二次創作小説(紙ほか)

Act10:伝える言の葉 ( No.349 )
日時: 2016/08/25 00:57
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「すげぇ……これが、コトハとニャンクスの、星芒武装……!」

 ヒナタは圧倒されていた。
 ”彼女”の桁違いな存在感を前にして。
 《樹海の女法王 ニャンクス・ガイアード》——その第一印象は美しい、であった。
 身の丈もあろうかという宝杖を構え、上半身には鎧状の胸当てを付けている。後ろには純白のマントを羽織っていた。
 スパッツ状の下着を覆うのは、透明なスカート状の布だ。それらすべてが神秘的で、触れてはいけないように思える程に綺麗だった。
 何より印象的だったのは、高位であることを示す宝冠、そしてその左右に生えた猫の耳であったが。

「ターンエンドよ」

 余裕を持った表情の彼女に——ツグミは一気に仕掛ける。
 そちらから出て来ないのならば——先に動き、叩き潰すだけだ。

「私のターン——《「命」の頂 グレイテスト・グレート》を召喚。その効果で、墓地から《アピセリン》を再びバトルゾーンに!!」

 


「命」の頂 グレイテスト・グレート SR 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 21000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンまたは墓地から好きな数のクリーチャーをコストの合計が7になるように選び、バトルゾーンに出す。
Q・ブレイカー
エターナル・Ω




 現れたのは、天頂の者・ゼニス。
 そして、彼は命を司る者。その権限により、墓地から、そしてマナからあらゆる命を生み出せるのだ。
 それにより、《アピセリン》が再び姿を現す。
 が、しかし——

「《ニャンクス・ガイアード》の効果発動」
『いっきますにゃ!』

 ——次の瞬間、《ニャンクス》も動いた。
 その宝杖を地面に突き刺し、更に魔法陣が広がる。
 
「いずれかのプレイヤーがクリーチャーを召喚した時、それとコストが同じか少ないクリーチャーをバトルゾーンに出せる。この意味、分かるかしら」
「なっ……!!」

 奇しくも、それはさっきと同じ状況を演出することになった。
 つまり。自分の召喚だろうが、相手の召喚だろうが、それに反応してマナからクリーチャーを出すことが出来るのだ。
 次の瞬間、《ニャンクス》の魔法陣から更なる命が生み出される。それでコトハが呼び出したクリーチャーは——



「数多の大地を食らい、暴走しなさい——《暴龍事変 ガイグレン》!!



 それは、火の全てのマナを食らいつくし——暴走する龍。
 大いなる熱と共に、顕現したのだ。
 
「《ガイグレン》……!?」

 その強大な存在を前にして、ツグミは立ち尽してしまう。
 得意気に言ったのは、ヒナタだった。

「コトハのデッキに合うと思って、渡した甲斐があったぜ。これで、《鬼丸「覇」》の借りは返したってことで良いよな、コトハ」
「まぁね。こいつは選んだら自パワー以下のクリーチャーを全て破壊するまさに歩く戦術兵器——どうする?」
「お、おのれ……!! 《アピセリン》の効果で《バアル・ゼビュー》を出して、ターンエンド!」

 続くヒナタのターン。
 彼もまた、コトハを支援するために動き出したのだった。

「俺は、《メガ・マナロック・ドラゴン》を召喚! その効果で、ニュークリア・デイ。お前のマナを3枚、フリーズする!! ターンエンドだ!!」
「ぐううッ……!! おのれ、人間め……!!」

 唸ったニュークリア・デイはカードを引いた。
 しかし、マナを縛られた所為で大型ばかり手札にため込んでいた彼は一気に行動が出来なくなってしまう。
 そのまま——コトハのターンとなったのであった。

「それじゃあ——もう、終わりにしましょう!! 7マナで《凶英雄 ツミトバツ》を出し、更に《ニャンクス》の効果でマナから《ツミトバツ》をもう1体出すわ! これで、パワーマイナスは2×7000——《ニュークリア・デイ》、《アピセリン》、《バアル・ゼビュー》を破壊よ!」
「ま、まずい……!!」
「何が原因で暴走したのか——あんたがどうしてこうなったのか——あたしは知る必要がある。だから教えてほしい——あんた達のことを!!」

 手を伸ばし、コトハは叫ぶように宣言する。



「《暴龍事変 ガイグレン》で攻撃!!」



 ガアアアア、と叫んだ《ガイグレン》はそのまま掲げた巨大な剣を振り下ろし、ツグミのシールドを叩き割る。
 しかし、暴龍は止まらない。
 マナを食らい、再び起き上がり、更に剣を振るった。

「マナ武装9、《ガイグレン》アンタップ!!」

 再び、《ガイグレン》がシールドを叩き割った。
 その破片が、ツグミへと襲い掛かる。

「ッ……!!」
「もう1発!! マナ武装9、《ガイグレン》アンタップ!!」

 起き上がった《ガイグレン》は止まらない。
 際限なく上昇するパワー、そして止まない攻撃。
 遂に、ニュークリア・デイのシールドまで全て叩き割った。
 が、しかし——




「S・トリガー、発動——《アポカリプス・デイ》」




 ——次の瞬間、またも先ほどの試合と同様に、場のクリーチャー全てが破滅の光に包まれて消滅する。
 煙が舞い、正面が見えなくなった。
 何とか、軍勢は全て消し飛ばしたか、とツグミは正面を見た。

「よくやったわね、ニュークリア・デイ——」
「……主、あれを——」
「……え?」

 見える。
 人影が見える。
 如月コトハと、暁ヒナタのものかと最初は思ったが——違う。
 遠近的に有り得ない。
 そして、疲弊した心に追い打ちをかけるように、声が聞こえてくる。

「《ニャンクス・ガイアード》の最後の効果——それは、破壊される時、代わりに手札からドラゴンを捨てれば場に留まるということ」

 ——それはコトハのものだった。
 曰く。命を扱う女教皇に相応しいこの能力は、武装解除の代わりに身に着けたもので、消耗こそ激しくなるが、その分生き残ったときは武装した状態のままのため、有利になるのだという。
 しかし、にわかに信じられなかった。あの破滅の光を受けて生き残っているということが。

「いる……嘘でしょ」

 彼女は信じられないと言わんばかりに口を開く。
 完全に、そこには彼女が立っていた。



樹海の女法王ハイプリエステス ニャンクス・ガイアード 自然文明 (12)
スターダスト・クリーチャー:ワービースト・コマンド・ドラゴン 13000
R・コア
自分のマナゾーンのカードは全ての文明を得る。
いずれかのプレイヤーがクリーチャーを召喚した時、そのクリーチャーとコストが同じかそれよりも小さいクリーチャーを自分のマナゾーンからバトルゾーンに出しても良い。
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、代わりに手札からドラゴンを1体捨ててもよい。



『これが、女法王(ハイプリエステス)の力です!』
「さあ。これで終わりよ!!」
「そんな、馬鹿な——!!」

 ツグミは——いや、アピセリンは驚いたように目を見開いた。
 最早、この星を止めることは出来ない。

「コトハッ!! 思いっきり、最大パワーで決めてやれ!!」
「ええ、分かってるわ!!」

 ヒナタの言葉に頷き、コトハも息を吸う。
 肉薄し、《ニャンクス》が杖から、極大の光を放つ——




「《樹海の女法王ハイプリエステス ニャンクス・ガイアード》で、ダイレクトアタック!!」



 ——空間が光に包まれる。
 偽りの神も、そしてツグミも、それを前にして成す術が無い——
 そして、真っ白に覆われる視界。

「や、やった——」

 そう言ったコトハの視界は——次の瞬間、黒く塗り潰されたのだった。