二次創作小説(紙ほか)
- Act10:伝える言の葉 ( No.344 )
- 日時: 2016/08/23 21:08
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『決っっっっっっっ着!! 鎧龍対零央、両者ともド派手なクリーチャーの応酬でしたが——最後は革命を見事に決めてカウンターした鎧龍が制しました!!』
わああああああ、と歓声が上がる。
ヒナタも、コトハも呆然、と立ち尽くしていた。
遂に終わったのだ。
長い、日本での戦いが。
「やった、やったよ、ヒナタ!! あたし達が、鎧龍の世界進出を決めたんだよ!!」
「わっ、馬鹿、おい!!」
人目もはばからず抱き着いて来る彼女に、戸惑いを隠せないヒナタ。
それほどに、コトハのテンションは上がっていた。
「試合後の挨拶しねぇといけね——って、アレ」
見れば、既に零央チームの2人は姿を消していた。
そういえば——アピセリンの事などを教えて貰うはずだったのに、先に約束をすっぽかしてしまったのだろうか。
「全く……まあ良いわ。会うだけなら、またいつでも出来るわね」
「そうだな」
「ヒナタ!! コトハ!!」
声がする。
見れば、そこにはレンを先頭に鎧龍チームが走ってきていた。
息を切らせるレン。流石に彼も、この勝利の喜びを抑えることが出来なかったようだ。
「全く、貴様らはやってくれるな」
「俺は今回何もやってねえよ。コトハが、決めてくれたんだ」
「何言ってんの。あんたが相手にプレッシャー掛けてくれたから、狙いが分散して結果的にこっちの被害が少なくなったんだから。感謝してるのよ?」
「ひいいいなああああたああぜんばいいいい!!」
うっ、うっ、と泣く声がする。
見れば、涙で目を腫らせたノゾムであった。
「オイバカ、ノゾム。泣くなよこのくらいで」
「ずいまぜん……感極まっちゃって……」
「まだ俺達には世界があるんだぞ?」
「そうですよ、ノゾムさん。先輩達、困ってるじゃないですか」
「わ、分かってるよ……でも、先輩達のおかげで鎧龍は——」
「何言ってんだ。お前らだって十分頑張っただろ」
ヒナタがそういうと同時に、全員は顔を見合わせた。
確かに、鎧龍が全勝という快挙は、間違いなく此処にいる全員の成したことに違いなかったのだから。
「そうだな。此処にいる全員の力が無ければ、僕たちは世界への切符を手にすることは無かっただろうな」
「5人全員、革命の力を使いこなしたものね」
「うむ。コレで大団円だな。で、やっぱり革命を伝授した俺様がやっぱりMVぴ——」
じろり、と全員は空気を読まないフジを睨む。
流石の彼も押し黙った。邪険にされまくった所為で凹んでいるのだろう。
「……うむ。調子に乗った。すまない」
「冗談ですよ。フジ先輩がいたから、俺達は新しい戦法に触れることが出来たんですから」
「だが、それを使いこなしたのはテメェらの力だ。世界でも、存分に振るうこったな。まぁ——今だけは」
『これにより、鎧龍決闘学院が日本代表に決定いたしました——』
「——共に勝利を喜ぶとするさ、俺様もな」
フジの言葉と共に——全員は観客達に手を振った。
此処まで応援してくれた声援に感謝するため。
そして——世界へ行く決意を表すため——
「ねえヒナタ」
「ん?」
コトハは、ヒナタに寄り添うと言った。
「——後で、スタジアム裏の公園に来てくれないかな?」
***
勝利の余韻を残す間もなく。
その後現地解散となったが、ヒナタだけはコトハに呼び出されていたので、帰るに帰ることが出来なかったのだった。
「ったくよぉー、何だこの公園……あー、もうこんな時間だから誰も居ねえか」
もう、夕暮れ時。公園自体目立たない場所にあるので、既に遊んでいる子供は居ない。
何故こんな場所に自分を呼び出すのか。今回の試合で自分が至らないことがあったのだろうか、とヒナタは頭の中で繰り返す。
しかしまあ不思議なものである。白陽もいつの間にか居なくなっているし——
と。
ヒナタは、ようやくコトハを目に留めた。
はっきりと、こちらの目を見据えて、立っていた。
「ねえ、ヒナタ。懐かしいね」
「なんだよ急に」
「別に? 以前の事思い出してたの。あたしと会った時のこと覚えてる?」
「ああ、覚えてる」
そのことはヒナタも鮮明に覚えていた。
彼女と一緒にいると、とてもそんな出会い方をしたようには時たま思えなくなるが。
「喧嘩が最初だったもんね」
「そーいやそうだ」
「でもさ、いつの間にかあんたらと一緒にいるのが当たり前になってた」
「当たり前?」
「そうね」
苦笑いすると、コトハは続ける。
「あたしは、あんたに何度も助けて貰った。何度も、何度も——」
「何言ってんだ。俺だってお前に助けられた。でも、どうしていきなり」
「ヨミに浚われた時——1人で助けに来てくれたあんたのことが、あたしにはヒーローに見えたんだ。でもね。やっぱり、あんたはあんただった。いつも通り、目の前の困っている人が居たら放っておけなくて、助けるために奔走する。あんたはそういう人間だったもの」
「どうしたんだ? そんなに褒めちぎって」
「……あんたって本当に鈍感。女の子がこうやって、2人きりになれる場所に呼び出してんのに」
すいっ、とコトハは彼に顔を寄せた。
「ねえ。もしも、あんたが過去に引きずられたままで、この思いが跳ね除けられても——あたしは構わない。いつもと同じように、また接してくれれば、それでいいの。だから聞いて——」
「やっと、見つけたかも」
2人は殺気を感じた。
そして、振り向く。
そこには——有栖川ツグミの姿があった。しかし、その雰囲気はさっきまでのものとは打って変わって異様だ。
「有栖川ツグミ……!? 何でこんなところに!?」
「な、何コレ……視認出来るだけでも、こんな異常なマナ——見たことが無い!」
「おいおい、ざっけんなよ……!! どうなってんだオイ……!!」
「私の私の……」
そう言いかけた途端、彼女は頭を抑える。
「ウ、ウウウウウウウ!! 嗚呼呼呼呼呼呼!!」
叫ぶと同時に、クリーチャーのビジョンが現れた。
それは、蟲の尾を持つ少女型の英雄《アピセリン》であった。
明らかにこの光景は異常だ。何がこれを引き起こしたのかは分からないが——
「サイコスキャニング、100%、英雄因子を確認……!! 欲しい、欲しい欲しい欲しい——!! 全部、食らい尽してやる——ううううううああああああああああああああ!!」
彼女は、黒い靄を吐き出した。間違いない。コレは決闘空間のものだ。
コトハとヒナタも辺り諸共包まれていく——
「こんな時にまで邪魔するなんて!!」
「くそっ、どうするんだよ、白陽もニャンクスもいねえのに——!!」
『ヒナタ!!』
『コトハ様!!』
刹那、2枚のカードがそれぞれの手に渡る。
見れば、白陽とニャンクスのカードであった。
「お前ら! どうしてここに!?」
『妙なマナの歪みを感じ、来てみれば案の定だ!』
「ニャンクスまで」
『コトハ様の邪魔をする方は、誰だろうと許さないのですにゃ!!』
「もう……そんな出来た従者を持った覚えはないわよ……!」
2人は同時に共通の敵を睨む。
「コトハ、準備は出来たか?」
「勿論よ、ヒナタ。此処からは本気でアイツをのめすしかないみたいよ」
「いや本当容赦ねえな」
手をかざすと同時に、白陽とニャンクスによって、デッキのカードが入れ替わっていく。
そして、2人も叫んだ。
『決闘空間、解放!!』