのだろう。
「恐怖はまさしく……墓地からやってくる……バラバラにしても石の下から……ミミズのように」
「武闘先輩、それ以上はいけない」
「だが断る」
「やめてください」
明らかに某奇妙な冒険の台詞を感じ取ったホタルが真っ青な顔で突っ込む。
しかし。ノゾムとヒナタの状況がよろしくないのは確かだ。前回とは対照的に、相手は単純に物量で2人を押し潰そうとしているのだから。
「ノゾムさん……! 私、信じてますから……!」
「それは僕達だって同じだ」
レンがホタルの肩に手を置く。
以前の話を聞いてからか、彼は心強い理解者になっていたのだ。
「まして、あいつのことを誰よりも想っているのならばな」
「先輩……!」
「大丈夫よ。あのグラサン馬鹿とノゾムの力はこんなものじゃないわ」
——こんなところで、あんたが負けるわけない。そうでしょ、ヒナタ!
コトハは見つめる。
巨大なる霊獣と相対するヒナタの瞳を画面越しに——
***
超霊獣 レオニダス・キルギルティー 光/闇文明 (10)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/キマイラ 12000
墓地進化GV-自分の墓地にある光と闇の多色クリーチャー3体を重ねた上に置く。
G・ゼロ:自分の墓地に名前に《蟻獅子》とあるクリーチャーが5体以上ある時、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。
このクリーチャーが場に出た時、またはターンの終わりに、このクリーチャーの下に重ねられている名前に《蟻獅子》とあるクリーチャーを1体、バトルゾーンに出してもよい。
T・ブレイカー
「嘘、だろ!? 折角破壊したと思ったのに——!! それどころか、厄介なのが新しいのも含めて3体に増えやがった!!」
ただでさえ、パワーが高くて1体処理するだけでも精一杯だったのに、それが2体に増えてしまった。
しかも、《レオニダス》に至ってはパワーとコストの関係上、ヒナタのデッキでも除去するのが難しい始末。
「俺のターン——!! クソッ、せめて1体だけでも——!! 《メテオ・チャージャー》で《ミルメコレオ》1体を破壊だ!」
しかし。これでも焼石に水。隕石が降り注ぎ、蟻獅子の1体を砕くが、まだもう1体残ってしまっている。降り注いでいるのはその焼石であるのはさておき、ブロッカー1体潰した所で、このロックは止められない。
「ターンエンド——!!」
ヒナタ
手札2
マナ5/8
墓地1
next turn:キイチ
確実に言えるのは——もう次は無い。
全てはノゾムのプレイングに掛かっている。
「キイチ君。そろそろ終わらせたまえ。下手に長引かせると、今度は全体除去で全てやられかねん」
「分かってますよ先輩。俺のターン、《モエル・ゴー》進化——《獣鬼装甲 トラマルGGG》!!」
再び現れる《トラマルGGG》。そして——通算、4度目のガチンコ・ジャッジをヒナタへ仕掛けた。
「さあ行くぜ、三連ガチンコ・ジャッジ!!」
「ッ……!!」
1度目——ヒナタが《トップギア》で、キイチが《モエル鬼 スナイパー》でキイチの勝ち。
——や、やべぇ……!! もう、嫌な予感しかしねえ!!
2度目——ヒナタが《爆ぜる革命 ドラッケンA》なのに対し、キイチが《黄金龍 鬼丸「王牙」》——またもヒナタの負け。
そして3度目——
「嘘……だろ」
ヒナタの力の抜けた声と共に結果がすぐに出た。
ヒナタが《めった切り・スクラッパー》なのに対し、キイチは《R・S・F・K》——完全に、ヒナタの負けだ。
つまり。《トラマル GGG》の効果が発動する——
「さあこれで俺は3度のガチンコ・ジャッジに勝った!! 手札からコスト12以下のハンターをバトルゾーンへ出すぜ!!」
「く、くそっ、すまねぇ、ノゾムッ!!」
ぐっ、と歯を食いしばり、虚空を睨むヒナタ。
そこから——白き雷に包まれた勝利の龍が姿を現す——
「その牙は必勝の刃!! 集結し狩人の魂を今此処に呼び出さん!! 出でよ、天頂の力に目覚めし勝利の化身!!」
その胸には宇宙の力が込められている。
純白の身体には黄金の魂が刻まれており、身の丈もあろうかという大剣を掲げ、それは現れた。
人はその名を聞いて震える。
「召喚、《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼(ばき)」》!!」
「必勝」の頂 カイザー「刃鬼(ばき)」 ≡V≡ 無色 (11)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/ゼニス 14000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、相手のシールドを数え、その回数相手とガチンコ・ジャッジする。その後、こうして自分がガチンコ・ジャッジに勝った数、ハンターを1体、自分の墓地、マナゾーン、または手札からバトルゾーンに出す。
T・ブレイカー
エターナル・Ω
次の瞬間——会場は沸き立った。
とうとう、キイチの切札が姿を現したからだろう。
それはいよいよ、聖羽衣が鎧龍へ勝利の王手を指したことを意味していた。
天頂たるものであることを見せつけるかのように、強大な勝利の化身は大剣を振り上げる——
「《「刃鬼」》の効果発動——こいつが出た時、相手のシールドを数え、その回数だけ相手とガチンコ・ジャッジする!! 本来こいつはこのデッキではオマケみてーなもんだからな。《トラマル》と相性が良いというわけでもねえし。だが——シールドが元々多いこのルールならば話は別だ!! 最後にテメェらにとっておきの絶望を見せてやる!!」
——てっきり《「王牙」》が来るかと思ったが——もっとやばいのが——!!
ヒナタは身構える。
そして——キイチが指を指した。
「さあ、今度は6連ガチンコ・ジャッジだ、ヒナタ!!」
「ーっ!!」
もう、身構えても無駄であった。
この効果は非常に危険だ。1度負けただけでも致命傷になりかねない。
なりかねないにも関わらず——
「——”4勝”」
「いっ……!!」
——気付けば、ヒナタは自分が6回のガチンコ・ジャッジの中で4度も負けてしまっていることを察する。
最早、こうなれば止まらない。獅子怒による援護を受け、キイチの巨大クリーチャー達で一斉に決める——それがこの2人の戦法だったのだ。
「行け、《アドレナリン・マックス》、《ガンリキ・インディゴ・カイザー》、《モエル鬼スナイパー》——そして《黄金龍 鬼丸「王牙」》!! 残念だったなァーっ!! 《リュウセイ》の効果で全員スピードアタッカー、しかも《アドレナリン・マックス》がタップされたとき、ドラゴンは全員アンタップ!! これはもう、いくら何でも防ぎきれねーだろ!!」
ヒナタは立ち尽す。
余りにも大きな軍勢を前にして——笑みを浮かべた。
「ヒナタ先輩ッ!!」
言われるまでも無い。ヒナタは頷いて返した。それを見て、ノゾムも安心したようだ。
思い返す。
決戦の前日のことを——