二次創作小説(紙ほか)

Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神 ( No.340 )
日時: 2016/08/22 02:53
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 現れたのは、火薬や武器を全身に装備した巨大なる龍。
 火特有の手札交換に、自然のマナ加速が加わった形になったこのクリーチャーは、一度咆哮すれば大地を揺るがし、召喚者に大いなる知識も授けるのだ。

「《ドン・ドドフェル》の効果発動! ターン終了時に自分の手札全て——つまり、俺は《ジャックポット》を置けば、カードを3枚引く!」



激龍剛撃ドン・ドドフェル SR 火/自然文明 (7)
クリーチャー:メガ・コマンド・ドラゴン/ジャイアント 7000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
W・ブレイカー
自分のターンの終わりに、自分の手札をすべてマナゾーンに置いてもよい。そうしたら、カードを3枚引く。



「ターンエンドだ!」

 ヒナタ
 手札3
 マナ1/8
 墓地1
 next turn:真胴

 これにより、マナゾーンのカードが増えただけではなく、手札も一気に3枚ヒナタは増やしたことになる。
 しかも毎ターン、要らない手札をマナに置けばまた3枚引ける——このアドバンテージは相当なものだ。
 手札が切れやすいステロイドに於いては、特に重宝することになる。
 
「……良いでしょう。では、そろそろこちらも、エンジンを掛けていかねばなりませんね——」

 続く真胴のターン。
 《マナロック》によるマナフリーズが解除されたことにより、溜められたマナを彼が自由に使うことが出来るようになっていた。
 そして、潤沢な手札からカードをマナに置き、5枚のマナをタップする。

「呪文、《超次元 フェアリー・ホール》。その効果で《魂の大番長「四つ牙」》をバトルゾーンに出させていただきます」

 妖精の加護により、マナが増えると同時に、釘バットを掲げた四つ腕の獣人が姿を現した。
 それが降り立つと同時に大地が震える。 
 しかし、それ自体はまだ脅威ではない。彼自身、まだ切札を出していないのだから——

「ターンエンドです」
 
 真胴
 手札3
 マナ0/9
 墓地4
 next turn:コトハ

 ごくり、とコトハは息を呑む。
 貯まるマナ、消滅させられた自分のドラグハート。
 一気に劣勢に陥ったように感じる。このままでは、ヒナタの足を引っ張ってしまう。
 手札はもう、無いのだから——

「!」

 ——いや、まだ希望は残されていた。
 手札が無いのならば——増やせばいいのだから。

「あたしのターン、7マナで今度はこの子を出すわ! 《理英雄 デカルトQ》召喚!」
「ッ……! そいつは!」

 現れたのは、水文明の知識によって集積された強大なる英雄。
 それにより、激流と共にコトハの枯渇した知恵が潤されていく。
 マナ武装は既に、《イメン=ブーゴ》の染色によって達成されていたのだ。

「マナ武装7でカードを5枚、引くわ! そして、手札のカードを1枚シールドへ加え、シールドのカードを1枚手札に!」
「……ふぅん」
「そんなスカした顔してられるのも今のうちだわ! ターンエンド!」

 コトハ
 手札5
 マナ0/8
 墓地1
 next turn:ツグミ

 マナ武装の効果は絶大だ。
 薫風武装を使うと、つくづくコトハはそう思う。
 本来ならば、その文明のみのデッキで使うことを許された力を、自由に使いこなすことが出来るのだから。

「マナゾーンの魔術師だなんて勝手に仇名つけられたけど、悪くないじゃない!」
「いけるぞ、コトハ! このままもうひと押しだ!」
「勿論よ! あたし達ならいける! このまま勝てる——!」

 ツグミのターン。
 しかし、彼女は動揺した素振りも見せず——カードを引いた。
 そして、迷わず5枚のマナをタップする。

「呪文、《デ・バウラ・チャージャー》。そのこーかで《オラクル・タクティクス零式》を手札に。チャージャーでとなえた呪文をまなにおくかも。ターンエンド」

 ツグミ
 手札2
 マナ2/7
 墓地1
 next turn:ヒナタ

「クソッ、俺のターン……!!」

 カードを引くヒナタ。しかし、手札が余り良くない。
 ブーストカードをこんな時に限って引く羽目になってしまうとは。
 
「取り敢えず、《ドン・ドドフェル》の効果で全部マナに置いて、カードを3枚ドロー! ターンエンドだ!」



 ヒナタ
 手札3
 マナ12/12
 墓地1
 next turn:真胴



「それじゃあ、まどう。たのんだかも」
「了解しました、ツグミ様。客人には全力で持て成さなければいけませんからね」

 任されたように真胴は恭しく礼で返す。
 次の瞬間、《「四つ牙」》の効果でマナが増加する。
 そして——

「それでは、ご両人方——今宵の龍は、オラクル特製の神光縛具を帽子として被っておられるが故、少々狂気(マッド)にイカれてやがります——骨の髄までお楽しみくださいませ——」

 ——10枚のマナをタップした。




「——神の力は真実か偽りか。絶望と敗北の伝説を焼き付け——今、召喚されたまえ。
《戒・神聖輝 G(ガイアール)・サファイア》」




 その名を聞いた途端、会場の全員が、そしてヒナタ達までもが戦慄した。
 ガイアールとサファイア。
 かつて、違う種族の者同士として争った二体が——アウトレイジとオラクリオンとして戦った二体をあたかも融合させたかのようなその名の前に、彼は戦慄する。
 そして、火のマナを食らい尽すようにして咆哮する。
 
「伝説の龍、と言いましたか。それは我々、零央にも伝わっておりまして——いわば、これはオラクル教団が作り上げた紛い物という設定ですがね」

 その曲がりくねった角と、Vの字の立物こそガイアールのものだが、背中に取り付けられた主砲や巨大な腕、そして機械のようなパーツはサファイアのものだ。
 何よりも、その背中には偽りの神を意味するかのように羽毛の生えた翼が別のユニットのようにして浮かんでいる。

「では、やりなさい。《G・サファイア》」



 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!



 全てを震わせ、内側から崩してしまえる程の絶叫だった。
 それと同時に、タップされていないはずの《イメン=ブーゴ》に向かって炎が吐き出される。

「こいつ、アンタップキラー持ちなの!? でも、サファイアの名前を冠すならシールドにさえ干渉させなければ! 《セブ・アルゴル》でブロック!」

 身を挺して、電脳の住人が《イメン》を守り切る。
 しかし——次の瞬間、コトハのシールド2枚が——焼け落ちた。

「えっ……?」

 彼女は突如起こった光景に目を見張る。
 シールドは攻撃されていないはずだ。にも拘らず——シールド2枚は手札にも送られず、墓地へ直接叩き込まれた。

「おい、コトハ……!」
「うん……やばいよ、このサファイア——今までのそれとは完全に別物だわ!!」
「失礼。彼の効果を説明するのを忘れていました」

 至って、表情を崩さずに真胴は言い放った。
 あらゆる敵に絶望と、敗北をもたらす伝説の正体を。




「《G・サファイア》は、相手クリーチャーとバトルに勝ったときのみシールド2枚を焼き尽くし、そしてアンタップしているクリーチャーを攻撃することが出来るのです——」