二次創作小説(紙ほか)

Act10:伝える言の葉 ( No.345 )
日時: 2016/08/24 08:21
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

***



「両方とも、神の贄になるが……良いわ」



 決闘空間が開かれた。
 そして、ツグミは1枚のカードを隣に投げ入れる。
 突如、それが実体を得たクリーチャーと化した。

「オイオイ、実体化させたのか!?」
『恐らく、あの少女の中に巣食っているクリーチャーがそうさせている!!』
『同時に、決闘空間さえもゆがめてしまっているのですにゃ!』
「——召喚」

 彼女が告げると共に、それは完全に実体を得る。
 現れたのは、英雄の力によって肉体を得た偽りの神・ニュークリア・デイであった。
 そして、ツグミとニュークリア・デイの正面に10枚のシールドが並ぶ。

「我が主に……英雄に……栄光を……!!」

 低く、静かな声で偽りの神は言った。
 ホログラムの時とは、桁違いの覇気と魔力が可視出来る。
 思わず、ヒナタも後ずさる程であった。一歩間違えば引き込まれてしまいそうだ。

「コトハ……どうする?」
「……良いわ。やってやりましょう」

 2人の正面に10枚のシールドが並ぶ。つまり、2対2でデュエルしろということなのだろう。
 床に、巨大な時計のビジョンが現れる。しかし、それは長針しかなく、今はコトハの方を向いていた。

「……これは……どうなってんの!?」
「——この針は、今この空間の時間を誰が支配しているかを示すもの——つまり、誰が手番なのかを示すモノ。そう、私が”歪めた”」
「歪めた、だと——!?」
「そう。2人纏めて食らう為、タッグマッチの時と同じルールにしたかも」

 つまり。今の彼女には決闘空間のルールを歪める程の力があるということであった。
 それほどに凄まじい魔力を、アピセリンは持っているのだ。
 それが何らかの要因で暴走し——今に至っているのだろう。

「最も、ルールは公平で対等でなければならない——それが大原則だけど」
「おいおい、何なんだよ、そのアピセリンってカードは——!!」
「ヒナタ。話は後よ。まずは、こいつを片付けてからじゃないと! 互いのシールドは合計10枚でさっきと同じ……つまり、共有されてるってこと!」
「何でこうなったのか、分かんねえし色々納得いかねえけど、ぶっ飛ばせばスカッとするかもな!!」

 画して。
 ヒナタとコトハ対、ツグミとニュークリア・デイによる2対2のタッグマッチが始まろうとしていた——





「暴食の星の前に——平伏せ」




 ***




「《フェアリー・シャワー》を唱えて、ターンを終了する」

 有栖川ツグミ(enemy)
 手札4
 マナ7
 墓地3
 next turn:暁ヒナタ(鎧龍)

 鎧龍チームと、ツグミとニュークリア・デイのデュエル。
 此処まで、4人全員が互いのプレイスタイルに合わせるためか、自然混色のブースト編成であることが判った。
 というのも、先ほどの零央戦以上のマナ加速カードの応酬が待っていたからである。
 特にコトハとツグミは、手札を切らさないように片や《ライフプラン・チャージャー》、片や《フェアリー・シャワー》という徹底っぷり。
 また、このマナから見るにツグミは今回、《オルタクティス》といった光のオラクリオンを使うわけではないようだった。
 真っ先の疑いは、自然とゼロのビマナである。
 一方のニュークリア・デイは自然に光と闇を入れたネクラカラーとなっており、オラクリオン零式を多用してくるならばこちらの可能性が高かった。
 場にあるカードは、コトハが召喚した《コートニー》とニュークリア・デイが召喚した《》
 さて。コトハに追いつけるように、今回自然を採用したヒナタであったが——此処で6枚のマナをタップし、クリーチャーを呼び出す。

「《守護炎龍 レヴィア・ターン》召喚! その効果で、マナゾーンから《ガントラ・マキシバス》を召喚してマナをチャージ!」

 一気に彼は、クリーチャー2体を呼び出す。
 龍と共に現れた雪精は大地から更なる命を呼び込んだのだった。

「ターンエンドだ!」

 暁ヒナタ(鎧龍)
 手札2
 マナ0/6
 墓地2
 next turn:ニュークリア・デイ(enemy)

 時計の針が動き、ニュークリア・デイを指した。
 同時に——彼もまた動き出す。

「我がターン——ドロー」

 カードを引いた彼は、そのまま7枚のカードをタップする。
 場には此処まで《青銅の鎧》しか居なかったが、更に堅実な展開に出る。

「《神聖鬼 デトロイト・テクノ》を召喚」



神聖鬼 デトロイト・テクノ VR 無色 (7)
クリーチャー:オラクリオン 7000
W・ブレイカー
自分のマナゾーンで無色カードをタップする時、そのうちの好きな枚数のカードの、マナの数字を2にしてもよい。



 現れたのは、鬼面を持つオラクリオン《デトロイト・テクノ》。その能力により、マナゾーンにある無色カードが活性化していった。

「……ターンエンド」

 ニュークリア・デイ(enemy)
 手札2
 マナ0/7
 墓地2
 next turn:コトハ

「あたしのターン、ドロー!」

 何であれ。
 コトハは怒っていた。
 兎にも角にも怒っていた。
 この少女、有栖川ツグミはまたも自分の邪魔をしたのだから——

「——此処で、片付けるわ! 7マナで《理英雄 デカルトQ》を召喚! そして、マナが全色になっているからマナ武装7発動!」

 現れたのは、結晶龍の英雄。
 そのマナ武装により、手札を5枚引いたコトハは、更にシールドと手札のそれを入れ替える。
 これに加えて《デカルトQ》はブロッカーまで持っている優秀なクリーチャーなのだ。

「ターンエンド」

 如月コトハ(鎧龍)
 手札6 
 マナ0/7
 墓地2
 next turn:有栖川ツグミ(enemy)

「おい、コトハ」
「何よ!?」
「あの《デトロイト・テクノ》と言い、有栖川の動きと言い——やっぱり裏にヤバいのが隠れてる予感しかしねえ……! ”アレ”を出せるなら、早期に頼めるか!?」
「”アレ”……分かってるわ。さっさとケリを付けてやるんだから」




「ケリを付けられるものなら、付けてみればいいわ」




 言った有栖川ツグミは、超然とした表情でカードを引いた。
 何を考えているのか分からない表情だったのが、今は最早完全にロボットのようで人間としての感情を捨ててしまっているようだった。
 ノイズの掛かった声と言い、不気味ささえ駆り立てられる。

「あんた、本当に何なのよ!! あたしの邪魔ばっかりして!!」
「違う。私の目的は、英雄の力……そう。ニャンクス、白陽。お前達の事だ」

 ふうっ、と2体がビジョンを現す。
 名前を呼ばれたから、何事かと出てきたのだろう。

『有栖川ツグミ……と言ったな。お前の持つ、その力の正体……!! とても禍々しく、お前には扱えない!! 今すぐ手放せば間に合う!!』
『多分、無理ですにゃ……あの様子だと、もうカードによる意識の介入が始まっていますにゃ!』
「ニャンクス、白陽。アピセリンって名前に聞き覚えはあるか?」
『前にも聞いた6人目の英雄——わたしも、他の面々も、聞いたことが無いと言っていた! 恐らく、我々のどの世界とも出身が違うのか、それとも——』

 そう言ってる間に、今度は7枚のマナがタップされる。
 そして、神々の降臨を賛美するようにして——ツグミは言い放った。



「虚無に帰す虚ろな星よ……今こそ目覚め、再び全てを食らい、虚ろに返せ——」



 唸り声が聞こえる。
 猛獣のような、低い唸り声だ。
 そして——何かが地面を突き破った——





「——召喚、《片翼の天姫星 アピセリン・ホロウ》」