二次創作小説(紙ほか)

Act3:龍は何度連鎖するか? ( No.36 )
日時: 2014/06/17 21:44
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「情けないわねぇ、それでアタシにデッキ改造の相談をしてきたわけ?」
「うっ……」

 翌日のカードショップ『WIN×WIN』。デュエルスペースをはさんで、ヒナタと会話している少女はさも呆れたように言った。

「分かったわ。アタシはD・ステラとかいうのには、はっきり言って興味ないけど、あんたがドンドン強くなるところを見るのは、面白いもの。今回だけ、その手助けをしてやってもいいわ」
「ホ、ホントか!?」
「勘違いしないことっ! アタシは別に、前に助けられた借りを返すためにやってるのであって!」

 少女は頬を少し紅くするとそっぽを向いて言い放った。
 少女の名は如月コトハ。凛とした瞳に、はつらつとした元気なものを感じさせるポニーテール、そして抜群のスタイルを見れば、大概の男子は彼女にハートを射抜かれてしまう。
 にも拘らず、なかなか彼女に男子が寄り付かないのは、ツンデレ、堅物の学級委員長という3拍子が彼女に揃っているからである。
 だが、そんなことは彼女は気にしない。持ち前のカリスマと人望はなかなかのものであり、責任感の強い性格からクラスメイトからは一目置かれているのである。
 そんな中、彼女と仲がいい数少ない男子が暁ヒナタ(と黒鳥レン)だった。ヒナタのデュエマでの強さに惹かれ、一緒に鎧龍サマートーナメントに参加しないか、と誘ったのが全ての始まりだったのである。以後、3人は共にいるのが普通になった。
 オラクルとの数え切れない戦闘を繰り返すうちに、彼を本当の仲間として受け入れていた。
 そして、ヨミとの決戦で危うくヨミの側室に迎えられようとされていたところを見事にヒナタに助けられたのだった。
 もっとも、それで何か2人の関係が変わったのか、というとそうではない。実際、コトハはヒナタの事を男子として意識しだしていたものの、肝心のヒナタが昔の死んだ幼馴染のことを未だに引きずっているのを気にして踏み出せないのが現状である。
 さらに追い討ちをかけるように、クラス代えが四月の最初にあった。ヒナタとレンは相変わらず一緒だったが、(もっともしょっちゅう喧嘩するため、周りからは”混ぜるな危険”と呼ばれている)コトハだけ別のクラスに行ってしまったのだった。
 さて今日、ヒナタが彼女を誘ってこのカードショップに訪れたのか。
 最初ヒナタから「ちょっと付き合ってくんねぇか?」と電話で連絡があったときには、とうとう彼からデートのお誘いかと歓喜しそうになったのだが、実際は違った。
 昨日、かつての仲間であるキイチに屈辱的な虐めともとれる負け方をしたヒナタに、特訓を申し込まれたのだった。
 無論、それで嬉しくなかった訳ではない。
 さっきのやりとりだって、照れ隠しでつい辛く当たってしまったのだ。ヒナタに非は無いし、自分の勝手な思い込みだ。更によくよく考えてみれば、ヒナタが豆腐メンタルの持ち主だったのを思い出し、反省した。
 だが、不安でもある。彼女は以前の《ドラゴンフレンド・カチュア》をメインにし、速さとビートを重視した”ニュー・カチュアシュート”から一転、動きは遅くなるものの、より勝手の利く普通の”カチュアシュート”に変えてしまっていた。以前のデッキの方が、キイチのデッキには近い。
 どこまで力になれるか分からない。
 しかし。

「じゃあまず、実戦あるのみ! やってみるわよ!」
「っしゃァ、そう来ないとな!」

 今まで散々助けられているのに、その恩をあだで返すわけにはいかないのだ。

「自分で頼んでおいて言うつもりはないが、勝つ気でいくぜ!」
「アンタらしいわ。だけど、全力で来て!」

 ***

「《結界の面 ブオン》召喚!」
「ビーストフォーク號か……クナイも使ってたな」

 ビーストフォーク號。ドラゴン・サーガで登場した新タイプのビーストフォークで、仮面に呪術を込めて使いこなす-----------と先にも述べたが、それらが本領を発揮するのは古代龍、ジュラシック・コマンド・ドラゴンを操る時。
 何せ、サポート種族だから当然なのだが。



結界の面(セイバー・スタイル) ブオン P 自然文明 (2)
クリーチャー:ビーストフォーク號 2000
セイバー:ドラゴン



「セイバー:ドラゴンか。まあいいや、俺のターンだ! 《メテオ・チャージャー》を使ってマナを加速だ! ターンエンド!」
「チャージャー……ねぇ」

 以前の彼ならばコスト軽減をメインに使っていた。しかし、最近ではマナ武装とかいうのもある。
 それで、止むを得ずにチャージャーに切り替えたのだろう。

(だけど甘いわよ、ヒナタ! 序盤を呪文だけで凌ぐなんて、アンタらしくないし、ましてこのアタシに通用するわけが無いって知ってるでしょ!)

 そう意地悪に頭の中で呟きながら、コトハはカードを引いた。

「《フェアリー・ライフ》でマナを肥やすわよ! ターンエンド!」

 これで、コトハのマナは4。次のターンに5となる。一方のヒナタも同じなのだが。
 両者の動きは、ここまでは互角だ。しかし、先にヒナタが動き出した。

「《熱血龍 バクアドルガン》召喚! スピードアタッカーだから即攻撃だ!」
 
 現われたのは、攻撃するたびに山札の一番上を捲って、ドラゴンならば手札に加えられるガイアール・コマンド・ドラゴン。
 しかし、来たのは不幸にも《めった斬り・スクラッパー》。山札の一番下へ。

「だ、だけどシールドは貰っていくぜ!」

 コトハの1枚目のシールドが割られた。
 だが、彼女は動じない。

「いいわよ。そっちがその気なら、アタシだって! アタシのターン、出てきて、《緑神龍 ドラピ》!」
「げっ!?」

 ヒナタの顔が青ざめた。
 ----------こ、こいつは-----------!!

「この子の効果は知ってるよね?」



緑神龍ドラピ R 自然文明 (1)
クリーチャー:アース・ドラゴン 15000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンにカードが9枚以上なければ、このクリーチャーを破壊する。
T・ブレイカー 



 《ドラピ》は、コスト1にして破格のスペックを持つと同時に、マナが9枚無ければ自壊してしまうという致命的な弱点を抱えている。
 だが、そんなことくらい彼女は分かる。
 分かるからこそ出したのだ。

「でもね。《ブオン》がセイバー:ドラゴンだから------------」
「《ブオン》を代わりに破壊すれば生き残る……!」

 ブオンを墓地に置くコトハ。セイバー能力はこのための布石だったのか。だが、代わりに嫌がらせとも言えるほどの巨大クリーチャーが顕現してしまった。
 《天守閣 龍王武陣》で破壊したいが、生憎ヒナタのデッキには、そこまで巨大なクリーチャーはいない。しかも、《めった斬り・スクラッパー》は既に山札の底にある。
 さらに、《エコ・アイニー》を召喚して、マナゾーンに置かれたのが《緑神龍バルガザルムス》だったため、もう1マナ加速するコトハ。これで、次のターン、8マナ-------------------

「どうしたの? 勝つ自身あるんじゃなかったの? つべこべ言わないで、かかってきなさいよ」

 彼女の威圧的な雰囲気が心なしか増していた。
 -----------やっべ、コトハのヤツ俺が知らないうちに強くなってやがる----------!!