二次創作小説(紙ほか)
- Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神 ( No.337 )
- 日時: 2016/08/21 20:46
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『——D・ステラ予選、対戦カードは鎧龍決闘学院と——零央学園となりました! 試合会場は此処、海戸マリンスタジアムです!』
会場は一気に沸き立った。
互いに二勝しているチーム同士の試合。
これで勝った方が間違いなく、日本代表としてD・ステラの本選へと進むことが出来るのだ。
『鎧龍決闘学院からは、前試合から引き続き、暁ヒナタ選手の姿があります! また、その相方となるのは、戦慄の古龍使い、通称・マナゾーンの魔術師、如月コトハ選手です!』
「あっ、ヒナタ先輩と如月先輩です!」
「やれやれ、これで最後か……」
ホログラムパネルを見て、はしゃぐノゾムに、うんうん、と頷くフジ。
どこか感慨深いものを感じているようだった。
「まだ予選ですよ武闘先輩」
「そうだがな……この短いうちに成長したもんだ」
「先輩も人間らしい面があったんですねぇ。大スクープです」
「ねえ、棒読みでそのセリフは流石に傷ついたんだが」
「まあ良い。対戦相手の入場だ」
『対する零央学園の選手は——純粋無垢に隠された信託の裁き、2年・有栖川ツグミ選手! そして、その相方となるのは3年の真胴ハツタ選手!! 両者、零央でもトップクラスの進学コースの選手だ!!』
現れたのは、ツグミと彼女に付き人のようにして付き添っている少年・真胴だ。
デュエルテーブルに着くなり、手袋を嵌めたり、また常に背の低いシルクハットをかぶっている辺り、印象はよくある胡散臭い紳士であった。
そして、ツグミの方もコトハの方を一瞥するなりデッキを切り出す。
まるで、お嬢様と執事のような——そんな印象の2人だった。
コトハも、ツグミが現れるなりその顔を睨むと、食って掛かる。
「久しぶりじゃない。試合を延期してくれたおかげで、こっちはあんた達に勝つための特訓を十分に積むことが出来たわ」
「……ふうん。それはよかったかも」
「ツグミ様。準備が出来次第」
「わかっているかも」
歓声が上がり、最後の対決を見届けようとする観客達。
そして、レンも固唾をのんで今まで共に戦ってきた2人の背中を見ていた。
ホログラムパネルを展開し、今回の彼らの超次元カードを確認する。
「これはっ……」
「まあ、予想通りと言ったところだろうな」
・暁ヒナタ
爆熱剣 バトライ刃×2
銀河大剣 ガイハート
覇闘将龍剣 ガイオウバーン
将龍剣 ガイアール
龍魂教会 ホワイティ
龍魂遺跡 グリーネ
悪夢卍ミガワリ
・如月コトハ
邪帝斧 ボアロアックス
始原棍 ジュダイナ
恐龍界樹 ジュダイオウ
真聖教会 エンドレス・ヘブン
百獣槍 ジャベレオン
無敵剣 プロト・ギガハート
イオの伝道師 ガガ・パックン
勝利のプリンプリン
「むっ、コトハの方には違う色のドラグハートが散見するな……」
「あ、《ジャベレオン》と《エンドレス・ヘブン》は私が如月先輩に貸したんです。相性良さそうだったんで」
「……一体、どうやって出すんだ?」
「対してヒナタ先輩は——かなり今回は総力使ってる感じですね……」
「《バトライ刃》……コレが使われるのは確定だな。だが、あいつの構築でどうやって出すつもりだ……?」
「多分、レン先輩も知らないカードを入れてると思いますよ?」
「それは分かるが……」
超次元ゾーンは公開情報。
故に、デッキの考察が進んでいく。
それは相手側も同じであった——
「それでは、零央の方を見ていくか——」
***
「初めまして、暁ヒナタに如月コトハ。自分は、真胴ハツタ……今回、僭越ながらツグミ様の試合にお供をさせていただくこととなりました。以後お見知りおきを」
丁寧な態度の裏には、底知れないものを感じる。
外国人のような端正な顔立ちに、高い背。
切れ目のような瞳からは光が差していると錯覚した。
「御託は良いわ。さっさと始めましょう」
「そうだな。それに、お前らには色々聞いておきたいこともあるしよ。特に有栖川ツグミ!!」
「……ふぅん」
またも、眠たげに目を擦ると、彼女は爆弾を投下するように言った。
「——良いかも。そっちがかったら、あぴせりんのことをおしえてあげても」
2人は戦慄する。
この人前で、ましてやあの少年の隣で、臆面にも出さず英雄の事を告げた。
ということは——あの真胴も関係者なのだろう。
「コトハ。この試合、絶対に勝つぞ!」
「そうね。そんなこと、当の前に決めていたわ!!」
シールドが展開される。
そして、4人の顔写真のカードが大画面に映し出されて並べられた。
ターン順は、真胴→コトハ→ツグミ→ヒナタと決定される。
『それでは、デュエル・スタート!!』
***
「獅子怒さん……やっぱり見に来るんすね……」
「良くない空気が会場を覆っている……」
「だけどこの風、少し泣いてます」
「茶化すのは止めたまえ」
相も変わらず巌のような顔つきの獅子怒は、会場の中央——つまり、今まさに試合が行われようとしているところを見つめていた。
「君も感慨深くないか? かつてのチームメイト2人が共闘する姿は」
「別に。あいつらなら大丈夫っすよ。ヒナタに至っては、もう俺からは何も言う事はねぇし、コトハは元からメンタルぶっといし。問題は対戦相手でしょうよ」
「……やはり知っていたか」
「ええ、勿論っすよ。正直、この試合——何が起こるか分からねえっすわ。いや、正確に言えば——この試合の後、か」
「……零央は、何を企んでいるのだ——」
***
「……遂に始まったか。D・ステラ、学校対抗予選とやら……」
「コロナぁ。またあの暁ヒナタが対戦するんだ」
「それだけじゃない。会場に、英雄の適性を持つ者が3人も居る——だけど、1つはおかしい。何かがおかしい。英雄にしては、余りにも歪すぎる。まるで、継ぎ接ぎで合わせたかのような魔力……」
「ええ? そんなことどうだって良いじゃん」
「良くない。ビジョンが余りにも不正確で、マナが余りにも不安定で、何より可視出来る範囲でも力の経路が不正規過ぎる——何かがおかしい」
人影の居ない場所から、1人と1機が試合の行く末を見つめる。
もしも。もしも自分の予想が正しければ、とコロナは思案した。
それは最悪の結果であり、自分にも無関係ではない。
「——もしも、あのカードがこのままだとしたら。何かの拍子にあのマナの器は——壊れる」