二次創作小説(紙ほか)
- Act1:揺らめく影 ( No.359 )
- 日時: 2016/08/29 01:38
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「黒鳥レンんんんん……?」
ずいっ、と彼の顔を眺めると、シュウヤは威勢よく詰め寄った。
「オイオイオイ、ちょっと調子乗ってんじゃねーの? D・ステラに出てるからってよォ。勝手なこと言われたら困るんだよ」
「デュエルによる決闘を申し込んだのはそっち——勝手なことばかりを言っているのがそちらだけでは、不公平ではないか」
「……まあ良いだろう。黒鳥レン、お前とは一度手合わせしたかったところだ!!」
——この男のこの自信は一体どこから沸いて来るのだろう……。
デッキを取り出すシュウヤ。
どうやらやる気らしい。若干、このノリの良さに自分から名乗りあげたものの引いてしまっていた。
「おいレン、良いのかよ、元は俺達の事だし——」
「これ以上貴様等に迷惑も掛けられん。それに——この人なら丁度良い。久々にアヴィオールの力を試せる」
心配するヒナタを振り切るレン。
次の瞬間、レンの背後からアヴィオールが現れる。
『黒鳥レン。最近ボクの出番が全く無いので退屈していたところですよ。全力でやってしまって構いませんね?』
「良いぞ」
「フッ、話は決まったな——決着は、この近くのカードショップで付けるとしようじゃないか」
「……揉め事をデュエルで解決しようとするデュエル脳……どうなのよコレ」
「……さあ、喧嘩になるよかマシなんじゃねーの?」
***
——カードショップ『WIN×WIN』のデュエルスペースの一角にて。
ヒナタとコトハが見守る中、黒鳥レンと如月シュウヤのデュエルが始まろうとしていた。
黒鳥レン超次元
《滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル》
《極魔王殿 ウェルカム・ヘル》
《悪夢卍 ミガワリ》
《煉獄刃 ヘルフエズ》
《獄龍刃 ディアボロス》
《龍魂城郭 レッドゥル》
《龍魂遺跡 グリーネ》
《地獄龍星 メテオレイン》
如月シュウヤ超次元
《勝利のガイアール・カイザー》
《勝利のリュウセイ・カイザー》
《勝利のプリンプリン》
《ヴォルグ・サンダー》
《時空の凶兵 ブラック・ガンヴィート》
《激天下! シャチホコ・カイザー》
《時空の喧嘩屋 キル》
《時空の英雄 アンタッチャブル》
超次元のカードを見た途端、ヒナタは「《ウェルカム・ヘル》?」と口にした。
あれは元々、蓬莱学園の双子の片割れが持っていたドラグハートだ。本来ならば、まだ世の中にも、まして海戸でも解禁されていないカードのはずであるが——
「予選の後、鎧龍を通じて送られてきてな。僕に是非使って欲しいとの事だ。成程。無理にサイキックを入れるよりは、こいつの方が使いやすいかもしれん。安定感が全く違う」
「そ、そうだったのか……」
「何より、僕の革命にもこいつは合っている。遠慮なく、使わせて貰うとしよう!」
「ハッ、良いぜ。掛かって来いよ!」
というわけで始まったレンとシュウヤのデュエル。
序盤から《特攻人形ジェニー》を自爆させ、レンの手札を破壊するという戦術をとるシュウヤ。
一方のレンも動じることなく《ブラッドレイン》を召喚して後続へ繋げる体制を整える。
さて、ハンデスは基本、1対1交換。コイントスで後攻になってしまったシュウヤは、ハンデスをすれば自分も手札が無くなってしまうという状況にこのままではなりかねない。
しかし——
「それが今までのハンデスの常識——しかし。先攻だろうが後攻だろうが、今後のハンデスは違う!! 新たなカードがハンデスデッキに革命を齎すのだ!! 3マナで《ブレイン・タッチ》を使用!!」
「っ……それは」
ブレイン・タッチ C 水/闇文明 (3)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。
カードを1枚引く。
再び、レンの手札が叩き落された。次のターンに出せたはずの《白骨の守護者 ホネンビー》だ。
同時にシュウヤはカードを1枚引く。《ブレイン・タッチ》は多色ではあるもののハンデスしながらカードを引くことで一方的にアドバンテージを取りにいくことが出来る新たな呪文。
つまり、今まで1対1交換だったのが、一方的に彼が手札を減らしにいくことが出来るという状況に。
「ターンエンドだ。さあ、どうする?」
シュウヤ:山札32 手札3 マナ0/3 墓地2
「兄貴のデッキは変わらないわね、本当に……!」
「こうしてみると、やっぱ厄介だよなハンデス。しかも、先攻でも消耗が少ないのか……本当に、お前とは真逆だよな」
観戦している2人は、やはり彼の実力の高さを評価する。
性格に問題はあれど、かつてアウトレイジのカードに選ばれただけはあるのだ。
かつて、ステロイドが中心だったコトハに対し、彼のデッキは水闇ハンデス。マナを加速させて攻める妹に対し、序盤から徹底的に妨害と手札破壊、手札補充を繰り返してアドバンテージをとっていき、弱ったところにトドメを刺すスタイルなのだ。
「僕のターン。——ハンデスか。だが無意味だ。《ブラッドレイン》でコストを下げて3マナで《暗黒鎧 ヴェイダー》を召喚」
暗黒鎧 ヴェイダー R 闇文明 (4)
クリーチャー:ダーク・ナイトメア 4000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃できない。
自分のターンの終わりに、自分の山札の上から1枚目を墓地に置いてもよい。それがクリーチャーなら、カードを1枚引く。
レンの召喚した《ヴェイダー》は、闇の置きドローとして優秀なカードだ。
ターンの終わりに山札の上から1枚目を墓地に置き、それがクリーチャーならばカードを1枚引けるというもので、墓地肥やしと手札補充を同時に行えるという優れもの。
しかも万が一の時はブロッカーとしても機能する。
「ターン終了時に山札の上から1枚目を墓地に置く——それがクリーチャーならば」
山札の一番上のカードが捲られた。
落とされたのは——《龍覇 ニンジャリバン》だ。
「カードを1枚引ける。ターンエンドだ」
レン:山札30 手札2 マナ0/3 墓地4
これにより。
ターン終了時に手札が無ければ覚醒する《ブラック・ガンヴィート》などを防ぐことも出来る。
とはいえ、手札破壊を防ぐ根本的な解決には至ってはいない。
闇は墓地を操る故に、ハンデスには強い方ではあるのだが——
「俺のターン。……少し手札がキツイな。まあ良い、《セブ・コアクマン》を召喚!! その効果で山札の上から3枚を展開だ!」
セブ・コアクマン C 水文明 (4)
クリーチャー:サイバーロード/エイリアン 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せてもよい。その中から光と闇のカードをすべて自分の手札に加え、残りを墓地に置く。
展開されるのは3枚のカード。その中から光か闇のカードを手札に加えることが出来るが——捲られたのは《ブレイン・タッチ》に《超次元 リバイヴ・ホール》、《超次元 ミカド・ホール》の3枚。
つまり、全て彼の手札へ直行することになるのである。
「これで手札は+4枚!! ザマァ見晒せ、黒鳥レン!! 此処から徹底的に追い詰めてやろう!!」
「……フン、何処からそんな自信が沸いて来るのやら」
「完全に調子に乗っているわね」
「……レンには頭が下がるなあ……本当」
こんな時にも表情筋1つ動かさない彼の忍耐強さには尊敬すら感じる。
とはいえ、幾ら《ヴェイダー》がいると言っても、破壊されてしまえばそれまで。次のターンに彼のマナは5マナになるが、超次元を使われれば《ミカド・ホール》からの《勝利のガイアール・カイザー》で今場にいる2体が破壊されることもあり得る。
このままではじり貧は確定的だ。
シュウヤ:山札28 手札5 マナ0/4 墓地3
「……僕のターン。やれやれ。気の早い奴め。3マナで《停滞の影 タイム・トリッパー》を召喚」
「なっ!!」
しかし、そうはならなかった。
次のターン、彼のマナが5枚になることはない。
マナをタップインさせてしまう《タイム・トリッパー》がいるからだ。
「ターン終了時に《ヴェイダー》の効果発動。山札の上から墓地に置かれたのは——《龍神 へヴィ》だ。カードを引き、ターンエンド」
レン:山札27 手札2 マナ1/4 墓地5
「くっ、おのれ——俺のターン、《ブレイン・タッチ》を使い、貴様の手札を1枚選んで破壊する!」
すぐさま、手札補充と手札破壊に打って出るシュウヤ。
——このターンであの2体を全滅させ、手札もズタズタに出来るはずが——まあ良い、次のターンがある!!
シュウヤ:山札26 手札5 マナ1/5 墓地4
「ターンエンドだ!」
「では、僕のターン——ドロー」
向こうには大量の手札。
しかし、こちらがズタボロにされなくて良かったと思っている。
——相手は何かを隠している——まあ良い。これでその策を全て無に帰すまで。
4枚のマナをタップする。《ブラッドレイン》でわざわざコストを軽減するまでも無い。制圧の準備は、今始まった。
「——行け。4マナで、《爆霊魔 タイガニトロ》召喚」