二次創作小説(紙ほか)
- Act7:青天霹靂 ( No.330 )
- 日時: 2016/08/21 12:44
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『勝者、鎧龍決闘学院——!! まさかまさかの聖羽衣、革命の前に落つ——!!』
アナウンスが鎧龍の勝利を告げた。
しばらくの間、呆然としていたキイチであったが——ふっ、と口元に笑みを浮かべると獅子怒の方を向く。
彼も察したかのように頷いた。
「獅子怒さん。俺ら、負けたんすね」
「そうだな」
「だけど、こんなに清々しい負け方も久しぶりっすわ」
「鎧龍の革命の力——ふっ、見事だったな」
そして、再び沸き立つ観衆。
既に、彼らの声は勝者である鎧龍を讃えるものになっていた。
とはいえ、聖羽衣学園の席からはどよめきが上がってはいたが。
「そんなっ、獅子怒さんが——キイチが負けるなんて、嘘やん……」
「ありえへんわ、最後の最後の攻撃が通らんなんて——」
獅子怒に心酔していた者達の中には、まだこの敗北が受け入られない者もいる。
しかし。
「勝った——勝ったんだよ、ノゾム!! お前のおかげで!!」
「はいっ!! でも、先輩があそこでシールドを全部削ってくれたから——」
「何だっていい! すっげーつえーじゃねーか、お前の革命! しかと見届けたぜ!」
「鎧龍の諸君」
獅子怒の声が響く。
2人は、聖羽衣チームの方へ向き直った。
改まった態度で獅子怒が言う。
「良い試合であった。君達は聖羽衣の強固な守り、そしてキイチ君の攻撃も物ともせず、打ち勝ったのだ。私の心に、君達の名をしっかりと刻んでおくとしよう——暁ヒナタ、十六夜ノゾム」
「い、いやあ、そんな大げさなぁ」
「何時かのリベンジのために、な」
「あっ……やっぱそうなるんすか」
彼もまた、デュエリストなのだ。
負けたままでは収まらないのだろう。いずれ、また再戦する時が来ると告げる。
「おい、ヒナタ」
横から入ったのはキイチの声だ。
「今度はぜってー、ぶちのめす。後、そこの十六夜ノゾムも、な!」
「おいおい、もうそんな演技しなくたって良いんだぜ? ヒールぶってたのは知って——」
「演技じゃねえよ? これはデュエリストとしてのリベンジ宣言だ。精々、次も俺をヒリヒリさせてくれや」
「——そうだな」
「後、言っておくぜそこのチビ」
「むっ」
厭味ったらしくキイチは言う。
それに苛立ちが隠せないノゾムであったが——
「こいつに着いて行くんなら覚悟しとけよ。生粋のデュエマバカだ。おめーも似たようになるぞ」
「望むところだ! オレは先輩に着いて行く、それは誰に何と言われようがゆるがねーよ!」
「……なーるほどねぇ。カッカッカッ、それでこそ暁ヒナタの弟子だわ」
「で、し……?」
「そうだとも。もうお前らの連携見てたら本当の師弟みてーでな——ま、今回は師匠が弟子に引っ張られてたよーな」
「おいコラ」
「まぁいい。また会う時を楽しみにしてるぜ」
踵を返すと、彼は去っていく。
獅子怒も一緒だ。
「じゃあな! 世界一のデュエルバカとその弟子! いずれ俺がまた斃すからくたばんじゃねーぞ!」
「行くぞ。キイチ君」
「へいへい」
そんなやりとりの後、彼らはゲートの奥に消えていった。
「……素直じゃねぇなあ」
ヒナタのそんな呟きは聞こえるはずもなく——
何であれ、D・ステラ学校対抗予選の鎧龍の2戦目もまた、白星で終わったのであった。
***
「さーて、どうしますかね獅子怒さん」
「……うむ」
獅子怒は唸った。
あの少年達の事だ。
「……私の見立てでは——彼らは間違いなく”適合者”だ」
「いやぁ、ヒナタは元からって言ってるでしょ?」
「いや、間違いない。あの十六夜ノゾムも、ひいては鎧龍チーム全員がな」
「元々おかしかったんすよ。鎧龍チームは、リトルコーチがあの武闘フジ、そしてメンバーもヒナタに加えてコトハや(いつか失踪してた)黒鳥レン、に加えて1年2人……3年が1人もいねーじゃねーかよコノヤローって。絶対、あれは適合者で組んだんですよ、武闘フジが」
「君の知り合い、それもクリーチャー使いが2人もいるからな」
「しかも黒鳥も持っていたらしいから、分かってるだけでも3人。そして武闘フジは言うまでもなく」
「……ひょっとして、彼らはあの忌まわしき龍に立ち向かおうとでもいうのか? 世界に行くことで——そうなれば、彼らと私の目的は一致することになるが」
会場の外に一先ず出て、誰にも聞かれていなさそうな場所で話し合う2人。
「最近の侵略者の出現は間違いなく超獣界での出来事と関係がある。俺の”キンジ”がデッキごと失踪したのとも関係あるんでしょうよ」
「それだけじゃない。間違いなく、忌まわしき龍達はアウトレイジやオラクルがこの世界からいなくなっている隙に侵攻を始めている」
「そうなれば獅子怒さんの——」
「——妹が失踪したってのも関係あるんじゃないか? って」
声が響いた。
虚空を見る。
そこには——ローブを被った少年がいた。
「テメェ——アンカ!!」
「貴様。何をしに来た!!」
「いやぁー、まずは乙でしたと言っとこう。【悲報】聖羽衣終了のお知らせ、ってな、ギャハハハハハ!!」
「おい、ぶっ殺されてぇのかコラ」
露骨に怒りを現したのはキイチだ。
しかし、それでも尚アンカはへらへらと笑っている。
「おーっと。”レミ”についてすこーしだけ情報を漏らしちゃおッかなぁー。どーしよっかなぁー。漏らしちゃお」
「何!?」
獅子怒はアンカを睨む。
「実はさぁー、お宅の妹さんは観戦に来てたんだよな、今日の試合に。お兄ちゃんの活躍が見たくてみてたのに、負けちゃって失望したってよぉーっ」
「貴様……!!」
「で、どうする? 俺実は今新しい切札持ってるんだけどよ。デュエルするか? もしお前が勝ったら会わせてあげても良いぞ? 愛しのレミちゃんになぁー!?」
「獅子怒さん、俺が行く! こんな奴の挑発に——」
「キイチ君」
ぽん、と彼は手をキイチの肩に置いた。
「この件は私の責任だ——私の所為で、こうなってしまったのだ。私が奴を倒さなければ、私は一生自分が許せないだろう」
「そんな、獅子怒さん——」
バッ、とアンカは手を獅子怒へ突き出す。
「決闘空間、解放!!」
叫ぶとともに——黒い霧が辺りを包んだ——
***
「私のターン、呪文《ヘブンズ・ゲート》!! その効果で《神光の神官 ウェルベット》と《蟻獅子の聖霊 ミルメコレオ》をバトルゾーンに!!」
切札2体を並べる獅子怒。
《ウェルベット》には相手をタップインさせる効果があるので、これでアンカの動きを封じることは出来る——はずだった。
「俺のターン——じゃあそろそろ行こうか」
7枚のマナをタップした彼は——言い放つ。
「《不死晃星 ソウルフェザー・ドラゴン》、召喚」
タップされつつも現れたそれは——不死鳥の龍であった。
更に。
「その効果でP(パイロ)・コアを持つステラアームド・クリーチャー、《飛翔衛星 アンカー・ザ・フライング》を出すぜ!!」
「無駄だ。そいつもタップされる」
——ステラアームド? 何だ、あれは。以前は使っていなかったはずだが——
見たことのないカードに戸惑う獅子怒。
「ターン終了時に《ミルメコレオ》の効果発動!! 猛毒に犯されて——」
「残念だったな。《ソウルフェザー・ドラゴン》の効果発動!!」
侵食していくウイルス。
しかし。《ソウルフェザー・ドラゴン》は、それを受け付けた様子が一切無いことが窺える。
「そ、そんな馬鹿な!! くっ、私のターン——《ロードリエス》を召喚し、カードを引いてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー」
カードを引くアンカ。
そしてそのまま——《ソウルフェザー》に手を掛けた。
「俺のP・コアを持つクリーチャーが攻撃するとき——マナにドラゴンが7体以上いれば、星芒武装が発動する!!」
アンカの声と共に、《アンカー・ザ・フライング》が翔ぶ。
そして——炎に包まれ、《ソウルフェザー》へ取り込まれていく——
「星芒武装……!? 何だ、それは!?」
「教えてやるよ獅子怒シド」
にやぁー、と厭らしい笑みを浮かべるとアンカは答えた。
「世の中には、”もう元に戻せない物”もあるんだよ——」