二次創作小説(紙ほか)
- Act4:一角獣は女好きか? ( No.38 )
- 日時: 2014/06/26 07:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
「で、出てきやがったか……だけど、俺にターンを与えたのは間違いだぜコトハ! このターンで、勝つ!」
《古代王 ザウルピオ》が現われたところで、所詮龍解タイミングはターンの終わり。
これはもう勝ちゲーだとヒナタは思っていた。
「俺のターン! 《怒英雄 ガイムソウ》召喚! んでもって、マナ武装7で《尾英雄 開闢の「白陽」》をバトルゾーンへ!」
「何そのカード……ヒナタ、もしかして------------」
-----------アンタまた、変なことに首突っ込んだんでしょ。
と言い掛けた声はヒナタの気合の入った声にかき消された。
「《白陽》はこのターン、スピードアタッカーだ! 行け、最後のシールドをブレイク!」
コトハの最後のシールドが消し飛んだ。
しかし。
彼女は全く動じる気配が無い。
「んでもって、《鬼カイザー「滅」》でダイレクト------------------」
「無駄よ。《ザウルピオ》の効果発動。その攻撃は受けない」
「は? はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
古代王 ザウルピオ ≡V≡ 自然文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 12000
T・ブレイカー
自分のシールドが1枚もなければ、自分は相手のクリーチャーの攻撃を受けない。
これが、《ザウルピオ》の効果だった。シールドが1枚もなければ、自分は攻撃を受けないのだ。
龍解前に比べると若干見劣りするが、弱い能力ではない。
「そ、そんな、チート性能じゃねえか」
にも関わらずこの馬鹿の頭には早速チート性能と刷り込まれてしまっていたようだった。
「馬鹿ね。除去されればそこで終わりよ。ま、火みたいに除去手段の乏しいデッキには効果覿面だけど?」
「だ、だけど《「白陽」》はドラグナーとドラゴンの攻撃を無効化する効果を------------」
「《ガイムソウ》の効果で出てきたクリーチャーは、ターンの終わりに手札に戻るんじゃなくて?」
「あ」
こ、こんなのあんまりである。と自分勝手だとは思うが、ヒナタは感じる。
もうお分かりだとは思うが、所詮火力呪文で彼女の軍勢を止められるわけも泣なく、結果---------------
「《ザウルピオ》でダイレクトアタック!!」
コトハの勝ちが決まったのだった。
***
「どう? これがカードパワーに頼ってきた、アンタのプレイングよ! 今までが今までだけあって、アグレッシブに動きすぎるのがそもそもの欠点!」
「う、うぅ……そーだよなぁー」
説教タイムスタート。しかし、全部ごもっともなので仕方があるまい。
他にも、リスクの高いデッキ構築やカードチョイスを指摘。そのたびに、即デッキを改造しているヒナタの態度は、ある意味向上心の塊と言えるか。
とりあえず、マナカーブをよくするために、ガイアール・コマンド・ドラゴンを抜いて、アンノウンの連ドラに近いものにしたのだった。《「白陽」》は無論入れたが。
「にしても、《尾英雄 開闢の「白陽」》……さっきも言いかけたけど、アンタまた厄介なことに巻き込まれてるんでしょ」
「いや、別に隠すつもりはねぇよ。お前だしさ」
ヒナタは今まであったことを全て、コトハに話した。
ほぼ、レンに話したことと変わらないが。
「ふぅん。面倒ね。折角、あのお騒がせな居候がいなくなって、せいせいしていたところなのに」
「ところが、そういう訳にはいかねーんだ。どうも、例の”武器”の件が絡んでるみたいだからな」
『私自身が何故此処にいるのかも知りたいしな』
同調するように白陽が続けた。
『今のところは全く、分からんが』
「それも気になるわね。後は、その男が宇宙(ソラ)から降ってきた”武器”と関係が?」
「そうだ。あの男は、見たこともねぇドラグハートと、この《「白陽」》を使っていた」
そう言って、《「白陽」》のカードを差し出すヒナタ。
「逃げ際に、こいつを一時的に野放して俺達を殺ろうとしたんだろうが、結局暴走していたこいつは無作為に人々へ攻撃を仕掛けた」
「そういえば4区で連続放火事件みたいなのがあったわね」
「ああ。誰も死んでいなかったのが、唯一の救いだぜ」
「こいつの能力だったのね。しばらくして火が消えたのは。本物の火じゃないってことだったの」
納得したように彼女は呟いたのだった。
「後輩のノゾムも、こいつに関係したカードを手に入れた。だけど、この異常事態の連鎖-------------どうも引っかかるんだ」
そのとき、ヒナタは自分がバッグに入れていたスマホが『笑点』の音楽を鳴らしたことに気付く。
「何で着メロが『笑点』なのよ……」
「ん? もしもーし?」
『先輩ィィィ!! ニュース見ていないんですかァァァ!?』
いきなり後輩の怒声。
若干ヒナタは引き気味だったが、あくまでも落ち着き払った声で答える。
「あー? 一体何があった、コラ」
『知らないんですか。何もテレビを視ていないんですか』
軽蔑したような声に憤りを覚えるヒナタだが、あくまでも抑える。
「うっせ、とっとと教えろ」
『馬が……』
「は?」
馬がどうしたんだよ、と続けようとした時だった。
隣で同じくスマホを確認していたコトハが、「えぇぇ!?」と素っ頓狂な声を上げた。
「た、大変よヒナタ……」
「何だよ」
だが、今はノゾムと通話している最中である。その前に、ヒナタの鼓膜へノゾムの大音量のシャウトが響いたのだった。
『女好きで、頭に角1本生やした馬が、新宿を爆走してるんっすよ!!』
傍から聞けば、訳の分からないワードが陳列しているだけである。
だが、その声は最後までヒナタは聞き取れなかった。
それは、あまりの大音量に、ヒナタが気絶してしまったからであったからだ。
泡を吹いて机に突っ伏している目の前の友人を見て、コトハは溜息をつく。
「声でかすぎでしょ、アンタの後輩……」
「ブクブクブク……」
『あれ? 先輩? まぁとにかく、俺1人でも調査開始するんで、それでは!』
***
ネットのニュースを纏めると、こうだった。
事件は、海戸競馬場で起こった。今年の海戸ダービーも、何千単位の人がやってくるほどの大盛況だった。
そんな中、優勝したのは「ブラックパラディン」とかいう、いかにもこれ厨二病が名前付けたんじゃね? みたいなかんじの名前をした黒馬だった。しかし、その名前のかっこよさと、見た目のかっこよさ、だけではなく速さは本物で、今回のダービーでも優勝し、これに賭けた人々に富を与えたのだった。
しかし、異変が起こったのは表彰式の最中だ。
突然、何かの光がブラックパラディンに降ってきたと思えば、たちまち白馬へと姿を変えていく。
それだけでも異常事態だが、さらに名馬の額からは角が生え、付けていもいないプロテクターがあちこちに装備される、という現象が。
間もなくブラックパラディンは爆走をはじめ、そのまま安全ネットやその他色々を突き破り、外へ。
……そのまま爆走してるだけなら良かったのだが……。
あちこちでその後、通報があった。
『角を生やした変な白馬に「お茶しない?」とナンパされた。横っ面をひっぱたいたら逃げていった』
『角を生やした変な白馬が、どういうわけだか前足伸ばして体を触ってきた。横っ面をひっぱたいたら(以下略)』
『角を生やした変な白馬が、(以下略)』
いずれも、都内の10代20代の女性からだった。
つーか、普通そんなのに出くわしたら逃げるくね? というヒナタの突っ込みはゴミ箱に放り投げられるかのように無視された。
----------結構、最近のギャルの肝は太いのか?
とヒナタは感じていた。
***
「何だよ、その馬……」
『私には感じる。光文明の力をここからでも強烈に感じるぞ』
「光文明ェ!? ナンパ馬が!?」
「そいつが新宿にいるから良かったわ。海戸を飛び出して、色んなところに出没してるみたいだから。しばらくこっちも形勢を立てられるし」
光文明らしからぬ行為を働く一角馬だと思ったが。恐らく、実態を上手く保てないクリーチャーが、自分に似た生物である馬に憑依したのだろう、というのが見解だった。
「とにかく、ほっとけねぇよ-------------!」