二次創作小説(紙ほか)
- Act4:躙られた思い ( No.375 )
- 日時: 2016/09/16 01:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
「……貴方は……!!」
「……だから警告しているのに……まあいいでしょう」
ホタルは、自分の頭に血が昇っていくのを感じた。
今目の前にいる少女こそが、今回の事件を引き起こした犯人だ。
そう。瓜二つ、まさに自分そのもの。
自分が目の前にいると錯覚してしまうところであった。
「……目的は、何ですか」
「貴方には関係ない。此処で死んで頂きます——」
次の瞬間——目の前にいる偽物は、カードを掲げた。
そこから、一陣の風がホタルを狙うも——
『むんっ!!』
——障壁に体を包み込んだハーシェルが、それを受け止める。間一髪、防ぐことは出来たが——突貫してきた物の正体を見て驚愕した。
『ワシがもう1人……!!』
『ワシらの邪魔をする事は……許さん』
突如現れたもう一体のハーシェルは、その角でハーシェルを振り払う。
何ともややこしいことになっているが、これによって完全に相手はこちらに瓜二つということが分かった。
「……ハーシェル、どうしますか?」
『ぐぬぅ、贋作に負けるわけがないと思っていたが、これは予想外!! パワー、耐久力、共にワシに匹敵するレベルで、生身の打ち合いでは、こちらが押し負けるか!?』
「そんな……!?」
『決闘空間に引きずり込むか……だが——』
「もう、迷ってなんかいられないですよ!! 最初っから負けることを考えててどうするんですか、ハーシェル!!」
『ぬぅ……』
彼女は駆け出す。
そして——デッキを掲げて叫んだ。
「貴方の好きには、させません! 決闘空間開放!」
***
ホタルと、その姿を騙る少女のデュエル。現在、ホタルの場は《聖鐘の翼 ティグヌス》と《信頼の玉 ララァ》、そして《奇跡の玉 ラ・クルスタ》の3体によって固められている。
「私のターン——」
言ったのは、対戦相手である通称・偽ホタル。彼女はクリーチャーこそ召喚していなかったものの、手札を序盤から増やし、さらに《スペルブック・チャージャー》で呪文の《ヘブンズ・ゲート》を手札に加えつつも、マナを増やしている。
そのためにホタルの《ラ・クルスタ》によってマナの数を追い越されることになったものの、このターンで彼女のマナは6枚に——
「呪文、《ヘブンズ・ゲート》を唱えます。その効果により、手札より進化ではない光のブロッカーを2体——《知識の精霊 ロードリエス》と《歴戦の精霊龍 カイザルバーラ》を召喚します」
知識の精霊ロードリエス P(R) 光/水文明 (5)
クリーチャー:エンジェル・コマンド 4000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
このクリーチャーまたは自分の他の「ブロッカー」を持つクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを1枚引いてもよい。
歴戦の精霊龍 カイザルバーラ VR 光文明 (8)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン/革命軍 8000
ブロッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを1枚引く。その後、光のコスト7以下の進化ではないクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
「《ロードリエス》に《カイザルバーラ》——!!」
「そして《ロードリエス》の効果で1枚、そしてブロッカーの《カイザルバーラ》が場に出たのでさらにカードを1枚引きます」
天国への門が開き、2体の精霊が姿を現した。
これにより、偽ホタルの手札は回復する。《ロードリエス》は自身を含めたブロッカーが場に出たとき、カードを1枚引ける強力なドローソースだ。
そして——彼女は、更なる一手をたたきつける。
「そして、《カイザルバーラ》の効果発動。カードを1枚引いて——コスト7以下の光クリーチャーをバトルゾーンに出します」
淡々と言い放った彼女の頭上に地獄への門が現れた。
ホタルは戦慄する。
あれは自分も見たことがある。
何故ならば——以前あれを使ったのはほかでもない、自分なのだから。
「——出でよ、《惨劇の一角星 ハーシェル・ブランデ》」
悲鳴の音色を響かせ、命を食らい現れたのは、かつて多くの命を奪った惨劇の象徴。
その身は血に濡れた赤黒に染まり、穢れ切ったプライドを現すのは黄金の鎧。
血走った目は、ただただ復讐の糧を探すのみだ。
『ぬ……!!』
「ハーシェル……!?」
余りにも動揺したようなハーシェルの呻き声が、ホタルの脳裏に響く。
『あの姿は——かつてのワシそのもの……かつて、怒りのままにあらゆる命を奪った怪物・ハーシェルの姿そのものだ……!!』
「ハーシェル、なに言ってるんですか!? あんな姿が、ハーシェルの本当の姿なわけがないじゃないですか!!」
『——ワシだから、分かる。ワシは、あんな化物になっておったのか——ましてや二度も、二度も——』
「そして、超次元ゾーンよりU(ユニオン)・コアを持つクリーチャーを1体、バトルゾーンへ。出でよ——」
地獄への門が再び開く。
そこから現れたのは——美しき女を象ったクリーチャー。しかし、その下半身は、あらゆる罪人を処刑してきた拷問器具・鋼鉄の処女となっていた。
「——ステラアームド・クリーチャー、《鋼神姫 ドラドルイン》をバトルゾーンへ」
残虐なる光器がその姿を現す。
それにより精霊の加護を受けて、さらに彼女の知識は満たされていく。
「これで、さらに2枚ドローです。ターン終了」
「っ……!」
ホタルは、目を見張った。
余りにも強烈な光景を前にして。このターンで一気に4体ものクリーチャーが場に並んだことになる。
だが、それだけではない。ある意味予想していた通り、いや恐れていた通りといったところか。彼女はやはり——
「——あなたは——あなたはやはり——」
「黙りなさい、淡島ホタル」
ぴしゃり、と彼女は告げる。
とても冷たい眼差しだ。何もかもが自分と同じなのに、どこかが違う。
「——私は、貴方に”なり替わる”——私は影、貴方の影——光であるあなたを、裏から支配する——」
「そんなこと、させません!! 私のターン、ドロー!!」
カードを引いた彼女は、まずは2枚のマナをタップする。
「まず、2マナで《オリオティス》を召喚! そして——《ララァ》の効果でコストを2軽減して、私の切札をバトルゾーンへ!」
5枚のマナをタップした。
「——革命への星よ、祈りの果ての奇跡となれ——《ラ・クルスタ》進化!」
次の瞬間、《ラ・クルスタ》の身体が光り輝く。
そして、革命の産声が共鳴した。
革命に託す祈りは、時をも超えて奇跡となり、今ここに進化する。
「——《革命天王 ミラクルスター》!!」