二次創作小説(紙ほか)

Act5:貴方の為に ( No.379 )
日時: 2016/09/19 14:27
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ***



 チャカッ、とガンブレードを掲げたアヴィオールは即座に反応し、突貫してきたハーシェルへ切っ先を突き付ける。
 そこから、一気に魔力を込めて撃ち放つ。
 が——

『むんっ!!』

 ——障壁を貼ったハーシェルを流石に止める事は出来ない。
 流石の堅牢さと言ったところか。
 胴へ突貫してきたハーシェルを、ガンブレードで受け止めながらつくづく彼は感じた。

『ですが、パワーはあの小兎程ではありませんねぇ、ハーシェル。その代わり、その障壁——やはり、それを使われてはボクの銃弾は意味を成さないようだ——!!』
『フンッ、一角馬とはそういうもんじゃよ。だが、ヌシも方もなかなかじゃ。それこそ噂に聞いた時はただの頭でっかちだと思っておったのじゃよ——!!』
『噂? ああ——ボク達、同じ世界のクリーチャーですからねぇ』

 ガキィンッ、と互いに弾かれる。
 そのまま今度は上空に飛び上がってアヴィオールはガンブレードを構えた。
 今度は魔力の弾ではない。ホルスターに銃弾を詰め込み、一気に撃ち放つ——弾幕が、地上のハーシェルへ襲い掛かった。
 
『こっちはどうでしょう? 装甲をぶち抜く徹甲銃弾——火文明ならではでしょ』
 
 煙が上がる。
 しかし——次の瞬間、弾幕が一気にアヴィオールへ襲い掛かった。

『おっと』

 それを次々に躱していくも——一発が掠り、よろめいてしまう。

『やれやれ……若者は直ぐにムキになるからいかんわい。ワシが飛び道具を使えなかったら、どうするつもりだったのやら』

 見れば、彼の装甲の一部が衛星(サテライト)型のユニットに変形していた。
 それが、光の弾を撃ち放ったのだろう。
 これならば空中に浮かぶアヴィオールを撃ち落すことも可能だ。

『これは失敬。では、もう少し面白いモノをお詫びに見せて差し上げましょう——』

 パチン、とアヴィオールが指を鳴らした。
 次の瞬間——カラカラ、と音がする。
 見れば地面に落ちていたはずの銃弾が全て、一人で動き出したのだ。

『むっ、ヌシこれは——』
『全部撃ち落とせるなら、撃ち落してみてくださいよ』

 次の瞬間、再び動き出した銃弾がハーシェルを狙って飛び回りだす。
 それを察知したのか、彼の衛星も動き出し、1つ1つに狙いを付け始めた。そして——ビームで撃ち落し始める。

『ほうほう。流石の命中率ですねぇ』
『弾丸の再利用——!!』
『ええ。外れるのは覚悟の乱射ですよ。本命は、こっちですよ!!』

 幾つもの銃弾が、さっき以上の威力を持ってハーシェルに襲い掛かる。
 撃ち落しきれず、今度は障壁を貼って防いだ。
 
『ハハハハ、痛快痛快』
『……お返しじゃよ!!』

 次の瞬間、再びハーシェルは地面を蹴った。
 そして——今度はアヴィオールの目前まで跳躍する。

『おっと——』
『衛星(サテライト)——全力全開、発射(ファイア)ッ!!』

 次の瞬間、レーザー光がゼロ距離でアヴィオールへ放たれた。
 予想外のハーシェルの跳躍力に驚く間もなく、その体は閃光に包まれる。
 すたっ、と地面へ降り立つハーシェル。
 もくもく、と煙が上がっているのを見届けながら、ハーシェルは息を切らせた。流石に反動と威力が強すぎたか、と一瞥するが——

『やれやれ——たまに加減を忘れたボケ老人がいるから困りますねぇ。痛つつつ……』
『やれやれ。よく言うわい。ヌシの呪文への耐性を見れば耐えきれるのを分かってのことじゃよ』
『まあ、ここらで終わりにしますか、ハーシェル』

 降り立ったアヴィオールはスーツの煤を払い、ガンブレードを背中の鞘に収めた。

『……しかし、ヌシが何故』
『同じ世界のクリーチャーの好というやつですよ。あと、以前に迷惑をかけたお詫びがしたかったのでね。少しでも力になれたのならば良かったのですが』
『……いや、十分じゃよ。鈍った身体もだんだん、動かせるようになってきたわい』
『フフ、それは光栄です。……まあ、何よりも此処最近の貴方達が見ていられなかったのもあるんですがね』
『……このままではいけないのは分かっておるよ。』

 突っ走りがちのホタル。
 それを心配するハーシェル。
 自分の力でやり遂げたいという彼女の気持ちも尊重したいが——

『……ワシにはもう、彼女を守り切れる自身が無い』
『と言いますと』
『ワシは最低のクリーチャーだ。主の希望にも、期待にも応えることが出来なかった——ワシに、彼女の騎士(ナイト)が務まるのか』

 何かを傷つけてばかりだった一角馬は——何かを守ることに苦悩していた。
 ハーシェルは頭をもたれる。
 遠い日——何も守れなかったばかりか、全てを破壊しつくした血の化身の姿を回想するように。




 ***




「わ、私に、ですか……?」
「うん、そうだね。昨日の件だけど、やっぱあのステラアームドは君に関係があるんでしょ。そして、私の見立てでは君じゃなきゃあの子の”呪い”は解けない」

 呪い。
 そうノアは言った。
 確かに、あの力は、あのクリーチャーはアルゴリズムによって無理矢理引き出されたモノだ。ある意味の呪いと言っても良い。
 
「というか、暁先輩? 何でこのことを私には教えてくれなかったんですか? ステラアームドが街を出没してるなんて、聞いてませんけど?」
「あ、いや……だってお前、すぐ帰るかと思ったから。つーか、そっちこそ!! いい加減、目的を教えてくれよ!!」
「あー、やっぱバレちゃいましたかあ。ま、隠すことの程でもなかったんですけど——こうして互いの利害が一致した以上は仕方ないですね」

 どうやら、然程気にしていないらしい。
 そこまで重要ではない、とでも言いたげであるが——

「——端的に言えば、調査ですね。インベンテンズから、現在クリーチャーのある意味集結地とも言える日本、それも海戸の調査を頼まれたんです。本当なら、英雄の所在と、その能力を確認するだけで帰るつもりだったんですけど」

 言うとノアは、ホタルの方を一瞥した。

「……こちらとしても看過できない案件が出来てしまった以上は、ね。タダで帰るわけにはいかなくなっちゃったんですよ」
「う……で、でも、私じゃなきゃ呪いが解除できないって一体——」
「ステラアームドの中には、呪われているものもあるのよ。これは、元の主の負の面が何らかの憑代と共に実体化したもので、持ち主に成り替わろうとする正真正銘の呪いの装備」

 ヒナタ達が考えるだけでも幾らか思い当たる。
 ニャンクスが生前生み出した破壊のステラアームドで、彼女に成り替わろうとしたアクロガンドラー。
 アヴィオールを監視する目的で送り込まれ、その力を取り込んでなり替わろうとしたアルゴリズム。
 そして、そのアルゴリズムによって生み出され、今まさにホタルに成り替わろうとしている——



「——ドラドルイン——!」



 これらは全て、ノア曰く呪われたステラアームドということになる。

『確かにその通り、ですにゃ! 不正規な方法で生み出されたステラアームドは例外はあれど、大抵ロクなモンじゃないのですにゃ!』
「正規の方法で生み出されたアクロガンドラーは?」
『そ、その例外なのですにゃ……』
「そして、そのステラアームドは同じ文明の適合者とクリーチャーでなければ倒せない」

 確かに——今までの例を考えてもそうだった。
 例えば、ヒナタは1度ニャンクスに化けたアクロガンドラーをオーバーキルも大概のダメージを与えて倒しているものの、それでも彼は消滅しなかった。しかし、コトハとニャンクスによって倒されることでようやく倒せたのだ。
 また、レンに乗り移っていたアルゴリズムも、ヒナタに倒されても消えなかったのに対し、レンとアヴィオールによって倒されたときは完全に消滅していた。
 そしてドラドルインが憑依したホタルを、以前倒したのは——ノゾムだ。
 これらのことから考えても合理的と言えた。

「成程、そういうことだったのか」
「情報交換って、奴ですよ武闘フジ。貴方達日本のデュエリストが、英雄の多くを所持している以上はこちらも協力せざるを得ない。そして、光の適合者で、今ドラドルインを止められるのは淡島ホタル、貴方しかいない」
「だ、だけど——」

 戸惑った表情で彼女は訴えた。



「——私なんかに——ドラドルインが倒せるのでしょうか……?」